Marchiafava-Bignami病(マルキアファーヴァ・ビニャミ病)

Marchiafava-Bignami病(マルキアファーヴァ・ビニャミ病)

・Marchiafava-Bignami病(MBD)は、慢性的なアルコール多飲や、消化器がん術後、拒食症、不均衡な食事といった栄養障害に関連する、まれな神経疾患である。

・Marchiafava–Bignami病(MBD)は、脳梁(corpus callosum)の一次性変性疾患であり、左右対称性の脱髄(demyelination)、中心性壊死(central necrosis)、脳梁萎縮(corpus callosum atrophy)を特徴とする。MBDは非常に多彩な臨床症状を呈するが、いずれも疾患に特異的なものではない。

・急性期には、けいれん、意識障害、急速な死亡がみられることがある。亜急性期には、さまざまな程度の意識混濁、構音障害、精神・行動異常、記憶障害、左右半球の離断症候群(interhemispheric disconnection syndrome)、歩行不安定などがみられる。慢性期では、進行性認知症が主な特徴となる。

・MBDの臨床症状は多彩かつ非特異的であり、精神・行動異常を伴うことが多く、気分障害やその他の精神疾患と誤診されやすく、診断を複雑にする。

・したがって、MBDの診断と治療は困難であり、これまでの報告では予後が不良とされてきた。

・本参考文献は過去のMBD(33例を解析対象)に関する文献レビューを行い、症状などの特徴をまとめ直したものであった。

疫学

・今回解析対象となった33症例のうち、男性は22例(66.6%)、女性は11例(33.4%)であった。

・発症時の平均年齢は52.4歳であり、男性の平均は54.9歳、女性の平均は47.4歳であった。

・発症様式としては、急性発症が18例(54.5%)、亜急性発症が7例(21.2%)、慢性発症が8例(24.2%)であった。

臨床的特徴

・33例の主な臨床症状は以下のとおりである。

運動障害:22例(66.7%)で、内訳としては失調(ataxia)11例、両下肢筋力低下 3例、四肢筋力低下 3例、失調と両下肢筋力低下の合併 2例、振戦(tremor)1例、詳細不明 2例であった。

言語障害:19例(57.6%)で、内訳としては構音障害(dysarthria)11例、失語(aphasia)3例、混合型失語 2例、完全失語 1例、詳細不明 2例であった。

意識障害:18例(54.5%)で、内訳としては昏睡(coma)7例、興奮状態(agitation)4例、傾眠(somnolence)4例、その他 3例であった。

認知機能障害:15例(45.5%)で、その他の症状として感情や性格の変化 10例(30.3%)、けいれん発作 4例(12.1%)、感覚障害 3例、半側空間無視(neglect)2例、脳梁離断症候群(callosal disconnection)2例、失行(apraxia)4例、無視と失行の合併 1例という結果であった。

・以下、発症形式別の主な臨床症状は次のとおりである。

臨床検査

・血液検査では、20例中4例(20.0%)でビタミンB1(チアミン)低下、3例(15.0%)でビタミンB12低下、1例で葉酸低下が確認された。

・脳波検査(EEG)は9例(27.3%)に施行され、びまん性徐波4例、非けいれん性てんかん重積状態(NCSE)1例、異常所見なし4例という内訳であった。

・腰椎穿刺(髄液検査)は14例に実施され、7例に異常がみられ、軽度の蛋白上昇、軽度の白血球上昇などが含まれた。

・全33例がMRI検査を受け、以下の所見が確認された。脳梁膨大部(splenium of corpus callosum)病変 28例(84.9%)、脳梁膝部(genu of corpus callosum)病変 18例(54.6%)、膝部と膨大部の両方の病変 5例(15.2%)、膝部・膨大部・白質の病変 7例(21.2%)(うち急性発症6例、亜急性発症1例)、脳梁外の病変 18例(54.6%)、皮質下白質の病変 16例(48.5%)、小脳の病変 3例(9.10%)。

治療内容とその後の経過

・33例中20例(60.6%)がビタミンB製剤による治療を受け、そのうち16例で症状の改善がみられた。

・ビタミンB1(チアミン)が投与されたのは12例で、確認可能な範囲での内訳は以下の通りである。

  1. 1例:静注200 mg/日を28日間、以後経口30 mg/日へ切り替え
  2. 6例:静注500 mg/日以上、治療期間は多くが2週間以上
  3. 2例:500 mg/日では効果不良のため、1000〜1500 mg/日に増量後、症状改善

・ビタミンB12が投与されたのは6例で、確認可能な範囲での内訳は以下の通りである。

  1.  2例:1 mg/日静注、7日以上
  2. 2例:経口0.5 mg/日、14日以上

・葉酸が投与されたのは4例で、確認可能な範囲での内訳は以下の通りである。

  1. 1例:1 mg/日静注(治療期間不明)
  2.  1例:5 mg/日静注
  3. 1例:5 mg経口、1日3回

予後

・治療により改善したのが23例(69.7%)、改善がみられなかったのは3例(9.1%)、植物状態に至ったのが1例(3.0%)、死亡に至ったのが2例(6.1%)、追跡不能だったのが4例(12.1%)であった。

・予後不良の6例に関しては、難治性の栄養障害(2例)、意識障害の存在(2例)、てんかんを含む合併症(2例)が関与していると考えられた。

・長期飲酒歴のある患者では死亡例はみられなかった。

・一方、飲酒歴のない患者で死亡した2例は、それぞれ血液疾患および腫瘍によるものであった。

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<参考文献>

・Liu C, Wang H, Xie B, Tian S, Ding Y. Clinical analysis of Marchiafava-Bignami disease. BMC Neurol. 2024 Oct 14;24(1):389. doi: 10.1186/s12883-024-03901-y. PMID: 39402444; PMCID: PMC11472522.

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