好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 EGPA:eosinophilic granulomatosis with polyangiitis

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症とその疫学

・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(以下EGPA: eosinophilic granulomatosis with polyangiitis)は好酸球浸潤を伴う気道の壊死性肉芽腫性炎症と小型血管炎を特徴とする疾患である。

・以前はチャーグ・ストラウス症候群と呼ばれていた。

・地域により異なるが、年間発症率は人口10万人あたり0.5~4.2例と報告されている。なお、GPAやMPAと比較するとEGPAは稀であり、かつ地理的差異も比較的小さいと考えられている。

・患者のほとんどは成人であるが、小児発症例も存在する。

臨床症状/臨床経過

・EGPAは全身性疾患であり、3つの段階(前駆期、好酸球増多期、血管炎期)を経て進行する。

前駆期(prodromal phase)ではアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、喘息が主症状となる。その後、前駆期から8~10年程度経過した後に好酸球増多期へ移行する

好酸球増多期(eosinophilic phase)では好酸球増多、好酸球浸潤がみられる。典型的には好酸球浸潤による肺浸潤、消化管障害、好酸球性心筋症による心不全などをきたす。

血管炎期(vasculitic phase)では全身性の小~中型血管炎を来し, 血管内外に肉芽腫を形成する。典型的には糸球体腎炎、触知可能な紫斑、神経障害などをきたす。

・ただし、EGPAの臨床表現型は多彩で、必ずしも前述の3段階がはっきりしない。

喘息/副鼻腔疾患

喘息はEGPA患者の95~100%で発症し、ほとんどの症例で初発症状となる。

・典型的には成人発症の喘息、喀痰中好酸球増多がみられ、各種アレルギー検査が陰性である。

・また再発性鼻炎、難治性の慢性副鼻腔炎を呈することがある。

・患者のほぼ半数は鼻茸を有していて、特に免疫抑制療法を受けていない患者では術後に鼻茸が再発することが多い。

心臓/消化管障害

・肺浸潤はEGPAの最も典型的な症状の一つで、患者の40~60%で認められる。

・胸部X線撮影では末梢優位の斑状陰影として認められやすく、移動性の陰影となることもある。HRCTでは結節気管支肥厚なども認められる。

・ごく一部の患者ではあるが、急性経過の呼吸困難と貧血を来すことがあり、このときは肺胞出血の合併を疑う。

・心臓由来の症状は30~45%で認められ、他のANCA関連血管炎(AAV)よりも頻度が高い。

・すべての心臓構造が傷害される可能性があるが、典型的には好酸球性心筋症として発症する。この場合、心内膜に好酸球浸潤が認められる。なお、心筋症の合併は独立した予後予測因子とされていて、EGPAに関連する死因で最も多い。

・消化管は比較的侵されにくい。症状としては非特異的な腹痛、下痢、軽度の出血が挙げられる。腹部造影CT撮像では病変部の造影増強効果が認められる。

・内視鏡検査を行うと結腸に潰瘍形成が認められることもあるが、小腸が限局的に侵されることも多いため、カプセル内視鏡検査も検討される。

腎臓/皮膚/末梢神経障害

・EGPAにおける腎障害はGPAやMPAと比べると頻度が低く、重症度も低い

・患者の最大25%で尿検査異常(軽度の蛋白尿や顕微鏡的血尿)が認められるが、腎不全に至ることは稀である。しかし、最大5%の患者で急速進行性糸球体腎炎を発症することには留意する。

・皮膚所見としては触知可能な紫斑が一般的である。そのほか皮膚潰瘍や結節が認められることもある。また、一部の患者では蕁麻疹様の皮疹をきたすこともある。

末梢神経障害は患者の半数以上で認められ、しばしば重度な障害となる。感覚障害のみならず、運動障害も来し得る。神経伝導検査は補助的に使用可能である。

その他の症状

・ANCA関連血管炎では静脈血栓塞栓症のリスクが高まる。特に疾患活動性が高い時期に発症しやすいことが示唆されている。これは好酸球浸潤による血管内皮障害により血液凝固能亢進状態をきたすためである。

