結節性多発動脈炎 PAN: polyarteritis nodosa

結節性多発動脈炎とその疫学

・結節性多発動脈炎(以下PAN: polyarteritis nodosa)は中型血管炎に分類され、動脈を特に侵しやすい性質を有する疾患である。

・通常、糸球体腎炎や小血管の障害を起こすことは稀である。末梢神経皮膚とが最も侵されやすい。

・ANCAは陰性で、小型血管炎の鑑別に役立つことがある。

・PANはウイルス感染症、特にHBV感染で誘発されることがある。またHBV以外にも、HCV、HIV、CMV、PVB-19なども誘引となることが知られている。しかし、多くの症例では原因は不明である。

・PANは稀な疾患で、発症率も低下傾向にあると考えられている。その一因としてはHBVワクチンの普及によるHBV感染症の減少があるかもしれない。なお、先進国ではPAN患者の約5%未満でHBV感染症の既往がある。

・ヨーロッパの疫学では年間発症率は100万人あたり0~1.6例と報告される。有病率としては100万人あたり約31例。

・発症のピークは50~60歳代である。

臨床症状/臨床経過

・血管における炎症によって、血管の狭窄/閉塞あるいは破裂が生じ、組織虚血、出血をきたすことがある。したがって、PANでは非特異的な全身症状(倦怠感、易疲労感、発熱、関節痛、筋肉痛、体重減少など)を含め、様々な症状がみられる。虚血症状などが初期は目立たず、非特異的な全身症状以外にみられないこともあり、ときに診断は困難。

末梢神経皮膚とが比較的頻繁に侵される。多発単神経炎(mononeuritis multiplex)がみられやすく、ときに対称性に症状が出現するケースもある。

・皮膚所見としては紫斑、Libedo状皮疹、皮下結節、皮膚潰瘍などがみられる。

・ときに消化管、腎臓も侵される。消化管を侵した場合には死亡率が高まる。腎では主に微小動脈瘤の破裂によって組織虚血あるいは出血が生じる。ときに顕微鏡的血尿から肉眼的血尿、軽度から中等度のたんぱく尿がみられる。なお、糸球体腎炎を合併することは稀である。また、腎動脈に狭窄が及ぶと腎血管性高血圧症を合併し得る。

・HBV関連PANではそれ以外を原因とするPANよりも末梢神経障害と高血圧症とをより合併しやすい一方で、皮膚病変を合併しにくいという特性を有する。

・胆嚢動脈に影響が及ぶと胆嚢炎を合併することがある。

各症状の出現頻度

 <全身性症状>

 ・発熱(31~69%)/体重減少(16~69)/筋肉痛(30~59)/関節痛(44~58)

 <皮膚病変>

 ・結節性病変(17%)/Libedo(16)

 <神経症状>

 ・多発単神経炎(38~72%)/末梢神経障害(74)/中枢神経病変(2~28)/脳神経麻痺(<2)

 <消化管症状>

 ・腹痛(36~97%)/悪心嘔吐(12~38)/下痢(6~38)/黒色便(3~5)/血便(3~38)/食道潰瘍(5~38)/胃十二指腸潰瘍(12~38)/結腸潰瘍(2~38)

 <腎泌尿器症状>

 ・腎血管性高血圧症(10~63%)/血尿(15)/たんぱく尿(22)/精巣痛・精巣上体炎(2~18)

 <眼病変(3~44%)>

 <心臓病変(4~30%)>

 <呼吸器病変>

 ・胸膜炎(5%)

血液検査

・PANに特異的な検査異常はない。

・ESR亢進、CRP上昇は通常みられる。

・好酸球増多もときにみられるが、その場合は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の除外をする必要性が高い。

