成人の腸重積症 intussusception

腸重積症とその疫学

・1674年にアムステルダムのBarbetteが初めて腸重積症(intussusception)を報告した。

・腸重積症は成人では稀な腸閉塞の一病型で、近位の消化管が遠位の消化管の内腔に嵌入する状態を指している。

・成人の腸重積症は腸重積全体の約5%を占め、成人の腸閉塞全体の1~5%程度を占める。

・成人の腸重積症の原因の約90%悪性腫瘍、ポリープ、メッケル憩室、結腸憩室、狭窄、良性腫瘍などである。特に悪性腫瘍によるものである割合は比較的高いのが特徴。したがって、成人の腸重積症の70~90%は外科的切除を治療として選択されることが多い。

病態生理/病型

・正確な病態生理や機序は不明であるが、原発性あるいは特発性の腸重積症は全体の8~20%を占め、小腸型であることが多い。

・腸重積症の重症例では嵌入を起こした部位での腸間膜血流の障害が生じ、結果として絞扼性腸閉塞や腸管穿孔などに至ることもある。

・腸重積症は発生部位によって4つの病型に区別することができ、①小腸-小腸型 ②大腸-大腸型 ③回腸-大腸型(上行結腸内腔に終末回腸が嵌入) ④回腸-バウヒン弁型 に区別される。

・腸重積は原因によっても区別される。小腸で生じるタイプでは腸管内または腸管外病変(炎症性疾患, メッケル憩室, 術後癒着, リンパ腫, 脂肪腫, 腺腫性ポリープ, 転移性腫瘍など)の存在などが原因となる。また医原性もあり得て、空腸空腸吻合術を受けた患者でも腸重積症を生じることがある。悪性腫瘍は小腸で発生する腸重積症の約30%を占める。なお、大腸で発生するタイプでは特に悪性腫瘍が背景疾患として存在する可能性が高く、症例の66%を占めるという報告もある。

・成人の腸重積症はLead point(先進部)の有無によっても区別できる。Lead pointのない一過性の非閉塞性腸重積症はセリアック病あるいはCrohn病で報告されているが、特発性が多く、特別な治療を行わなくても自然軽快することが多い。一方で、器質的病変がLead pointとなるような腸重積症は通常、持続性あるいは再発性の腸閉塞として出現するため、外科的治療が必要となる。

臨床症状

・臨床症状は多様である。

・初期の症状は非特異的で、成人の大半は慢性経過で、部分的閉塞に基づく症状がみられると考えられている。小児でみられるような典型的な症状(疝痛様腹痛、血便、触知可能な腹部腫瘤)が成人でみられることは稀である。

悪心/嘔吐、消化管出血、排便習慣の変化、便秘あるいは腹部膨満は腸重積症の非特異的な症状である。

診断

・ほとんどの症例で閉塞症状を理由に精査対象とする状況になっているため、画像検査が行われる。

・消化管造影検査ではCoil-spring様の見た目が確認される。

超音波検査は有用なツールであり、古典的には横断像に関してTarget signが、縦断像に関してpseudo-kidney signがみられる。

・CT撮像も実施されるが、診断精度は報告により58~100%と幅広い。

・亜急性または慢性経過の症状を呈する腸重積症の評価には下部消化管内視鏡検査も有用と考えられている。腸重積の直接的な確認、病変部位の特定、Lead pointとなる器質的病変の確認などが主な利点である。

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<参考文献>

・Marinis A, Yiallourou A, Samanides L, Dafnios N, Anastasopoulos G, Vassiliou I, Theodosopoulos T. Intussusception of the bowel in adults: a review. World J Gastroenterol. 2009 Jan 28;15(4):407-11. doi: 10.3748/wjg.15.407. PMID: 19152443; PMCID: PMC2653360.

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