プライマリケア医は臨床疑問をどのように解決するのか
論文名:How do primary care physicians seek answers to clinical question? A literature review
要旨
・目的:プライマリケア医がClinical questionに対する答えをどのように解決するのかということについて、1992年から2005年までの間にどのような変化が生じているのかを調査した。検索方法としてどのような方法を採っているのか、それにどのぐらいの時間を費やしているのか、種々の検索方法や情報ソースをどのようにプライマリ・ケア医は評価しているのかなどを主に把握することに目的が置かれている。
・方法:21件の原著論文と3件のレビューを調査した。システマティックレビューの存在は確認されなかった。
・結果:プライマリケア医が何かClinical questionが生じた場合には、まず同僚や紙面での情報に頼ることが一般的である。電子媒体ソースへのアクセスが改善した状況においても、この傾向は長年変化がみられなかった。プライマリケア医がClinical questionを解決するために、検索するに当たっての障壁は適切な検索内容の設定、最適な検索方法の発見、把握したエビデンスの解釈に関連していた。
Introduction
・プライマリケア医は一般診療で遭遇しやすい疾患について熟知しているが、希少疾患やSpecialsitの問題などの内容についての知識を持つことは期待されていない。しかし、実際にはプライマリケア医は患者のため、自分自身のため、そして同僚とのコミュニケーションのために、様々なエビデンスに遅れをとらないようになるよう望んでいる。
・1975年から1992年までの国際的な文献レビューによると、プライマリケア医が臨床情報を検索するにあたって、まずは同僚に尋ねることが一般的で、それに次ぐ形で書籍やジャーナルなどを読むことを多いという結果であり、(時代背景的な問題もあり)電子データベースを参照することはほとんどなかった。インターネットが発展して、オンラインでジャーナルなどを参照することができるようになった今日において、プライマリケア医が臨床情報を検索する方法に関して、どの程度変化が生じたのかという疑問が生じた。そこで、著者らは直近の文献レビューをとおして、主に「プライマリケア医が臨床情報をどのように求めているか」「どのような戦略、情報源を用いているか」「それにどの程度の時間を費やしているか」「その戦略や情報源をプライマリケア医はどのように評価しているか」などについて調べるに至った。
Method
・MEDLINE/Pubmed、Embaseなどのデータベースを検索。
・検索は2005年04月に実施された。
・プライマリケア医の検索に関する行動について論じた内容の、1992年以降に出版された原著論文、文献レビューを対象とした。なお、論文は英語あるいはオランダ語で作成されたものが対象とされている。
Results
・システマティックレビューは同定できなかった。
・アンケート、観察、面接を用いた研究(18件)、質的研究(1件)、比較研究(2件)、レビュー(3件)を同定した。
・同定した研究のうち、13件がアメリカからの報告であった。その他はイギリス(4件)、オランダ(3件)、オーストラリア(3件)、ニュージーランド(1件)であった。
・ほとんどの研究がプライマリケア医を対象としたものであった。うち、7つの研究ではプライマリケアに従事するSpecialist、その他の専門職(看護師、心理士など)が対象とされていた。
・同定した研究において、各研究に関係したプライマリケア医の数は2人から1,000人であり、回答率は45%から100%であった。
<プライマリケア医の臨床情報検索に関する態度(behavior)>
・プライマリケア医が1度の診療機会で想起するClinical questionの平均数(0.07~1.85個)は職場環境(地方/都市部、小規模/大規模診療所など)などにより異なる。
・臨床情報を検索するという行動をとるかどうかに関わる予測因子として①患者の問題の緊急性の高さ ②明確な解答が存在するか否か というポイントが挙げられた。情報検索を行うかどうかはそれによって期待される利益と、それにかかるコスト(時間などを含む)とに依拠するようである。
・アメリカにおける3件の研究ではプライマリケア医の多くが電子データベースを参照することでClinical questionの解決が可能であると述べ、56%のケースでその解決が適切な範囲にあること、46%のケースでクリアカットに解決ができることが示されている。なお、情報源に「同僚」や「テキストブック」を含めると、満足感を伴う解決に至る割合は70%から80%の範囲にまで上昇することが示された。
<プライマリケア医による情報収集>
・本研究が行われるまでの13年間において、プライマリケア医は何か情報が必要と思われるときには同僚に相談したり、テキストブックを参照したり、という方法を採っていた。
・一般診療所におけるインターネットへのアクセス性は国や地域によって異なる。あるアンケート調査によると、2000年において、オランダのプライマリケア医の75%がPCを使用していたのに対して、診療所でも利用していた割合は37%に過ぎなかった。その用途としては同僚とのEメールが最も一般的で、それに次ぐ形で臨床情報の収集のために利用されていた。2002年において、ニュージーランドのプライマリケア医の48%が臨床情報を収集するためにインターネットを利用すると報告し、最も頻繁にアクセスする情報源としてはMEDLINEが示された。
<情報検索に費やす時間>
・プライマリケア医は多忙な面もあり、プライマリケア医において一貫して報告されている障壁の一つに情報収取するための時間が不足していることが挙げられている。
・1999年の観察研究によるとアメリカのプライマリケア医が同僚に相談したり、テキストブックなどの情報を参照したりして、検索活動に費やす時間は平均2分未満であった。また、アメリカのプライマリケア医に関する別の報告では、2001年において、1回の検索機会で平均12分を費やし、やはり主に同僚への相談と、テキストブックなどの情報を参照するということが報告され、オンラインの情報源などを参照する頻度はかなり低かった。
<プライマリケア医は収集した情報をどのように評価するか>
・前述したようにプライマリケア医には時間的要因もあるが、それ以外には適切な検索用語を探すことが容易でないことなども障壁として挙げられた。
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<参考文献>
・Coumou HC, Meijman FJ. How do primary care physicians seek answers to clinical questions? A literature review. J Med Libr Assoc. 2006 Jan;94(1):55-60. PMID: 16404470; PMCID: PMC1324772.