プライマリケアにおける不確実性への対処

臨床現場においては不確実性という要素は常に伴うことは実感されやすいと思います。

プライマリケアにおいて、不確実性をどのように克服するかについてのReviewがPublishされていたため、一読してみました。

臨床的不確実性(clinical uncertainty)とは

不確実性(uncertainly)とは「何を考えるべきか、何をするべきかなどがわからないというダイナミックで主観的な認識」とされていて、「理解が進まないこと」と「そのことに自覚的であること」の2つが要件として存在します。

不確実性を許容しがたいGPは患者を二次医療機関に紹介する傾向がより高いことが知られています。

・本Scoping reviewでは「不確実性をmanageするための学習機会として、何が知られているか」という問いに対する答えを探索するためになされました。

分析の結果

・36の研究を分析した結果、主に3つのテーマに繋がることがわかりました。

・一つ目はプライマリケアの現場において、臨床的不確実性(clinical uncertainty)がプロフェッショナルとしてのアイデンティティ形成に寄与しているということであった。プライマリケアで研修する医師は「より広い医療の文脈のなかで、特殊な役割を担っている」ことを認識することが、不確実性の受容に繋がります。また、「誰も全てを理解できているわけではない」ことを理解することでにより、不確実性に対して寛容になれるという報告もあります。

・二つ目はAdaptive responses(適応的な反応)であり、プライマリケアの現場で過ごした時間自体が、臨床的不確実性の克服に影響しているということでした。たとえば研修の初期においては不確実性に対していわば恐怖心を抱いていた医学生も、プライマリケアの現場において長期間の研修を行うことにより、不確実性に対して適応する傾向にあることが示されています。また、不確実性に曝露することにより生じる適応反応の一つとして、Shared decision makingAdjusting epistemic expectationsが形成されているとも指摘しています。

・HanらはAdjusting epistemic expectationsを「医学知識を完全な形で習得することが不可能であると認識して、それによって確実性を追求することをやめること」と定義しています。常に正しい答えがあるということ自体は重要でなく、むしろその過程が重要というふうにも指摘しています。

・三つ目はMaladaptive behaviours(非適応的な振る舞い)であり、例えば臨床推論において比較的早期に”当たり”を付けて、入院や紹介、処方などをしてしまうような行動でした。この行動は、つまりより直感的な思考を行動につなげることで、不確実性に曝されるストレスから早く抜け出すようなものであると指摘されています(つまり不確実性を免れる方法ともいえます)。

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<参考文献>

・Gardner NP, Gormley GJ, Kearney GP. Learning to navigate uncertainty in primary care: a scoping literature review. BJGP Open. 2024 Apr 2:BJGPO.2023.0191. doi: 10.3399/BJGPO.2023.0191. Epub ahead of print. PMID: 38097267.

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