全身性アミロイドーシス systemic amyloidosis

全身性アミロイドーシスとその疫学

・全身性アミロイドーシス(Systemic amyloidosis)はアミロイド蛋白が沈着することで臓器障害などをきたす疾患である。

・稀な疾患と考えられているが、TTR(トランスサイレチン)蛋白が原因で生じるATTRアミロイドーシスは85歳以上の成人の剖検で25%以上に認められると報告されている。

免疫グロブリン軽鎖由来のアミロイド蛋白が原因で生じるものをALアミロイドーシスと呼び、こちらの年間発症率は100万人あたり12例程度と報告されている。また、変異型ATTRアミロイドーシス(variant ATTR amyloidosis)の年間発症率は100万人あたり0.3例と推定されていて、有病率は100万人あたり5.2例と推定されている。

・アミロイドーシスでは心臓、腎臓、神経、肝臓、肺、消化管に影響を侵し得る。なお、ATTRアミロイドーシスでは心臓が最も侵されやすい。

・全身性アミロイドーシスの原因とされる蛋白は14種類知られているが、一般的なものはALアミロイドーシスとATTRアミロイドーシスである。

・TTR遺伝子には120以上の変異が知られていて、多くがイソロイシンをバリンに置換する変異(ATTR V122I)で、この変異が原因の場合、後に心アミロイドーシスを発症する可能性が指摘されている。

・自覚症状が出現してから1年以内にアミロイドーシスと診断されるケースは全体の26%と報告されている。また、診断確定までに4人以上の医師による診察を受ける患者の割合は49%に至る。

臨床症状

・臨床症状は非特異的なものが多く、易疲労感、末梢性浮腫、体重減少、労作時呼吸困難、起立性低血圧などと多岐にわたる。

・ATTRアミロイドーシスでは動悸(主にAF由来)、労作時呼吸困難、浮腫などの症状がみられやすい。

身体所見/検査所見

・ALアミロイドーシスによる徴候は比較的特異的で、舌肥大眼窩周囲の紫斑が知られる。しかし、これらの所見の感度は低い(約15%)

・野生型ATTRアミロイドーシス(wild-type ATTR amyloidosis)では両側性の手根管症候群、腰部脊柱管狭窄症、上腕二頭筋腱断裂を併発することが知られている。

・変異型ATTRアミロイドーシスではsmall fiber neuropathy、自律神経障害も併発する。

原因不明の蛋白尿を呈する患者ではALアミロイドーシスによる影響である可能性を一度想起するべきである。尿沈渣では所見に乏しく、円柱もみられず、卵円形脂肪体がみられるのみということも少なくない。

・ALアミロイドーシス患者の心臓では拡張機能障害、心室拡張末期容積の減少が認められやすい。心臓アミロイドーシスは通常、左室の壁肥厚がTTEで確認され、LVEFは病期が進行するまで正常であることが多い。つまりHFpEF様の心臓プロファイルを呈する。

左右対称性の両下肢の神経症状(神経障害)がみられる患者で、特に自律神経障害または両側手根管症候群が併存するケースではアミロイドーシスのスクリーニングの対象となる。

ALP高値で肝腫大が認められる患者では鑑別診断にアミロイドーシスを含めるべきである。また、くすぶり型多発性骨髄腫やMGUSの患者で、体重減少、浮腫、貧血を伴わない呼吸困難などの所見がみられるケースではALアミロイドーシスを想起する。

第Ⅹ凝固因子欠乏はALアミロイドーシスに特異的であり、アミロイド蛋白の第Ⅹ因子への結合によって生じると考えられている。ALアミロイドーシス患者の75%で心臓が、57%で腎臓が、22%で神経が、20%で肝臓が、17%で消化管が侵される。診断から6ヶ月以内に25%の患者がアミロイド沈着による臓器不全で亡くなる。

診断アプローチ

・ALアミロイドーシス患者の99%何らかの免疫グロブリン異常を呈していて、血清または尿の免疫電気泳動でモノクローナル蛋白が検出されるか、あるいは異常なfree light chainが検出される。こういった異常が認められる患者では骨髄生検も実施されるが、患者の57%でアミロイド沈着を検出できるという報告がある。

・疑いが強い場合において臓器生検を検討する。ATTR心アミロイドーシスの場合、生検は通常必要なく、心筋シンチグラフィーで診断が可能。

治療

・ALアミロイドーシスには化学療法や自家造血幹細胞移植が検討される。

・詳細は割愛する。

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<参考文献>

・Gertz MA, Dispenzieri A. Systemic Amyloidosis Recognition, Prognosis, and Therapy: A Systematic Review. JAMA. 2020 Jul 7;324(1):79-89. doi: 10.1001/jama.2020.5493. PMID: 32633805.

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