異所性妊娠 ectopic pregnancy
異所性妊娠とその疫学
・異所性妊娠(ectopic pregnancy)とは受精卵が子宮腔の内膜以外の部位に着床した状態を指す。
・異所性妊娠は全妊娠の約1.5~2.0%で発生する。また、ときに致命的な疾患で、異所性妊娠は全妊産婦死亡の約6%を占める。
・一般人口では4,000人に1人の割合で発症し、体外受精を経験した女性の100人に1人の割合で発症する。
・強いリスク因子としては骨盤内炎症性疾患(PID)の既往、卵管手術歴、異所性妊娠の経験などが挙げられる。比較的小さなリスク因子としては喫煙歴、35歳以上、過去の性交渉歴の数が多いことなどが挙げられる。なお、異所性妊娠と診断された患者の約半数はリスク因子を有していないことも知られている。
・経口避妊薬の使用歴、流産歴、帝王切開歴と異所性妊娠の発症に関して関連性は認められていない。
・1度の異所性妊娠を経験した患者での再発率は約10%である。2回以上の異所性妊娠を経験した患者での再発率は少なくとも25%と報告されている。
・患側の卵管が切除された患者では残存卵管での異所性妊娠のリスクが高まる。なお、異所性妊娠を経験した患者の約60%が、その後、正常妊娠を経験することができると報告されている。
・異所性妊娠が生じる部位としては卵管が頻度として最多である。そのほか、子宮頸管、腹腔、卵巣などが挙げられる。
臨床症状/臨床経過
・発症初期には不正性器出血がみられることがある。患者が不正性器出血を月経と誤認していることもあるため、平時の月経と比べて出血量や持続日数に差異がないかなどを聴取することもときに有用である。出血は濃い赤色のこともあれば、淡い色であることもあり、色調は一般的に区別に有用でない。
・腹痛は典型的には疝痛に相当する。また骨盤痛もみられる。疼痛は片側性のこともあれば、両側性のこともあり、疼痛の程度も様々であることに留意する。
・異所性妊娠では卵管などの脆弱性が高い部分で妊娠が成立した場合に卵管破裂が生じることがある。異所性妊娠の破裂(ruptured ectopic pregnancy)に至ったケースでは低血圧、頻脈などのショック徴候や腹膜刺激徴候が認められ、緊急治療が必要となる。
臨床検査
・前述の症状を伴うような妊娠可能年齢の女性においては異所性妊娠の可能性を疑い、患者の同意を得たうえで、尿検体を用いた妊娠反応検査を実施することとなる。
・まずは経腹超音波検査を実施して、子宮内の胎嚢の有無を確認するとともに、FASTを実施しEcho free spaceの有無を確認する。Douglas窩にEcho free spaceが認められる場合には異所性妊娠の破裂や卵巣出血の可能性を疑うこととなる。
・経膣超音波検査(TV-US)と尿hCG検査(定性)の併用により未破裂の異所性妊娠を診断することが可能である。
・尿hCG検査で陽性が確認された時点では子宮内妊娠(正常妊娠)、流産、異所性妊娠の可能性が残り、この3つの状態ではそれぞれマネジメントが異なるため、TV-USで区別を行うことが重要である。
・尿hCG検査は妊娠4~5週時点から陽性となる。また、定性検査は通常、hCG値25~50IU/L以上で陽性となることが知られている。なお、最終月経開始日を0週0 日として算出する。
<超音波検査>
・妊娠5~6週時点からTV-USで子宮内妊娠(正常妊娠)をほぼ100%の精度で診断可能とされている。
・異所性妊娠に関するTV-USの感度は73~93%である。感度は通常、妊娠期間と検者の技量とに依存する。なお、異所性妊娠が疑われる女性の8~31%で初期の超音波検査で子宮にも卵管にも妊娠が指摘できないと報告されている(“pregnancy of unknown location”と呼ばれる)。実際、初期の異所性妊娠では出血徴候もなく、超音波検査で検出できないほど小さい場合がある。受診から2~7日以内に超音波検査を再検することで、妊娠部位を特定できる場合もある。
<超音波検査とhCG値との相関性>
・血清hCG検査(定量検査)のみでは子宮内妊娠と異所性妊娠とを区別することはできないが、妊娠週数のマーカーとしてはときに有用である。
・破裂していない状況であれば、血清hCG値は異所性妊娠の治療方針の決定に関係するため、測定することを検討する。
・子宮内妊娠(正常妊娠)の約99%は2日以内に血清hCG値が少なくとも53%増加することが知られている。流産に至っている場合には血清hCG値は連続的に減少する。異所性妊娠の場合は約半数で血清hCG値は上昇し、残りの半数は減少する。
マネジメント
・異所性妊娠の治療には外科的治療と内科的治療とがある。
・外科的治療には卵管切除術のほか、卵管を温存したまま異所性妊娠を切除する卵管切開術がある。
・腹腔鏡手術が実施されることも一般的であるが、腹腔内出血量が多い場合などでは開腹手術が選択される。
・内科的治療としてはメトトレキサート(MTX)による治療が検討されるが、詳細は割愛する。
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<参考文献>
・Barnhart KT. Clinical practice. Ectopic pregnancy. N Engl J Med. 2009 Jul 23;361(4):379-87. doi: 10.1056/NEJMcp0810384. PMID: 19625718.