高齢者の低栄養
目次
高齢者の低栄養
・健康的な食事は健康的な生活と関連している。
・低栄養(malnutrition)は、栄養素の摂取または吸収と身体の必要量との不均衡により、体組成の変化、身体的および精神的機能の低下、臨床転帰の悪化をもたらす状態である。低栄養という用語は、肥満、栄養不良、単一栄養素の欠乏などを含む包括的な概念として用いられることもあるが、栄養不良(undernutrition)と同義で用いられることもある。本文献では、国際疾病分類第11版(ICD-11)における定義に従い、特に高齢者に特有の特徴に焦点を当て、栄養不良(タンパク質-エネルギー低栄養)を指して「低栄養」と表現する。
・高齢者において、低栄養は身体的・認知的障害、合併症の増加、疾患転帰の悪化、入院期間の延長、生活の質の低下、医療費の増加といった深刻な悪影響をもたらすことが示されている。
疫学
・低栄養は高齢者において一般的であり、年齢とともにそのリスクは増大する。ただし、疫学データは、ケアの場、国、診断基準に大きく依存する。
・これまで、低栄養の定義と診断に関する国際的な合意が存在しなかったため、リスクのある高齢者を識別する目的で開発されたスクリーニングツール「Mini Nutritional Assessment(MNA)」が広く使用されてきた。
・このツールによる評価では、地域在住高齢者の低栄養有病率は約3%、入院患者では22%、介護施設・長期療養施設・リハビリテーション施設ではほぼ30%に達する。資源の限られた地域では、地域在住高齢者の低栄養有病率は最大18%に達することもある。
・世界の主要な学会が支持する「Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)」の診断基準を用いた研究では、さらに高い有病率が示されており、地域在住高齢者では7〜13%、入院高齢者、がん患者、心不全患者、老年リハビリや介護施設入所者では約50%に達することが報告されている。
病因
・低栄養は、食事摂取量の減少、栄養要求量の増加、消化管での吸収障害、あるいは栄養素の排泄増加によって引き起こされる可能性がある。
・若年成人における低栄養は通常、何らかの疾患によるものとして発生するのに対し、高齢者では食事摂取量の減少がより強く関連している。
・本節では、高齢者における低栄養の主な原因、危険因子、決定要因の概要を示す。
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<加齢に伴う生理学的変化>
・食欲調節の複雑なシステムにおける加齢変化は、高齢者の食欲不振(anorexia of aging)の主因となる。
・末梢の消化管ホルモンによる空腹・満腹信号の変化や、視床下部の中枢制御機構の変化によって、食欲は減少し、食後の満腹感は早期に、かつ長時間持続する。
・さらに、嗅覚や味覚の低下も高齢者の食欲不振に寄与する。
・これらの変化は、加齢に伴うエネルギー需要の低下に対する適応と考えられるが、他の危険因子が存在する場合には慢性的な低栄養につながる。
<身体的障害>
・口腔内の状態悪化は低栄養につながる。
・義歯不適合だけでなく、感染や炎症、ドライマウス(口腔乾燥症)による咀嚼困難が摂食を妨げる。
・嚥下障害(dysphagia)も摂取困難の一因であり、これは主に脳卒中、認知症、パーキンソン病などの神経疾患に起因する。
・また、関節リウマチや脳卒中による腕や手の障害は、自力での摂食や水分摂取を困難にし、移動能力の低下は買い物や調理の困難につながる。
<精神的障害>
・認知障害や認知症は通常、いずれかの段階で栄養状態に影響を及ぼす。
・行動変化により食事摂取量が減少し、エネルギー消費量が増加する(例:徘徊)。
・認知症の進行期では、体重減少、脱水、摂食・咀嚼・嚥下困難が一般的にみられる。
・せん妄(delirium)は特に入院中の摂食を妨げる。
・うつ病(depression)は全年齢で食欲不振の原因となり、高齢期では低栄養の主要因となる。
