CD腸炎/CDI(clostridioides difficile infection)
CDIの概要
・CDI(Clostridioides difficile infection)は最も一般的な院内感染症の一つである。
・直近10年間で発症率は世界的に増加している。
・2021年に米国感染症学会(IDSA)は再発率が低いことを理由に初期治療としてVCM(バンコマイシン)やMNZ(メトロニダゾール)よりもFDX(フィダキソマイシン)を優先して使用することを推奨するようになった。
・また再発性CDIの治療にもFDXを優先的に使用するべきとしている。
・糞便移植治療(FMT)の有効性も示されつつあり、RBX2660やSER109などの生菌も承認されている。
・Clostridioides difficileは腸内細菌の一つで、1935年に新生児の便から発見され、1978年に偽膜性大腸炎の原因菌であることが示唆された。
・CDIによる死亡率は約5%で、全死亡率は15~20%と報告される。
・C.difficileは主に2種類の毒素(Toxin AとToxin B)を産生し、腸管上皮細胞を傷害する。
・CDI発症の最大のリスク因子は抗菌薬曝露である。そのほかのリスク因子としては高齢(≧65歳)、PPIの使用、炎症性腸疾患、リンパ腫、白血病、慢性腎臓病、化学療法、肥満、胃バイパス手術などの併存疾患が挙げられる。
・再発性CDIはCDIの治療が奏功した後、2~8週間以内に症状が再発したものと定義される。初回CDI発症後、15~30%程度の患者で再発が認められ、再発を繰り返すごとに再発率は上昇することが知られる。
診断
・CDIは原因不明の軟便や水様便が24時間以内に3回以上みられる患者で想定し、抗菌薬曝露歴がある患者では特に疑いを強める。
・検査としては2段階検査(GDH抗原+EIA法によるトキシン検出)がなされる。GDH抗原はスクリーニング検査として使用でき、結果が陰性であれば通常CDIは否定される。GDH抗原とトキシンがいずれも陽性であればCDIと診断する。なお、GDH抗原が陽性で、かつトキシン陰性の場合にはPCR検査を追加し、陽性であればCDIと診断し、陰性であればCDIは否定する。
・CDI患者では下痢が寛解した後もGDH抗原とトキシンを排出し続けるため、同一エピソードにおける下痢が出現してから7日以内に再検査を行わないことが推奨されている。
重症度分類
・CDIはIDSAガイドライン(2021年版)に則り、軽症、重症、劇症に分類する。
・軽症:WBC<15,000/mL, sCr<1.5mg/dL
重症:WBC>15,000/mL, sCr≧1.5mg/dL
劇症:ショック、イレウス、中毒性巨大結腸性を伴う
治療
・CDIの治療は重症度に基づいて行われる。
・経口MNZは経口VCMよりも有効性が低いことが示されている。MNZはVCMが使用できない状況などで推奨される。
・CDIの初発例ではVCMとFDXの治癒率は同等である。しかし、再発率はFDXにより40%減少させ、死亡率も2.9%→1.2%へと半減させることが示されている。FDXは比較的高価な薬剤であるが、その臨床効果により正当化されると指摘する専門家もいる。
・ベズロトクスマブ(ジーンプラバ®点滴静注)はトキシンBを中和する人モノクローナル抗体製剤である。1回の投与で再発リスクの高い患者の再発率を10%減少させることが示唆されている。65歳以上、免疫不全者、重度のCDIと再発抑制のために使用されることがある。ただし、高価な薬剤であることに留意する必要がある。また心不全を悪化させる可能性があり、慎重に使用する。なお、ベズロトクスマブを使用する際にはFDXなどの抗菌薬投与に併用する形式で単回投与を行う。
・MNZは非劇症例に対する治療に適していない。
<初発例>
<非劇症CDI>
・FDX 200mg 1日2回 10日間
・VCM 125mg 1日4回 10日間
<劇症CDI>
・VCM 500mg 1日4回 10日間+MNZ 500mg 8時間おきに静注
<再発例>
<初回再発>
