腎細胞癌 renal cancer

腎細胞癌とその疫学

・男女比は1.5:1と男性に好発する。

60~70歳代に発症のピークがある。

・リスク因子としては喫煙、高血圧症、肥満などが挙げられる。ただし、こういったリスク因子を有する患者はそのほかの疾患などで画像検査を受ける機会が多いため、偶発的に発見される機会が比較的多いのかもしれない。

・腎細胞癌の最大17%診断時に遠隔転移が認められる。頻度が高い転移巣は肺、骨、脳である。そのほか頻度は高くないが、副腎、対側の腎臓、肝臓に転移巣がみられることもある。

・組織型としては淡明細胞癌が最多で、70~85%を占める。そのほか乳頭状がん、多房嚢胞性がんなどの組織型も存在する。

・遺伝性の腎細胞癌としては、フォン・ヒッペル・リンドウ病(VHL: von Hippel-Lindau syndrome)、遺伝性乳頭状腎細胞癌(hereditary papillary renal cell carcinoma)、Birt-Hogg-Dube syndrome、遺伝性平滑筋腫症(hereditary leiomyomatosis)、結節性硬化症(tuberous sclerosis)が知られる。

臨床症状

・腎細胞癌は全ての病期において生理活性を有するホルモン様物質、サイトカイン様物質を産生し、様々な腫瘍随伴症候群を誘発する。

 <局所的症状>

  <頻度が高い症状>

・急性or慢性経過の側腹部痛

  <頻度が低い症状>

・肉眼的血尿

・触知可能な腹部腫瘤

  <稀な症状>

・精索静脈瘤(∵静脈血栓によって生じる静脈圧上昇)

 <傍腫瘍症候群>

  <頻度が高い症状>

・高血圧症(∵腫瘍由来のレニン分泌/腎動脈狭窄/高カルシウム血症/尿路閉塞など

)

・貧血(∵出血/炎症性ケミカルメディエーター)

・悪液質, 体重減少(∵炎症性ケミカルメディエーターなど)

  <頻度が低い症状>

・発熱(∵炎症性ケミカルメディエーターなど)

・肝転移を伴わない肝酵素上昇(Stauffer’s syndrome)(∵顕著なリンパ球浸潤を伴う非特異的肝炎/IL-6上昇)

・高カルシウム血症(∵転移性骨腫瘍/PTHrP産生など)

  <稀な症状>

・多血症(∵腫瘍由来のEPO過分泌など)

診断

・腎細胞癌は偶発的に発見されるケースの方が多く、症状に基づいて精査され診断されるケースは全体の約30%のみである。

・血液検査では特異的な異常所見はない。

・身体診察の有用性は限定的である。しかし、腹部腫瘤を触知したり、新規に認識される精索静脈瘤や下腿浮腫がみられたりする場合には追加の画像検査を行うべきである。

・腎細胞癌は腹部エコーで発見されることが多いが、検者の技量による影響もうけるため、疑わしいケースではCT撮像などを検討する。

・組織型として最多を占める淡明細胞癌の場合、造影早期相で不均一に腎皮質と同程度の造影効果を示し、造影後期相でWash outされるのが典型的である。なお、単純CT撮像では腎実質と同程度のCT値であり、認識しにくいことに注意する。なお、CT撮像で評価が困難な場合にはMRI撮像での評価も検討する。

・なお、腎細胞癌の約20%造影早期相で早期濃染所見がみられない点に注意する。この場合、組織型として乳頭状癌などが想定される。

・良性腫瘍である腎血管筋脂肪腫との鑑別が困難なケースもある。通常、腫瘍内部は水よりもさらに低濃度で、脂肪成分の混在も確認されることがある。

・そのほか画像検査の目的には腫瘍の広がり、遠隔転移巣などの評価も含まれる。

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<参考文献>

・Capitanio U, Montorsi F. Renal cancer. Lancet. 2016 Feb 27;387(10021):894-906. doi: 10.1016/S0140-6736(15)00046-X. Epub 2015 Aug 25. PMID: 26318520.

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