HBV、HCV、HIVなどの慢性ウイルス感染症が併存する可能性にも配慮する。その後の治療方針が変わる可能性があり、こちらの評価は重要である。

・ANCAは通常陰性である。

病理検査

・中型動脈あるいは小型動脈における血管炎の所見を病理学的に証明することは血管炎の診断においても、他の疾患の除外においても重要。

可能な限り症状のある部位(例: 精巣, 筋肉, 皮膚, 腓腹神経)における生検を行うことを目指す。様々な臓器が障害されていて、箇所を特定することが困難な場合にはより侵襲性が低い箇所(通常、皮膚あるいは筋肉)における生検を考慮する。

・PAN患者に関する大規模なシリーズ研究では有症状のPAN患者の筋生検と神経生検との併用により、83%で血管炎の病理学的所見が確認された。しかし、筋生検単独では65%に留まったと報告されている。

・PANでは睾丸痛をきたすことがあり、その場合は精巣における生検は重要である。しかし、症状がない場合は盲目的な精巣生検は適切とはいえない。

・ときに巨細胞性動脈炎(GCA)を疑って側頭動脈生検が実施されたケースで、図らずもPANが診断されることがある。通常、側頭動脈生検で、側頭動脈に所見がみられないものの、その分枝において炎症が確認される場合には全身性血管炎(PANを含む)の存在を疑う。

・そのほかの詳細は割愛する。

画像診断

PANが疑われる状況で、病理検査が実施不可能で、かつ腹部/腎臓/心臓への影響が主にみられるケースでは血管造影が検討される。

・血管造影では通常、動脈において嚢状あるいは紡錘状の微小動脈瘤(直径1~5mm)がみられ、腎動脈、腸間膜動脈、冠動脈に所見が存在しやすい。

・臨床的特徴も合致し、血管造影検査でも所見が得られたならば、仮に病理所見が得られなくてもPANの診断を確定させることができる。

造影CT撮像は血管評価を目的に実施可能であるが、特記所見が得られなくてもPANの否定はできない。疑わしい場合には血管造影を検討することとなり、直径2~3mm程度の動脈瘤であっても血管造影であれば診断が可能なことがある。

予後

・予後予測の指標としてはFFS(Five Factor Score)が提案されていて、重症の消化器合併症(出血, 穿孔, 梗塞, 膵炎)、血清Cre>1.58mg/dLあるいは蛋白尿(≧1g/日)を伴う腎障害、心疾患(梗塞または心不全)、中枢神経障害が因子として含まれる。それぞれ1点が付与され、FFS 0点であれば5年死亡率12%、1点なら26%、2点以上なら46%と推定された。

・また現在では65歳以上という年齢も予後不良因子とされている。

治療

・PANの治療方針の決定には主に罹患臓器、病状の進行の程度の2つの要素が関係する。

・軽症の原発性PAN(FFS 0点)ではPSLのみで治療を行うことがあり、漸減の経過中に再燃をきたす場合は免疫抑制薬の併用も検討される。

・症状が重篤な場合にはステロイドパルス療法が検討され、こちらにおいても免疫抑制薬の併用が検討される。免疫抑制薬としては寛解導入にシクロホスファミド、寛解維持にアザチオプリンやメトトレキサートなどの使用がなされることがある。

・そのほか治療についての詳細は割愛する。

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<参考文献>

・Hernández-Rodríguez J, Alba MA, Prieto-González S, Cid MC. Diagnosis and classification of polyarteritis nodosa. J Autoimmun. 2014 Feb-Mar;48-49:84-9. doi: 10.1016/j.jaut.2014.01.029. Epub 2014 Jan 28. PMID: 24485157.

・Adaletli I, Ozpeynirci Y, Kurugoglu S, Sever L, Arisoy N. Abdominal manifestations of polyarteritis nodosa demonstrated with CT. Pediatr Radiol. 2010 May;40(5):766-9. doi: 10.1007/s00247-009-1466-4. Epub 2010 Feb 12. PMID: 20151119.

・Ozaki K, Miyayama S, Ushiogi Y, Matsui O. Renal involvement of polyarteritis nodosa: CT and MR findings. Abdom Imaging. 2009 Mar-Apr;34(2):265-70. doi: 10.1007/s00261-008-9377-7. PMID: 18317834.

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