・また、血栓症はMPO-ANCA陽性のケースの方が、PR3-ANCA陽性のケースよりも高確率に生じることが知られている。

・稀であるが、EGPAでは後腹膜、膵臓、唾液腺に腫瘤を形成することがある。組織学的検査ではIgG4関連疾患のそれに一致する所見が認められることがある。実際、EGPAとIgG4関連疾患の重複発症例も報告されている。活動性のEGPAではIgG4高値となりやすい。

臨床検査

・ANCAはEGPA患者の30~40%のみで陽性であるのに対し、GPAやMPAの患者では70~90%で陽性となる点で異なる。EGPAではMPO-ANCAが陽性となる。

・好酸球増多はほぼ一貫して認められ、疾患活動性に関連する。IgEもしばしば高値となる。

・CRPやESRなどの炎症マーカーはEGPA発症時に特に上昇しやすい。

・ANCA陽性のケースでは血管炎症状、すなわち糸球体腎炎、紫斑、末梢神経障害をきたす可能性が高い。一方で、ANCA陰性のEGPAでは心筋症、消化管障害、肺浸潤をより合併しやすい。

・特に消化管症状を伴うケースでは寄生虫感染症も鑑別に挙げられる。便培養の感度は低いことに留意しつつも、実際には検査を実施するべきでらう。

・好酸球増多および呼吸器症状が併存している場合にはアレルギー性肺アスペルギルス症(ABPA)も鑑別に挙げられるため、特異的抗体なども提出するとよい。なお、ABPAでは中枢性気管支拡張とCT値の高い粘液栓が認められやすい。そのほか慢性好酸球性肺炎も鑑別疾患に挙げられる。

厚生労働省研究班による診断基準

  1. 主要検査所見 
    • (1)気管支喘息あるいはアレルギー性鼻炎
    • (2)好酸球増加
    • (3)血管炎による症状: 発熱(38度以上, 2週間), 体重減少(6ヶ月以内に6kg以上), 多発性単神経炎, 消化管出血, 多関節痛(炎), 筋肉痛(筋力低下), 紫斑のいずれか1つ以上
  2. 臨床経過の特徴

  主要臨床所見(1), (2)が先行し, (3)が発症する

3. 主要組織所見

   (1) 周囲組織に著明な好酸球浸潤を伴う細小血管の肉芽腫性またはフィブリノイド壊死性血管炎の存在

  • (2)血管外肉芽腫の存在

(1) Definite:

 (a)1. 主要臨床所見3項目を満たし, 3. 主要組織所見の1項目を満たす場合

 (b)1. 主要臨床所見3項目を満たし, 2. 臨床経過の特徴を示した場合

(2) Probable:

 (a)1. 主要臨床所見1項目および3. 主要組織所見の1項目を満たす場合

 (b)1. 主要臨床所見を3項目満たすが, 2. 臨床経過の特徴を示さない場合

治療/経過観察

・1996年に示された予後不良因子(FFS)には①65歳以上 ②心機能障害 ③腎不全 ④消化管障害の存在 ⑤ENT(耳/鼻/喉)に症状がないこと が挙げられていて、これを利用した死亡リスク、重症度の評価を行い、治療方針を検討する。

・予後不良因子に該当しない場合にはステロイド単剤による治療が検討されるが、該当する場合にはステロイドと免疫抑制薬の併用療法が検討されることとなる。

・疾患活動性はBVASを用いて評価される。

・寛解導入にリツキシマブ(RTX)の有効性を示した研究も存在する。また、抗IL-5抗体製剤も検討可能である。

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<参考文献>

・Trivioli G, Terrier B, Vaglio A. Eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: understanding the disease and its management. Rheumatology (Oxford). 2020 May 1;59(Suppl 3):iii84-iii94. doi: 10.1093/rheumatology/kez570. PMID: 32348510.

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