・初発時にVCMが使用された際にはFDXに変更し標準レジメン(FDX 200mg 1日2回 10日間)あるいはそれを延長させたレジメンで投与する。
・初発時にMNZが使用された際にはVCMまたはFDXによる標準レジメンで投与する。
・初発時にFDXが使用された場合には再発時の治療としてFDX 200mg 1日2回 5日間を投与しその後、6~25日目までは1日おきに200mgを投与する
・VCM 125mg 1日4回 10日間投与し, その後1日2回, 1日おきに1日1回と漸減し, その後は8週間目まで隔日投与する。
<2回目以降の再発>
・糞便移植治療(FMT)など
予防/感染対策
・CDIを減少させるためには抗菌薬適正使用が重要である。なお、PPIの使用制限、プロバイオティクスの実施、無症候性保菌者の隔離といった対策が有効性を示す十分なエビデンスはない。
・CDIを発症した患者については、トイレは個室利用とし、手洗いや定期的なシャワー利用をしてもらうことが重要である。隔離は下痢が寛解した後も48時間程度、または隊員までは継続するべきである。
・医療従事者は適切に手指衛生を行う必要性が高く、特に石鹸と水で手を洗いしっかりと洗い流すことが重要である。石鹸には殺芽胞作用があり、アルコール消毒液よりも優れる。
糞便移植
・糞便移植治療(FMT)によるEHECに感染をきたしたという報告例がある。
・また腸内細菌叢の変化により関節リウマチなどの自己免疫疾患が長期的には発症する懸念が存在する。
・今後の本邦での知見集積が待たれる。
――――――――――――――――――――――――――――――
<参考文献>
・Yakout A, Bi Y, Harris DM. Clostridioides Difficile: A Concise Review of Best Practices and Updates. J Prim Care Community Health. 2024 Jan-Dec;15:21501319241249645. doi: 10.1177/21501319241249645. PMID: 38726585; PMCID: PMC11085020.
<CDIの概要>
・CDI(Clostridioides difficile infection)は最も一般的な院内感染症の一つである。
・直近10年間で発症率は世界的に増加している。
・2021年に米国感染症学会(IDSA)は再発率が低いことを理由に初期治療としてVCM(バンコマイシン)やMNZ(メトロニダゾール)よりもFDX(フィダキソマイシン)を優先して使用することを推奨するようになった。
・また再発性CDIの治療にもFDXを優先的に使用するべきとしている。
・糞便移植治療(FMT)の有効性も示されつつあり、RBX2660やSER109などの生菌も承認されている。
・Clostridioides difficileは腸内細菌の一つで、1935年に新生児の便から発見され、1978年に偽膜性大腸炎の原因菌であることが示唆された。
・CDIによる死亡率は約5%で、全死亡率は15~20%と報告される。
・C.difficileは主に2種類の毒素(Toxin AとToxin B)を産生し、腸管上皮細胞を傷害する。
・CDI発症の最大のリスク因子は抗菌薬曝露である。そのほかのリスク因子としては高齢(≧65歳)、PPIの使用、炎症性腸疾患、リンパ腫、白血病、慢性腎臓病、化学療法、肥満、胃バイパス手術などの併存疾患が挙げられる。
・再発性CDIはCDIの治療が奏功した後、2~8週間以内に症状が再発したものと定義される。初回CDI発症後、15~30%程度の患者で再発が認められ、再発を繰り返すごとに再発率は上昇することが知られる。
<診断>
・CDIは原因不明の軟便や水様便が24時間以内に3回以上みられる患者で想定し、抗菌薬曝露歴がある患者では特に疑いを強める。
・検査としては2段階検査(GDH抗原+EIA法によるトキシン検出)がなされる。GDH抗原はスクリーニング検査として使用でき、結果が陰性であれば通常CDIは否定される。GDH抗原とトキシンがいずれも陽性であればCDIと診断する。なお、GDH抗原が陽性で、かつトキシン陰性の場合にはPCR検査を追加し、陽性であればCDIと診断し、陰性であればCDIは否定する。
