慢性活動性EBウイルス感染症 CAEBV: chronic active Epstein-Barr virus infection
慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)とその疫学/臨床像
・慢性活動性EBウイルス感染症(以下CAEBV: chronic active Epstein-Barr virus infection)は血中でのEBVゲノム量の増加と発熱を中心とした症候群を指す。
・本邦からの報告によると、CAEBVの発症年齢は1~27歳(平均 8.3歳)で、発症時には約半数で伝染性単核球症に類似した症状を呈していた。
・典型的には発熱、肝障害、血小板減少、リンパ節腫大といった症状/所見がみられ、長い経過のなかでそういったエピソードを反復するような病像を呈する。
・CAEBVを発症したい日本人小児に関する研究では神経学的所見として両側の大脳基底核に石灰化が認められたと報告されている。なお、この所見は小児のAIDSでもしばしばみられる。大脳基底核の石灰化はEBVが関与している可能性が示唆されている。
・患者の約50%で染色体異常がみられ、79%でEBVのモノクローナルな増加がみられたと報告されている。末梢血ではEBVが感染した細胞が存在し、通常はT細胞かNK細胞かに感染している。なお、T細胞型CAEBV患者の生存期間はNK細胞型CAEBVのそれよりも短い傾向にある。
・CAEBVでは血球貪食症候群(HPS)、間質性肺炎、リンパ腫、肝動脈瘤、ぶどう膜炎などの合併症を生じ、死亡率も低くない。
・主要な臓器障害がみられず、蚊に刺された際の過敏症(蚊刺過敏症(HMB: hypersensitivity to mosquito bites))などの皮膚症状のみがみられることもある。
臨床検査/治療
・疑う場合には血液検査(フェリチン, EA-IgG, VCA-IgG, IgE, 血中EBウイルス量定量などを含む)、骨髄穿刺が検討される。
・詳細は割愛するが、治療としてはステロイドを含む免疫化学療法、多剤併用化学療法、造血幹細胞移植が検討されることがある。
CAEBV診断基準(厚生労働省研究班 2015年)
以下の4項目を満たすこと.
- 伝染性単核球症様症状が3ヶ月以上持続(連続的or断続的)
- 末梢血または病変組織におけるEBウイルスゲノム量の増加
- T細胞あるいNK細胞にEBウイルス感染を認める
- 既知の疾患とは異なること
<補足事項(一部抜粋)>
・初感染に伴うEBウイルス関連血球性リンパ組織球症、種痘様水疱症で皮膚症状のみのものはCAEBVには含めない.
・PCR法を用い、末梢血単核球分画における定量を行った場合、一般に102.5(=316)コピー/μgNDA以上がひとつの目安となる。定性の場合、健常人でも陽性となる場合があるので用いない。組織診断にはin situ hybridization法等によるEBER検出を用いる.
・EBウイルス感染標的細胞の同定は蛍光抗体法、免疫組織染色またはマゲネットビーズ法などによる各種マーカー陽性細胞解析とEBNA、EBERあるいはEBウイルスDNA検出などを組合せて行う.
・EBウイルス関連抗体価: 蛍光抗体法による測定では一般にVCA-IgG抗体価640倍以上、EA-IgG抗体価160倍以上が、抗体価高値の目安となる. 加えて、VCA-IgA、VCA-IgMおよびEA-IgAA抗体がしばしば陽性となる. 患者では抗体価が高値であることが多いが、必要条件ではなく、抗体価高値を認めない症例も存在する.
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<参考文献>
・Kimura H, Hoshino Y, Kanegane H, Tsuge I, Okamura T, Kawa K, Morishima T. Clinical and virologic characteristics of chronic active Epstein-Barr virus infection. Blood. 2001 Jul 15;98(2):280-6. doi: 10.1182/blood.v98.2.280. PMID: 11435294.
・Morita M, Tsuge I, Matsuoka H, Ito Y, Itosu T, Yamamoto M, Morishima T. Calcification in the basal ganglia with chronic active Epstein-Barr virus infection. Neurology. 1998 May;50(5):1485-8. doi: 10.1212/wnl.50.5.1485. PMID: 9596016.