・また、高齢では稀だが神経性食欲不振症(anorexia nervosa)などの摂食障害も見逃せない。
<疾患>
・高齢者では急性疾患の発症率や慢性疾患の有病率が若年者に比べ高い。
・急性・慢性疾患は食欲減退、エネルギー・栄養素要求量の増加、消化・吸収障害を引き起こす。検査や手術前の長時間の絶食も入院患者の低栄養を助長しうる。
・疾患に関連した低栄養は全世代で過小診断・過小治療となりがちであるが、特に多疾患併存の高齢者では重要であり、これを受けて2023年にはWHOが行動喚起を発表している。
・慢性疾患が低栄養に至る機序は多様で未解明な点も多く、炎症を伴う場合には悪液質(cachexia)と密接に関連する。各疾患は、炎症、代謝異常、食欲低下、治療介入などを通じて異なる経路で栄養に影響する。さらに、健康障害と低栄養は双方向性に影響し合うと考えられており、低栄養は新たな健康問題の発生リスクも高める。
<薬剤>
・多くの薬剤は少なくとも一つの消化器系副作用(食欲減退、感覚障害、悪心、便秘、口腔乾燥など)を有し、摂取量の減少を招く。
・ポリファーマシー(polypharmacy)は栄養素の生物学的利用能にも悪影響を及ぼす。
・薬剤関連栄養素欠乏症のリスクは、薬剤数や使用期間が増えるほど高まる。
<社会的・経済的困難>
・食事は高齢者にとって重要なもので、孤独、孤食、社会的孤立は食欲減退・摂取量低下につながる。
・配偶者の喪失や介護施設への転居といった大きな生活上の変化は、生きる意欲や摂食意欲に影響し、体重減少を引き起こしうる
・支援を必要とする高齢者では、栄養は受ける支援の質と量に大きく依存する。
・裕福な社会でも貧困は気づかれにくい低栄養のリスクとなる。
・病院や施設では、食事提供から看護、経腸・静脈栄養までを含む栄養ケアの質が栄養状態を左右するが、時間的・経済的制約、医療従事者の栄養知識不足により適切な栄養が脅かされることもある。
<直接的な栄養要因>
・偏った食事、食事回数の不足、アルコール過剰摂取など多くの食習慣要因がエネルギー・必須栄養素の摂取不足に関与する。
・高齢者は医師からの食事制限を過度に遵守する傾向があり、不必要に食事が制限されることがある。
リスク因子
・高齢者における多くの症候群と同様に、低栄養の原因は通常多因子的であり、個々の状況に応じて様々な要因が組み合わさって発生する。
・急性期の老年内科病棟では、急性疾患が低栄養の主要原因となることが多く、特に栄養への配慮や実践が不十分な場合は顕著である。
・介護施設では、認知機能障害および機能障害が重要な危険因子である。
・地域在住高齢者では、身体機能の制限や入院歴が低栄養の誘因となり、社会的孤立も重要な要素となっている可能性がある。
・一般に、障害の増加や健康状態の悪化といった危険因子が多数重なるほど、低栄養のリスクは高まる。
DoMAPモデル
・高齢者の低栄養の病因的要因に関する理解を深める目的で、多段階の合意形成プロセスにより「高齢者における低栄養決定要因モデル(DoMAPモデル: Determinants of Malnutrition in Aged Persons Model)」が開発された。
・このモデルは、影響要因の数を重視し、さらに因果メカニズムに基づき直接要因と間接要因を区別して分類している(図は参考文献を参照)。
- レベル1(濃緑色):中心的な病因(例:摂取不足、栄養素利用能の低下、要求量の増加)
- レベル2(薄緑色):レベル1に直接影響する要因(例:嚥下障害は直接的に摂取不足を引き起こす)
- レベル3(黄色):レベル1やレベル2に間接的に影響する要因(例:脳卒中は嚥下障害を通じて摂取不足を招く)
・赤文字で示された要素は加齢に伴う変化やより間接的・潜在的に影響する一般的側面である。
・このモデルはまだ妥当性の検証が行われていないが、臨床現場において高リスクの高齢者を同定し、診療アプローチを組み立てる際のチェックリストとして有用である可能性がある。
