急性腎障害 AKI: acute kidney injury

急性腎障害の定義

・急性腎障害(AKI: acute kidney injury)は

 ①ΔCr≧0.3mg/dL(48時間以内)

 ②Cr≧1.5倍×基礎値(7日以内の測定値あるいは推定値)

 ③尿量<0.5mL/kg/hrが6時間以上持続

により定義される。

・AKIは入院患者の1.9%で発生しているという報告があり、特に重症患者で多くみられる。敗血症が存在する場合にはAKIの発生率は40%を超える。

アセスメント

乏尿は有用な所見であるが、感度と特異度は十分でないことに留意する。

血清Cr上昇、血清BUN高値はいずれもAKIでみられる所見である。ただし、これらは筋肉量、ステロイド使用歴、消化管出血の有無、年齢、性別、輸液などによる修飾を受けることに注意して解釈する必要がある。またGFR低下を来してから血清Crが上昇するまでの間には数日間のタイムラグがみられるため注意を要する。その点では尿量の測定は重要である。

腎後性(例: 前立腺肥大症)のAKIを除外することは重要であるため、腹部エコー等の画像検査で腎後性AKIの可能性が高くないことを確認しておく。尿閉があれば導尿や膀胱留置カテーテル挿入を検討する。

・腎後性AKIが除外される場合、頻度が高い原因は腎前性AKIである。敗血症、出血、下痢などによる細胞外脱水などを示唆するエピソードがあれば腎前性AKIの可能性が高まる。

・血液検査で血清Cr高値が認められる場合、それがAKIなのか、CKDなのか、AKI on CKDなのかを区別することは重要である。以前の血液検査結果があればそちらと比較することが有用である。もしも過去の検査結果がなくても、関連するリスク因子の有無(例: 高血圧症, 糖尿病)、病歴、貧血の有無、CKD-MBDの所見(例: 高リン血症)などから総合的にCKDらしいと判定できる場合もある。また腎臓の超音波検査もときに有用で、萎縮した腎、腎皮質の菲薄化、腎輝度上昇が確認できればCKDらしいと考えられる(萎縮腎は通常10~11cm大)。ただし、CKDであっても糖尿病性腎症、多嚢胞性嚢胞腎、アミロイド腎、HIV腎症では腎腫大を伴うことがある点に留意する。

腎性AKIの原因としては薬剤性、悪性高血圧症、腎盂腎炎、アミロイドーシス、血管炎、糸球体腎炎、間質性腎炎などが挙げられる。この場合、病歴や尿検査所見などから総合的に検討することとなる。尿検査で上皮円柱顆粒円柱がみられれば尿細管障害が、白血球円柱がみられれば間質性病変が、赤血球円柱変形赤血球がみられれば糸球体病変がそれぞれ示唆される。また、感度が低いため除外には利用できないが、尿中好酸球増多が認められれば間質性腎炎が示唆される。

・腎前性AKIと腎性AKIの鑑別に尿検査が参考となることがある。腎前性AKIでは腎動脈血流量が減少するため、RAA系が亢進し、FENaが低下しやすい(FENa<1%)。ただし、FENaやFEUNを利用した鑑別は組織病理学的所見との相関関係が明らかとなっているわけではなく、参考程度に留めるべきという見方もある。

AKIの原因となる薬剤

・造影剤

・アミノグリコシド系抗菌薬

・アムホテリシン

・NSAIDs

・βラクタム系抗菌薬(特に間質性腎炎の原因になりやすい)

・スルホンアミド(例: ST合剤, サラゾスルファピリジン)

・アシクロビル

・メトトレキサート

・シスプラチン

・タクロリムス

・ACE阻害薬/ARB

マネジメント

・AKIのマネジメントとしてはAKIを生じさせた原因の除去/治療を行いつつ、回復までの間にホメオスタシスを維持することにある。

・栄養療法としては1日あたりに必要なビタミン類、微量元素を投与すべきである。また静脈栄養よりも経腸栄養が望ましい。

高カリウム血症(>6.0mmol/L)を伴うケースではグルコン酸カルシウム(カルチコール®)投与により心筋保護を図りつつ(例: カルチコール 10mL 2-5分ほどかけて静注)、GI療法(例: ノボリン®5単位+50%ブドウ糖液2A(40mL) 1-2分かけて静注)やSABA吸入などを行い、カリウムの細胞内シフトを図る。その後、Kの体外排泄を促すために輸液、利尿薬、K吸着薬(カリメート®, ケイキサレート®)の投与を検討することとなる。アシドーシスが認められる場合には重炭酸Naの投与も検討される。

・利尿薬についてはフロセミド(ラシックス®)20~40mgを静注して反応をみて、反応性がなければ2倍量~100mg程度を静注するケースもある。なお、初期用量をCr×20(mg)とする提唱もある。

・ストレス潰瘍の予防を目的としたPPI投与が推奨される。

・一部の重症のAKIでは腎代替療法(RRT)が必要となる。腎代替療法の導入の一定の基準はないが、指標は示されている。なお、ECUM(extracorporeal ultrafiltration method)は濾過の原理(=除水)で行う方法であり、HD(血液透析/hemodialysis)は拡散の原理でKやCreなどの小分子を除去する方法であり、HDF(血液濾過透析/hemodiafiltration)はHDとHF(血液濾過/hemofiltration)とを組合せて、濾過と拡散の原理を持ち合わせた方法である。

緊急透析の指標(AIUEO)

 <A:Acidocis>

・血清pH≦7.15, HCO3-≦15

 <I:Intoxication>

・薬物中毒

 <U:Uremia>

・血清BUN≧100mg/dL

・脳症(意識障害, けいれんなど)

・心膜炎など

 <E:Electrolyte>

・高カリウム血症:K≧6mEq/L(+心電図変化)

・高マグネシウム血症:Mg≧8mE/L(特に深部腱反射消失例)

 <O:Overload(溢水)>

・利尿薬抵抗性の体液過剰(胸水貯留/心不全/肺水腫/全身性浮腫)

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<参考文献>

・Bellomo R, Kellum JA, Ronco C. Acute kidney injury. Lancet. 2012 Aug 25;380(9843):756-66. doi: 10.1016/S0140-6736(11)61454-2. Epub 2012 May 21. PMID: 22617274.

・Levey AS, James MT. Acute Kidney Injury. Ann Intern Med. 2017 Nov 7;167(9):ITC66-ITC80. doi: 10.7326/AITC201711070. Erratum in: Ann Intern Med. 2018 Jan 2;168(1):84. doi: 10.7326/L17-0682. PMID: 29114754.

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