クラミジア肺炎 C.pneumoniae
クラミジア肺炎とその疫学
・クラミドフィラ(C.pneumoniae)は市中肺炎の約10%、気管支炎の約5%の原因を占めると推定されている。
・潜伏期間は約21日間とされる。
・咳嗽や倦怠感などの症状は徐々に出現し、適切な抗菌薬治療を行っても数週間から数ヶ月間ほど症状が続くこともある。
・C.trachomatisと異なり、C.pneumoniaeは性行為によって感染伝播せず、主に飛沫感染により感染伝播する。
・C.pneumoniaeは市中肺炎、咽頭炎、気管支炎、副鼻腔炎、慢性気管支炎の悪化などの一般的な原因として知られる。
・若年成人では約50%、高齢者では約75%で過去の感染を示唆する血清学的所見がみられる。
・発症に季節性はみられない。ただし、疫学調査ではクラミジア肺炎は4年周期で流行する傾向があることが知られている。
・C.pneumoniaeは無症候性の保菌状態であることは稀とされている。
・C.pneumoniaeに関連する疾患が複数指摘されていて、例えば喘息、慢性気管支炎の急性増悪、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、多発性硬化症が挙げられる。
臨床症状/臨床経過
・C.pneumoniaeは下気道および上気道における感染症の主な原因菌ある。
・肺炎と気管支炎をきたすことが一般的であるが、ときに副鼻腔炎、咽頭炎、喉頭炎などの上気道感染症が単独で発症することもある。
・重症度は軽症例から重症例まで様々であるが、C.pneumoniae感染症の患者のほとんどは無症状で、呼吸疾患の経過は比較的マイルドである。なお、特に呼吸機能が低下している患者では重症の市中肺炎として発症することもある。
・肺炎マイコプラズマをはじめとした他に非定型肺炎の起因菌と同様に、上気道症状などから症状が出現することもある。
・マイコプラズマ肺炎とクラミジア肺炎とを鑑別するうえでの指標として重要なのは咽頭炎の有無である。全例ではないが、ほとんどのクラミジア肺炎の患者で咽頭炎を伴う。
・クラミジア肺炎では肺炎球菌性肺炎よりも頭痛を自覚する頻度が高いことが知られている。
・単発で、亜区域性の浸潤影は非定型肺炎の典型的画像所見であり、これはC.trachomatisでも同様である。また、両側性の浸潤影を呈したり、胸水貯留を伴ったりすることもある。
血液検査/細菌学的検査
・他の非定型肺炎の病原体と同様に、WBCは通常上昇しない。
・前述のとおり、C.pneumoniaeは無症候性の保菌状態であることは稀である。
・十分に標準化された信頼性の高い検査に乏しいため、診断は臨床的に行うことが多い。
・補助的に血清抗C.pneumoniae抗体を利用でき、原則として診断に利用する場合にはペア血清での利用となる。
・過去のC.pneumoniaeに対する感染を経験していれば、その後、クラミジア肺炎を発症することがないとは限らない。むしろ再感染は一般的で、高齢者では初感染発症例よりも多い。なお、再感染の場合は特異的IgM抗体が上昇しないこともあり、IgM抗体の上昇がないことだけをもってクラミジア肺炎を否定することはできない。
・特異的IgG抗体は感染成立2~3週間で上昇し始めることが多く、再感染例では1~2週間で上昇する。したがって、3週間間隔で測定されたIgG抗体が4倍以上の変化を示すことが最も信頼できる診断方法といえる。
・培養検査は感度が不十分であるが、提出する際には鼻咽頭スワブを利用する。
治療
・DOXY、EMがC.pneumoniaeに対し、in vitroで活性を示すことが知られ、第一に使用されやすい。
・クラミジア肺炎は通常の治療を行っても再発する頻度が低くなく、より長期の治療も推奨される。DOXYを14日間投与する方法も提唱されている。
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<参考文献>
・Burillo A, Bouza E. Chlamydophila pneumoniae. Infect Dis Clin North Am. 2010 Mar;24(1):61-71. doi: 10.1016/j.idc.2009.10.002. PMID: 20171546.
・レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版