急性低栄養と慢性低栄養
・高齢者における低栄養は、しばしば急性疾患や重度の心理的ストレスにより短期間(数日から数週間以内)で著しい体重減少が生じることが多い。
・このような場合、患者や医療従事者の双方が臨床的に比較的容易に把握できる。
・一方で、慢性疾患や持続的ストレスなどにより、わずかな摂取不足や要求量の微増が長期間持続することで、徐々に持続的な体重減少が進行することもある。
・このため、米国・欧州の栄養学会では、低栄養リスクを早期に発見するために妥当性の検証されたスクリーニングツールの使用が推奨されている。
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症候群的診断(Syndromatic Diagnosis)
・高齢者の低栄養診断アプローチは若年成人と基本的に同様であり、「Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM基準)」の枠組みが用いられる。
・このアプローチでは、以下の5つの診断基準が評価される:
<表現型的基準(phenotypic criteria)>
- 体重減少
- 低体格指数(BMI)
- 筋肉量減少
<病因的基準(etiologic criteria)>
- 接取不足(あるいは消化不良・吸収障害)
- 炎症
・このうち、表現型・病因型それぞれから少なくとも1項目ずつが存在する必要がある。
・高齢者ではBMIのカットオフが若年者より高めに設定されており、70歳以上ではBMI<22が低栄養、BMI<20が重度低栄養を示す。
・GLIM診断はスクリーニング検査から開始するが、低栄養が高度に有病な場面(例:急性期老年内科病棟)ではスクリーニングの必要性が議論されている。
・高齢者における妥当性の高いスクリーニングツールとして「Mini Nutritional Assessment-Short Form(MNA-SF)」があり、6項目(食事摂取量減少、最近の体重減少、移動能力、急性疾患またはストレス、神経心理学的問題、低BMI)を評価し、0〜14点でスコア化する。12点未満は低栄養リスクがあるとされ、その後GLIM基準による確定診断が必要となる。
・他にも様々な医療現場で使用可能な妥当性検証済みスクリーニングツールが存在する。
・重要なのは、血清アルブミン、プレアルブミンなどの従来型バイオマーカーは栄養指標として使用すべきではない点である。
病因的診断(Etiologic Diagnosis)
・世界の資源制約地域では、高齢者に限らず栄養価の高い食物へのアクセス不足が低栄養の主たる要因である。
・一方、先進国では、多数の要因が複合的に関与する「老年症候群」として捉えるべきである。
・低栄養が確認された、あるいはそのリスクがある場合は、すべての可能性のある原因や併存要因を慎重に探索すべきであり、単なる栄養介入や個別因子の治療だけでは改善困難である可能性が高い。
・急性および慢性疾患(多疾患併存含む)、薬物治療、身体的・精神的障害、社会的問題などを幅広く評価する必要がある。
・これにはCGA; comprehensive geriatric assessmentが最も有効とされる。
・高齢者では病態変化が急速に生じうるため、治療に期待通りの効果が得られない場合は、定期的な再評価により新たな併存要因を同定することが重要となる。
鑑別診断:サルコペニアと悪液質
・高齢者の低栄養は、他の一般的な老年症候群としばしば関連しており、特に栄養が病因的に重要な役割を果たす疾患が多い。
<サルコペニア(Sarcopenia)>
・サルコペニアは、加齢に伴う骨格筋量と筋機能の加速的な減少であり、通常は加齢と関連するが、それに限らない。
・GLIMの診断基準において低筋肉量が低栄養の表現型基準として含まれる場合、サルコペニアの評価には筋力の評価が不可欠である。