・CDI患者では下痢が寛解した後もGDH抗原とトキシンを排出し続けるため、同一エピソードにおける下痢が出現してから7日以内に再検査を行わないことが推奨されている。
<重症度分類>
・CDIはIDSAガイドライン(2021年版)に則り、軽症、重症、劇症に分類する。
・軽症:WBC<15,000/mL, sCr<1.5mg/dL
重症:WBC>15,000/mL, sCr≧1.5mg/dL
劇症:ショック、イレウス、中毒性巨大結腸性を伴う
<治療>
・CDIの治療は重症度に基づいて行われる。
・経口MNZは経口VCMよりも有効性が低いことが示されている。MNZはVCMが使用できない状況などで推奨される。
・CDIの初発例ではVCMとFDXの治癒率は同等である。しかし、再発率はFDXにより40%減少させ、死亡率も2.9%→1.2%へと半減させることが示されている。FDXは比較的高価な薬剤であるが、その臨床効果により正当化されると指摘する専門家もいる。
・ベズロトクスマブ(ジーンプラバ®点滴静注)はトキシンBを中和する人モノクローナル抗体製剤である。1回の投与で再発リスクの高い患者の再発率を10%減少させることが示唆されている。65歳以上、免疫不全者、重度のCDIと再発抑制のために使用されることがある。ただし、高価な薬剤であることに留意する必要がある。また心不全を悪化させる可能性があり、慎重に使用する。なお、ベズロトクスマブを使用する際にはFDXなどの抗菌薬投与に併用する形式で単回投与を行う。
・MNZは非劇症例に対する治療に適していない。
<初発例>
<非劇症CDI>
・FDX 200mg 1日2回 10日間
or
・VCM 125mg 1日4回 10日間
<劇症CDI>
・VCM 500mg 1日4回 10日間+MNZ 500mg 8時間おきに静注
<再発例>
<初回再発>
・初発時にVCMが使用された際にはFDXに変更し標準レジメン(FDX 200mg 1日2回 10日間)あるいはそれを延長させたレジメンで投与する。
・初発時にMNZが使用された際にはVCMまたはFDXによる標準レジメンで投与する。
・初発時にFDXが使用された場合には再発時の治療としてFDX 200mg 1日2回 5日間を投与しその後、6~25日目までは1日おきに200mgを投与する
or
・VCM 125mg 1日4回 10日間投与し, その後1日2回, 1日おきに1日1回と漸減し, その後は8週間目まで隔日投与する。
<2回目以降の再発>
・糞便移植治療(FMT)
<予防/感染対策>
・CDIを減少させるためには抗菌薬適正使用が重要である。なお、PPIの使用制限、プロバイオティクスの実施、無症候性保菌者の隔離といった対策が有効性を示す十分なエビデンスはない。
・CDIを発症した患者については、トイレは個室利用とし、手洗いや定期的なシャワー利用をしてもらうことが重要である。隔離は下痢が寛解した後も48時間程度、または隊員までは継続するべきである。
・医療従事者は適切に手指衛生を行う必要性が高く、特に石鹸と水で手を洗いしっかりと洗い流すことが重要である。石鹸には殺芽胞作用があり、アルコール消毒液よりも優れる。
<糞便移植>
・糞便移植治療(FMT)によるEHECに感染をきたしたという報告例がある。
・また腸内細菌叢の変化により関節リウマチなどの自己免疫疾患が長期的には発症する懸念が存在する。
・今後の本邦での知見集積が待たれる。
――――――――――――――――――――――――――――――
<参考文献>
・Yakout A, Bi Y, Harris DM. Clostridioides Difficile: A Concise Review of Best Practices and Updates. J Prim Care Community Health. 2024 Jan-Dec;15:21501319241249645. doi: 10.1177/21501319241249645. PMID: 38726585; PMCID: PMC11085020.