外来でゆったりとした対話を行うためのコミュニケーション技法

Unhurried Conversations in Health Care Are More Important Than Ever: Identifying Key Communication Practices for Careful and Kind Care(PMID: 11588368)より

内容

・注意深く、かつ思いやりのあるケアを行うためにはゆったりとした会話(unhurried conversations)が必要。

・システマティックレビューにより、ゆったりとした会話を達成するための10個のコミュニケーション技法が特定された。

<①Shared Turn Taking>

・患者と医師とは両者が平等に話す機会を持てるようにすべきである。

・Shared turn takingはOpen-ended qustionの利用によりさらに促される。

・一部の患者は自己主張をしたり、質問をしすぎたりすることで医師から「扱いにくい患者」とみなされることを恐れていて、発言を遠慮してしまうことがある。

・ある研究では交代で発言する機会を増やすことで、双方がなるべく多くのことを語れるようになることが示されている。

<②Discussion of Off-Task topics>

・医療とは無関係の世間話をすること(small talkと呼ばれる)は、ゆったりとした会話の形成に役立つ。また信頼関係を築き、会話の深みを強めることにも有用。

・本筋とは無関係の話題(例: 天候)について話すことは自然な会話のリズムを作るのに役立つ。

・医療と関係ない話題について話すことで、患者は急かれるような感覚が軽減し、満足度も高まることが知られている。また、例えば週末の予定などについて尋ねられることで、患者としてでなく、いち個人として扱われていることを実感することができる。

<③Use of Pauses>

・ゆったりとした会話のなかには沈黙やポーズの時間も含まれる。

・沈黙によって患者はゆっくりと考え直すきっかけを得ることもある。また、診察中にゆったりと余裕のある気分に浸ることができる場合もある。

<④Moderation of Pace>

・会話のペースを調整することは重要。具体的には単位時間あたりの発話数がペースに相当する。

・古いコミュニケーションについての研究では会話速度、テンポは信頼性、誠実さ、好感度と関連することが示されている。

・適切なペースの対話では相互理解が促進されやすい側面も有する。

・医師が一方的なペースで話すことで、患者は疑問点を尋ねづらくなる場合などがある。

<⑤Avoidance of Conversational Interruptions>

・医師は患者の話を途中で遮らないようにするべきである。

・ある研究では医師が患者の話を約77%の確率で遮ると報告されていて、平均11秒以内に遮ることも知られている。

・なお、高度な臨床医は会話のリズムを妨害しないようにしつつ、より多くの有用な情報を引き出すために上手に会話に割り込むことができる。

<⑥Minimization of External Interruptions>

・診察中に突然流れを遮るような出来事(例: 突然スタッフが入室する)は回避するべきである。

・ある外来診療に関する研究では182件の予約外来のうち、24%で外的要因による中断が生じ、その原因には医師が部屋を出る(52%)、他の人が部屋に入る(26%)、電話(22%)、などが含まれていた。こういった事象により、患者の満足度は低下しないものの、ストレスレベルは高まり、医師の満足度も低下することが知られている。

<⑦Triage of Topics>

・トピックの優先順位をつけることは重要である。

・緊急性の低いトピックへの対応を後にし、即時の対応が必要なトピックについてより多くの時間を割くという方法は有用である。

・なお、より多くのトピックに対処するために各トピックに費やす時間を短くすることで、ケアの質が低下する可能性が示されている。

<⑧Use of Opne-Ended Qustions>

・患者が自由に話したり、詳しく述べたりする時間はゆったりとした対話において不可欠である。そのためにはOpen-ended questionが有用である。

・Open-ended questionの利用により診察時間が長くなってしまうことが懸念されてしまうかもしれないが、ある研究ではOpen-ended questionに対しても患者の回答の多くは30秒以内であることが多いということも示されている。

・また電子カルテに向かって記録を残している最中にも、心理社会的なトピックや医療と関連しないトピック(例: 趣味や天気)に関するOpen-ended questionを行うことができ、それによって患者との信頼関係はさらに強固になることもある。


<⑨Expression of Emotion>

・医師と患者が感情を共有することで、信頼関係が構築され、コミュニケーションの質が向上することが既に示されている。

・また共感の技法を利用することで、患者の心理的苦痛を軽減することもできる。

・温かい気持ちをもった態度や褒め言葉、世間話などにより患者は自分の気分や健康に関する情報をより共有しようという意欲が強まる場合がある。

<⑩Use of Body Language>

・非言語コミュニケーション(nonverbal communication)の利用は患者を理解しようとする思いの表現に役立つことがある。

・ときに医師が身を乗り出して聞いたり、頷いたり、微笑んだりするような態度が重要である。

・オープンなBody languageは患者満足度、患者参加、信頼関係構築に有用である。

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<参考文献>

・Ballard DI, Mandhana DM, Tesfai Y, Jacome CS, Johnson SB, Gionfriddo MR, Suarez NRE, Perneth SA, Su L, Montori VM. Unhurried Conversations in Health Care Are More Important Than Ever: Identifying Key Communication Practices for Careful and Kind Care. Ann Fam Med. 2024 Nov-Dec;22(6):533-538. doi: 10.1370/afm.3177. PMID: 39586701; PMCID: PMC11588368.

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