痛風 gout

痛風とその疫学

・痛風は尿酸ナトリウム結晶の沈着によって生じる関節炎のことを指す。

病期が進行したケース(約15%)では尿酸ナトリウム結晶で形成される痛風結節、関節の変形などがみられる。

・痛風発作が生じるには高尿酸血症の存在が必要である。尿酸ナトリウムの溶解限界(6.8mg/dL以上)を超える高尿酸血症を有する患者数は痛風発作を経験する患者数の約3~5倍に相当する

・高尿酸血症および痛風発作のリスク因子としては、男性、高齢、食事/生活習慣の影響、肥満、腎機能障害、血中尿酸濃度を高める薬剤(例: 利尿薬)などが挙げられる。

・血中尿酸濃度の遺伝率は60%程度に相当する可能性が指摘されている。

・高尿酸血症は痛風のリスク因子であることは確実であるが、必ずしも痛風に至るとは限らない。メタ解析によると15年間の追跡期間において著明な高尿酸血症(血清尿酸値>10mg/dL)を有する無症候性の患者の多くが痛風を経験していないことが示されている。

アセスメント

・通常、急性経過で疼痛が出現する。典型的には第一中足趾節関節あるいは足関節における単関節炎として発症する。

・高尿酸血症に長期的に曝露され、特に無治療であったケースでは痛風結節や関節変形などが生じる。痛風結節は肘関節伸側などの機械的摩擦部位に生じやすい。

・欧州リウマチ学会(EULAR)では関節液あるいは痛風結節からの穿刺排液からの尿酸ナトリウム結晶の同定を中心としたアプローチが推奨されている。偏光顕微鏡で結晶の存在が証明され、矛盾しない症状や身体所見があれば確定診断となる。関節液などの採取は化膿性関節炎や偽痛風の除外において重要である。

進行期の痛風ではX線撮影では骨が尿酸結晶に置換され、関節面から離れた場所で打ち抜き像(overhanging edge)がみられることがある。特に非進行例では画像所見がみられる可能性が低い。

発作時の血中尿酸濃度は平時の値よりもさらに低くなることがある点に留意する。

・痛風患者では高血圧症、肥満症、慢性腎臓病、糖尿病、心血管疾患が併存する頻度が高い。したがって、これらの疾患を有していればそちらのマネジメントに注力することも重要である。

薬物治療

 <発作時>

・発作時には迅速な疼痛緩和とそれに伴う機能回復を目的に治療される。

・推奨される第一選択薬併存疾患の状態なども加味して決定されるが、通常、NSAIDs、コルヒチン、ステロイド(内服, 静注, 関節内投与)が挙げられる。

・治療をなるべく速やかに行うために症状が出現したときにすぐ内服ができるようにしておくことが推奨されている(“pill-in-a-pocket” approachと称される)。

・炎症性サイトカインであるIL-1の活性化および遊離において重要な役割を果たすのがNLRP3であるが、コルヒチンはNLRP3のオリゴマー化を阻害する作用を有するため使用される。

発作時にステロイドを使用する際にはPSL 0.5mg/kg/day(経口or静注)を初回投与し、7~10日間かけて漸減する方法が指摘されている。NSAIDsの使用例としてはジクロフェナク50mg 1日2回 内服 7~10日間などがある。コルヒチンの使用例としては1日目に1.0mgを経口投与し、その後、2日目からは0.5mgを1日1~2回 7~10日間投与する方法などがある。

予防投与として、いわゆるコルヒチンカバーが知られる。短期間に発作を頻回に繰り返す場合に実施される。投与例としてはコルヒチン0.5mg 1日1~2回 投与を行う方法がある。

 <慢性管理>

・1960年代から使用されているキサンチンオキシダーゼ阻害薬であるアロプリノールは現在でも尿酸降下療法の第一選択薬である。

・その他の治療薬としてはフェブキソスタット、プロベネシド、ベンズブロマロンなどが存在する。

・RCTとして実施されたSTOP Gout trialではアロプリノール(最大800mg/日)が発作予防と尿酸値低下において、フェブキソスタット(最大80~120mg/日)と比較して非劣性であることが示された。また、尿酸排泄促進薬のなかではベンズブロマロンがプロベネシドよりも優れている可能性が示唆された。