・サルコペニアは低栄養に合併して身体機能障害やその他の有害転帰を引き起こすことがある。逆に、サルコペニアが診断された際には、GLIM基準に基づき低栄養の評価を行うべきである。なぜなら、低栄養はサルコペニアの主要な病因的要因の一つであるからである。
<悪液質(Cachexia)>
・悪液質は重度の体重減少が特徴であり、常に低栄養と関連してきた。
・悪液質は心不全や肝不全といった終末期臓器不全、ならびに高度な炎症を伴う疾患と関連している。
・悪液質の診断基準には低栄養の基準(炎症や体重減少)と重なる要素が含まれる。
・悪液質や重度の炎症が存在する場合、栄養介入のみでは状態の改善は期待できないため、悪液質を適切に認識し、治療することは体重減少を呈する高齢患者において重要である。
予防と治療
・リスクのある人における低栄養の予防や、発症した低栄養の治療には有効な戦略が存在する。
・現在の知見は、欧州静脈経腸栄養学会(European Society of Parenteral and Enteral Nutrition: ESPEN)が発表した「老年患者における臨床栄養および水分補給の実践ガイドライン」にまとめられている。
<治療目標>
・治療目標は、栄養摂取(具体的にはエネルギーとたんぱく質)および栄養状態(体重と体組成)に基づいて設定されるべきである。
・全体的な目標は、以下の通りである。
- 患者の必要量を満たすエネルギー・栄養素摂取を可能にする
- 栄養状態の改善または悪化防止
- 臓器機能、活動性、日常生活の自立を支援
- 患者自身の資源を強化
- 疾患や合併症に対する抵抗力を高める
<栄養摂取に関する指針>
・高齢者では、体重1kgあたり1日30kcalのエネルギー摂取が目安となる。
・ただし、個々のエネルギー必要量は大きく異なるため、この概算値は、患者の現在および目標の栄養状態、身体活動量、疾患状態、食事耐容性(必要な食事が摂取可能か、副作用が受容可能か)を考慮して調整する必要がある。
・体重(浮腫や水分喪失も考慮)を密にモニタリングし、摂取量を適宜調整する。
・高齢者のたんぱく質必要量については議論があるが、若年者より高めであるべきという点では広く一致している。
・概して体重1kgあたり最低1.0g/日のたんぱく質摂取が目標とされる。
・これは特に、虚弱、複数疾患の併存、慢性的なたんぱく質摂取不足がみられる高齢者で重要である。
・筋肉増強、組織修復、創傷治癒、疾患による代謝需要増大に応じて、さらに摂取量を増加させるべきである。
・ただし、慢性腎不全(ステージ4〜5)患者では、たんぱく質制限の利益とリスクを慎重に検討する必要がある。
・エネルギーとたんぱく質以外にも、すべての必須栄養素を十分に摂取する必要がある。
・若年成人と高齢者の栄養必要量に大きな違いはなく、特別な推奨は存在しない。
・多様な食事を摂れば通常は必要量を満たせるが、1日1500kcal未満の食事では微量栄養素やミネラルの欠乏リスクがあり、サプリメントや栄養製品による補充が必要となることがある。
・ビタミンD欠乏は高齢者に一般的であり、存在する場合は補正も検討する必要がある。
栄養療法の基本原則:予防的・個別的・包括的アプローチ
・高齢になるにつれ低栄養はより早く進行し、治療が難しくなるため、予防がますます重要となる。
・栄養の問題が発生し始めた段階での早期かつ迅速な介入が成功の鍵である。
・したがって、高齢者は定期的に低栄養のスクリーニングを受け、リスクのある人を早期に同定すべきである。
・栄養介入は個別化されるべきであり、患者の嗜好や利用可能な資源、多様な高齢者集団や低栄養原因の背景を考慮しなければならない。
・個別化アプローチの有効性は、EFFORT trialで強く支持されている。この試験では、参加者約2000人の平均年齢が76歳であり、65歳未満は17.5%に過ぎなかった。訓練を受けた栄養士がプロトコールに従って個々のエネルギー・たんぱく質目標を達成する介入を行った結果、30日以内の有害事象(死亡、ICU転送、予期せぬ再入院、重篤な合併症、機能低下)の合計発生率が有意に低下し、30日死亡率、機能状態、生活の質も改善した。80歳以上・虚弱・認知障害を有する881人の脆弱群においては、30日死亡率低下がさらに顕著であった。180日死亡率やBarthel Index、QOLスコアの改善も統計的に有意であった。
