HbA1cと空腹時高血糖・食後高血糖との関連性
HbA1cと空腹時血糖値・食後血糖値の関連性
・空腹時ならびに食後の血糖値(PG: plasma glucose)はHbA1cが上昇するについれて、高まることが知られている。
・以下の図に示されるように、HbA1cが上昇するにつれて、空腹時血糖値(FPG: fasting plasma glucose)の寄与する割合が高まる。一方で、HbA1cが低下するにつれて、食後血糖値(PPG: postprandial plasma glucose)の寄与する割合が高まることが示されている。

空腹時血糖値(FPG)を改善させる薬剤例
・空腹時血糖は主に夜間の糖新生やインスリン分泌のベースライン低下により高値となる。
・空腹時血糖値を改善する作用のある主な薬剤は以下の通りである。
①メトホルミン
・作用機序:肝での糖新生抑制
・特徴:第一選択薬となることが多い。空腹時血糖低下に有効な薬剤の代表格。
②GLP-1受容体作動薬
・例:デュラグルチド(トルリシティ®), セマグルチド(経口: リベルサス®, 注射:ウゴービ, オゼンピック)
・作用機序:インスリン分泌促進+糖新生抑制+食欲抑制
・特徴:食後血糖にも作用はあるが、長時間型は特に空腹時血糖値の改善にも寄与する
③SGLT2阻害薬
・例:ダパグリフロジン(フォシーガ®), エンパグリフロジン(ジャディアンス®)
・作用機序:尿糖排泄促進
・特徴:全般的に血糖低下作用を有するが、特に空腹時血糖値の低下に寄与し得る
④インスリン製剤(特に基礎インスリン)
・例:グラルギン(ランタス®), デグルデク(トレシーバ)
・特徴:空腹時血糖値の改善に有効
⑤チアゾリジン系
・例:ピオグリタゾン(アクトス®)
・作用機序:インスリン抵抗性改善(肝・筋)
・特徴:空腹時血糖値の改善にも比較的有奥。ただし、体重増加などの副作用に注意。
食後血糖値(PPG)を改善させる薬剤例
・食後血糖値は主にインスリン分泌の初期相遅延や消化管からの糖吸収速度などに関連する。
・これらを標的とする薬剤は以下のようなものが挙げられる。
①DPP-4阻害薬
・例:シタグリプチン(ジャヌビア®, グラクティブ®), テネリグリプチン(テネリア®), リナグリプチン(トラゼンタ®)
・作用機序:GLP-1活性維持によるインスリン分泌促進
・特徴:食後血糖値の改善に比較的優れる。低血糖リスクが小さい。
②速攻型インスリン分泌促進薬
・例:レパグリニド(シュアポスト®), ミチグリニド(グルファスト®), ナテグリニド(スターシス®)
・作用機序:早期インスリン分泌促進
・特徴:食後血糖に対して即効性を有する。ただし、低血糖リスクは比較的大きい。
③α-GI
・例:アカルボース(グルコバイ®), ボグリボース(ベイスン®), ミグリトール(セイブル®)
・作用機序:小腸での糖吸収遅延
・特徴:食後高血糖の改善に有効。
④超速効型インスリン
・例:インスリン・リスプロ(ヒューマログ注®), インスリン・アスパルト(ノボラピッド注フレックスタッチ®)
・作用機序:食直前投与で即時的に血糖低下
・特徴:コントロール不良例での食後血糖改善に有効
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<参考文献>
・Monnier L, Lapinski H, Colette C. Contributions of fasting and postprandial plasma glucose increments to the overall diurnal hyperglycemia of type 2 diabetic patients: variations with increasing levels of HbA(1c). Diabetes Care. 2003 Mar;26(3):881-5. doi: 10.2337/diacare.26.3.881. PMID: 12610053.
