SAGEモデル

序論

・卓越したジェネラリスト(Expert generalist)は単なるオールラウンダーではない。

・卓越したジェネラリストの明確な専門性の一つは個別化されたケアを行える点にある。

・個別化されたケアを行うためには、優れたコミュニケーション能力と共感が求められる。

・それはガイドラインの適用を超えて、患者の病い体験(illness)に対する新しい説明をともに創出する「解釈的実践(interpretive practice)」である。

SAGEモデル

・SAGE(School of Advancing Generalist Expertise)は複雑な問題に対するジェネラリスト的解決法の開発と実践を支援することを目的とした国際的な協働プロジェクトである。

・SAGEモデルにおいては病いを抱えて助けを求めてきた患者こそが出発点となる。すなわち、健康問題と思われる日常生活の破綻(disruption)を感じた人物と捉えられる。

・卓越したジェネラリストは個別化された病いの理解(illness understanding)を新たに創出しなければならない。それは「何が問題で、何をすべきか」に対する解釈のことでもある。

・SAGEモデルには5つのステップが存在する。

  1. VIPレンズ
  2. 多元的情報源(multisource data)
  3. 個別化されたケア(individually-tailored care)
  4. 迅速なレビュー(rapid review)
  5. 影響のレビュー(impact review)

①VIPレンズ

・VIPとは” Vulnerability to imbalance of resources and Pressures(リソースとプレッシャーの不均衡に対する脆弱性)”のことである。

何かを解釈するということは、それに意味を与えることである。

・その意味づけは問題をどの視点から捉えるかによって異なる。

・すなわち、医学的問題として捉えるか、それとも日常生活の破綻として捉えるかである。

・SAGEモデルは病いの「個人的経験」に焦点を当てていて、最初の目標はその患者個人にとってのニーズとリソースのバランス、すなわちBiographical disruptionに対する脆弱性を理解することである。

②多元的情報源(multisource data)

・個別の病い体験を理解するためには科学的、患者的、専門的な知見といった複数の情報源が必要である。

・この3つを等価のデータとして扱い、そこから病いの個別化された説明/意味が共創される

・ここで重要なのは科学的なナレッジを他のナレッジよりも上位に置くような知識のヒエラルキー(the hierarchy of knowledge)を排除することである。

③個別化されたケア(individually-tailored care)

・VIPレンズを通して収集された多元的情報源を統合し、「何が問題か」、「何をすべきか」の解釈を行う

・既存のガイドラインを適用するのではなく、新たな解釈、すなわちこの患者のための新しい説明/意味を創出する

・この解釈により、「病いの体験を医療化することが果たしてこの患者にとって最善か否か」という判断が可能となる。ジェネラリストは医療化するべきか否かという観点においてもゲートキーパーの役割を担っている。

④迅速なレビュー(rapid review)

・創出された解釈と判断はその患者固有のものであるため、ガイドラインやプロトコルに照合して検証することはできない。

・したがって、セーフティネットとして、その解釈や判断がその人の病い体験に適したものであるかどうかを確認する迅速なレビュー(rapid review)が必要となる。

⑤影響のレビュー(impact review)

・解釈学的な枠組みでいえば、ナレッジはどのように構築されたかだけでなく、どのような影響を生じさせたかによっても判断される

・この場合、日常生活(daily living)の回復や継続、病いの軽減(reduction in illness)をどの程度サポートできるかということである。

・しかし、私達もまた私達自身の解釈の正当性について批判的なピアレビューや省察を行う必要がある。

・ジェネラリストの実践においては、集団的な専門的なディスカッションと省察(reflection)とを維持する必要がある。

なぜ今、SAGEモデルが必要なのか?

・ときに個別化された意思決定が十分になされていない現状が指摘されている。

・多くの臨床家は個別化された意思決定が果たして”科学的”といえるのかという点で不安を抱えていて、それを正当化する枠組みを持っていない

・そのため、SAGEモデルの明示は以下の利点をもたらすことが期待される。

  1. 必要なスキルを有していない人に対して教えられる
  2. 既にスキルを持っている人に実践する自信を与える(不安を払拭する)
  3. 政策立案者に対してジェネラリズムの特異性と意義を説明する

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<参考文献>

・Reeve J. Supporting expert generalist practice: the SAGE consultation model. Br J Gen Pract. 2015 Apr;65(633):207-8. doi: 10.3399/bjgp15X684613. PMID: 25824174; PMCID: PMC4377603.

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