・老年医学の一般原則に従い、栄養介入は包括的であるべきであり、あらゆる関連因子を考慮する必要がある。
・すべての介入は総合的なケア計画に組み込まれ、患者・家族・介護者・医師・栄養士・療法士らの多職種連携とコミュニケーションに基づいて実施されるべきである。
病因的介入および支持的介入
・高齢者の栄養状態維持・改善の介入は、標準的な栄養療法を超えて、個々の原因に応じた介入が必要である。
- 服薬の見直し(摂食への悪影響軽減)
- 歯科治療や嚥下障害への介入
- 自立摂食を支援する補助具の使用
- 在宅支援や宅配食
- 食事の付き添いや食事支援
・加えて、看護支援・運動療法・個別栄養カウンセリングなどの支持的介入も、栄養状態の改善に寄与する。
栄養療法
・直接的な栄養介入は、まず経口摂取の最適化に重点を置くべきである。
・通常の食事内容を改善できる場合があり、以下のような栄養療法の強化が推奨される:
- 卵、クリーム、ナッツ、植物油など栄養価の高い食品の追加
- プロテインパウダー、マルトデキストリン等の栄養濃縮物による補強
・経口栄養補助食品(oral nutritional supplements: ONS)も、エネルギーおよび栄養素摂取量の増加に大きく寄与する。
・多数の臨床試験・システマティックレビューが、入院中および退院後の栄養状態、臨床転帰、機能転帰の改善効果を報告しているが、結果は一貫していない部分もある。
・ONSの継続利用には、味・食感・提供タイミングを患者の嗜好と摂食能力に合わせる工夫が重要であり、定期的なモニタリングが必要である。
・糖尿病、サルコペニア、消化器疾患等の併存症に特化したONS製品も利用可能である。
・経腸栄養や静脈栄養が適応となる状況もあり、高齢というだけでこれらを禁忌とすべきではない。
・経腸・静脈栄養の原則は若年者と同様である。
・経口あるいは経腸摂取が3日以上不可能、または1週間以上必要量の半分未満しか摂取できないと予想される場合、予後に合理的利益が期待できる高齢者にはこれらの栄養法が適応となりうる。ただし、これら侵襲的介入の適応決定は、すべての関係者による慎重な意思決定が必要である。
・ONSは医療行為としての治療であり、状態やQOLの改善が現実的に期待できる場合に限って使用すべきである。
・認知症末期など終末期には、快適な摂食(comfort feeding)が優先されるべきである。
・経腸栄養開始時はrefeeding症候群回避のため、初日から3日間で漸増する。
・経腸栄養中の高齢者でも、可能な限り安全な範囲で経口摂取を継続するよう促すべきである。
不確実な領域(Areas of uncertainty)
・GLIM基準は2019年に発表されたため、それ以前の多くの研究では低栄養の定義に様々なアプローチが用いられてきた。
・研究対象集団も、栄養状態やリスク因子において多様であり、この多様性が介入研究の結果の不均一性の一因となっている。
・さらに、栄養介入研究の進展を遅らせている要因として以下が挙げられる:
- 介入効果の主要アウトカムに関する合意の欠如(体重やBMI変化 vs 死亡率・機能・臨床経過の変化など)
- 方法論的な弱さ(ランダム化試験の少なさ、盲検化の困難さ)
- 通常食自体が介入の交絡因子となる特性
- 臨床状況の多様性
・特に慢性炎症のような各種病因的経路の役割は今後さらに解明が必要である。
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<参考文献>
・Alfonso J, et al. Malnutrition in older adults. N Engl J Med 2025;392:2244-2255