・アロプリノールで治療が奏功しなかったケースやアロプリノールに忍容性が乏しいケースではベンズブロマロン200mg/日を投与した患者の92%で治療開始2ヶ月時点で血清尿酸値が5.0mg/dL未満に達したという報告がある。一方で、プロベネシド2,000mg/日を投与した患者では65%で同様の結果となった。もちろん本邦で使用される用量と大きく異なるため、あくまで参考程度に留める必要がある。

・尿酸降下薬を使用する場合には低用量から開始し漸増することが基本であり、血清尿酸値6.0mg/dL未満を目標値とする。ただし、米国内科学会(ACP)はこのアプローチの方法がエビデンス不十分であることを理由にTreat-to-avoid-symptoms strategyを提唱している。米国内科学会がこの指針を提唱して以来、Treat-to-target approachを支持するエビデンスが示され始めていて、血清尿酸値の目標値を定めて治療する治療指針よりも再燃頻度と痛風結節の出現頻度を減少させたという報告がある。また、治療開始2年後にはTreat-to-target approachで治療がなされた患者のうち、年間2回以上の発作を起こした患者が8%であったのに対し、通常の治療を受けた患者群では24%であった。

尿酸降下療法の適応としては、発作頻度が年間2回以上であること、痛風結節の存在、X線撮影で変性が認められることがそれぞれ挙げられている。これらの適応は既に痛風を経験している患者を対象にしているが、そうでない場合では著明な高尿酸血症が存在するケース、腎結石が存在するケース、CKDが存在するケースではさらに早期から介入する有用性があるかもしれない。

・血清尿酸値の急激な低下により痛風発作が生じやすくなる可能性があるため、急性期は抗炎症治療のみを行い、段階的に尿酸降下療法を開始する方法もある。

痛風治療と併存疾患

併存疾患の状態は痛風治療の方針に影響を及ぼし得る。

・痛風患者の約75%高血圧症が併存するが、NSAIDsやステロイドの使用によって高血圧症が悪化する可能性がある

コルヒチンの長期使用は非痛風患者においては心血管保護作用を有する可能性が示唆されている。ただし、痛風患者においても同様の保護作用を有するかどうかは明らかでない。

・STOP Gout trialではCKD患者においてアロプリノールとフェブキソスタットの有効性および安全性は同程度であった。また、痛風患者で、かつ中等度~重度の慢性腎臓病を有する患者においてアロプリノールの用量増加を行うことは腎機能悪化、生存期間短縮に関連しないことが示されている。ただし、慢性腎臓病患者ではアロプリノールに対する過敏症のリスクが上昇することが示唆されている。

・前述のように医原性の要素も考慮する必要がある。例えば利尿薬は血清尿酸値を上昇させることがある。ACE阻害薬、ARB(ロサルタンを除く)、β遮断薬は痛風発作のリスクを上昇させ得る。一方で、ロサルタン(ARB)、CCB、フェノフィブラート、SGLT2阻害薬は尿中への尿酸排泄を促し、血清尿酸値を低下させることが知られている。

・メトホルミンは尿酸ナトリウム結晶によって惹起される炎症を抑制し、発作の程度を軽減する可能性が示唆されている。

食事療法

・特に尿酸値や発作リスクに悪影響を及ぼす食事内容/ライフスタイルとしてはアルコールの使用(特にビール)、脱水、フルクトース、プリン体を多く含む食料品(例: 肉類)の摂取が挙げられる。

・これらの食事要因や肥満は痛風発症リスクと関連していることが示されている。しかし、食事やライフスタイルの修正による有効性を示すデータが豊富とはいえない。

治療のアドヒアランス

・痛風はその後一生涯にわたって関与しやすい疾患であるが、治療開始後1年以内に半数以上の患者が尿酸降下療法を中止してしまうことが示されている。

・医療者は患者の綿密なフォローアップや治療意義の共有などによってなるべく治療から離脱しないように協働する必要がある。

―――――――――――――――――――――――――――――――

<参考文献>

・Mikuls TR. Gout. N Engl J Med. 2022 Nov 17;387(20):1877-1887. doi: 10.1056/NEJMcp2203385. PMID: 36383714.

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です