食物アレルギー food allergy
食物アレルギーとその疫学
・有病率は不明であるが、IgE依存性食物アレルギーは過去20年間で増加していることが示唆されている。
・食物アレルギーはアトピー素因を有する人において発症しやすい。
・本邦における有病率は乳児で7.6~10%、2歳児で6.7%、3歳児で約5%、保育所児で4.0%、学童以降で6.3%と報告されている。また、全年齢をとおして推定1~2%程度と考えられる。
・全年齢における原因食物としては多い順に鶏卵(33.4%)、牛乳(18.6)、木の実類(13.5)、小麦類(8.8)、落花生(6.1)、魚卵(5.2)、果実類(3.5)、甲殻類(3.3)、魚類(1.6)、大豆(1.3)、蕎麦(1.1)と報告されている。
・18歳以上における原因食物とすると、多い順に小麦(19.7%)、甲殻類(15.8)、果実類(12.6)、魚類(9.8)、大豆(6.6)、木の実類(5.5)とされている。
・学童期まで遷延した即時型食物アレルギーでも一部は加齢とともに耐性を獲得することが知られている。特に小児期に診断された牛乳や鶏卵に対するアレルギーは学童期までに耐性を獲得しやすい。
・運動、ウイルス感染症、月経、心理的ストレス、アルコール摂取などの要因により、アレルゲン曝露後の反応の程度が変化し得る。
IgE依存性食物アレルギーの病型
<食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎>
・発症年齢:乳児期
・頻度の高い食物:鶏卵、牛乳、小麦など
・耐性獲得:多くが加齢とともに寛解する
・その他:すべての乳児アトピー性皮膚炎が食物アレルギーに関連しているわけではない。
<即時型症状(蕁麻疹, アナフィラキシーなど)>
・発症年齢:乳児期~成人期
・頻度の高い食物:
・乳児~幼児:鶏卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、木の実類、魚卵など
・学童~成人:甲殻類、魚類、小麦、果物類、木の実類など
・耐性獲得:鶏卵・牛乳・小麦は獲得しやすい。その他は寛解しにくい。
・その他:通常はアレルゲン曝露後2時間以内にアレルギー反応が生じる。
<食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)>
・発症年齢:学童期~成人期
・頻度の高い食物:小麦、エビ、果物など
・耐性獲得:寛解しにくい
・その他:原因食物摂取から2時間以内に誘発されやすい。なお、FDEIAとして経過観察されているなかで、運動なしに食物摂取のみで症状が出ることもある。
<口腔アレルギー症候群(OAS)>
・発症年齢:幼児期~成人期
・頻度の高い食物:果物、野菜、大豆など
・耐性獲得:寛解しにくい
・その他:特に口唇・口腔咽頭粘膜における症状を呈し、通常は摂取直後から症状が出現する。掻痒や咽頭異和感、血管性浮腫を呈する。花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)は花粉アレルゲンと果物や野菜などの食物アレルゲンとの交差反応により生じる病態である。カバノキ科(ハンノキ、シラカンバ)が原因花粉の場合、バラ科果物、ヘーゼルナッツ、マメ科、セリ科の食物に交差反応を示す。草本花粉(イネ科、ブタクサ、ヨモギなど)が原因花粉の場合、ウリ科、トマト、オレンジ、バナナ、アボカドなどの幅広い食物に交叉反応を示す。ヒノキ科(スギ、ヒノキ)が原因花粉の場合、バラ科果物、柑橘系果物、ザクロ、イチジクに交差反応を示す。
アセスメント
・食物アレルギーの診断において最も重要なのは病歴であり、摂取した食物の種類、出現した症状とそのタイミングなどが重要である。
・検査としては通常、アレルゲン特異的IgE抗体、皮膚プリックテストが挙げられる。病歴を聴取せずにこれらの検査を単独で実施した場合の陰性的中率は90%超であるが、陽性的中率は約50%に過ぎないとされている。
・皮膚プリックテストはアレルゲン特異的IgE抗体とおもに感度が高いが、食物経口負荷試験(OFC)と比較すると特異度が低い。
・病歴および臨床検査から食物アレルギーの可能性が高いとまではいえないが、否定もしきれないときには経口食物負荷試験が検討される。また、食物アレルギーは前述のように加齢とともに軽快するため、その原因食物に対するアレルギー反応を呈さなくなっていることを確認する目的でも経口食物負荷試験は実施され得る。
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<参考文献>
・Jones SM, Burks AW. Food Allergy. N Engl J Med. 2017 Sep 21;377(12):1168-1176. doi: 10.1056/NEJMcp1611971. PMID: 28930512.
・厚生労働科学研究班による食物アレルギーの診療の手引き2023. 最終閲覧: 2025年02月04日.