むずむず脚症候群 RLS: restless legs syndrome

むずむず脚症候群とその疫学

・むずむず脚症候群(以下RLS: restless legs syndrome)は特に安静時に脚を動かさずにはいられない強い衝動をきたすことを特徴とする症候群である。

あらゆる年齢で発症するが、特に65歳以上の成人に好発するという報告がある。

原発性RLSと二次性RLSとがある。

鉄欠乏、妊娠、慢性腎不全、糖尿病、関節リウマチ、甲状腺機能異常、葉酸欠乏、ビタミンB12欠乏、梢神経障害などによって二次性にRLSが生じることがある。

・原発性RLSは生涯にわたり治療を必要とする可能性が高い。一方で、二次性RLSは原疾患が解消されれば症状が緩和する可能性がある。

睡眠に影響を及ぼすため、日常生活に深刻な影響をきたすことがある。RLS患者の約75%は睡眠関連の問題を抱えていることが報告されている。

・本邦での有病率は1~4%という報告もあるが、診断されていない可能性がある。

Parkinson病患者においてRLSの合併率が高いことが知られている。

臨床症状

・典型的には安静時に脚を動かさずにはいられない強い衝動が生じる。特に夕方から夜間にかけて症状が悪化し、歩行などの動作により改善する。

・不快な感覚はしばしば下肢の表面というよりは内部に感じられることが多い。ただし、その表現は容易でなく、患者によっては「ムズムズする」「つっぱる」「痛い」などと様々な表現がなされる。

・下肢の異常感覚によってしばしば睡眠障害を併発する。特に症状が夕方から夜間にかけて悪化する影響で、入眠困難や中途覚醒が生じやすい。慢性的な睡眠不足はうつ病、不安障害などにつながる可能性がある。

RLSの診断基準

 <必須の診断項目>

  1. 不快な下肢の異常感覚に伴う, 脚を動かしたいという欲求(下肢に加えて上肢や体幹にも同様の症状が出現することがある)
  2. 症状が安静時に出現・増悪する
  3. 歩いたり, 下肢を伸ばしたりするなどの運動で症状が改善する
  4. 症状が夕方から夜間にかけて悪化する

 <補助的な診断項目>

  1. 家族歴
  2. ドパミン作動薬への反応性
  3. 周期性四肢運動障害(PLMD: periodic limb movement disorder)(主に睡眠中にみられる上肢および下肢の周期的な不随意運動)の合併

・なお、診断補助ツールとしてRLS-DI(RLS-Diagnostic index)があり、10項目の質問で形成される。

・PLMDは睡眠ポリグラフィーで確認される。

主な鑑別疾患

・アカシジア、血管性跛行/神経性跛行をきたす疾患群、神経障害をきたす疾患群、線維筋痛症、静脈瘤、Painful legs and moving toes syndrome、睡眠関連下肢クランプ(こむら返り)などが鑑別疾患となる。

・アカシジアは抗精神病薬などが原因となり生じるが、落ち着きがなくじっとしていることができないことが特徴。RLSのような異常感覚は伴わず夜間に症状が悪化しないことも特徴。

治療

・RLSではドパミン作動薬(通常プラミペキソール)が第一選択薬となる。効果が乏しい場合にはガバペンチン、プレガバリンが使用されることがある。

・プラミペキソールの主な副作用としては悪心、血圧低下、めまい、頭痛、鼻閉などが知られる。

・前述のように二次性RLSでは鉄欠乏、妊娠、末期腎不全、関節リウマチ、糖尿病、末梢神経障害をきたす疾患などが原因となり得る。全てのRLS患者において鉄動態(血清鉄/フェリチン/TIBC)を確認し、血清フェリチン<50μg/Lの場合には鉄剤の投与を開始することも推奨するタスクフォースもある。

・治療期間について明確なコンセンサスは得られていない。しかし、特に二次性RLSにおいて根本的な治療がなされた場合などではドパミン作動薬による治療を中止することも検討可能とされている。

・治療効果のモニタリングには症状日誌などの記載も推奨される。症状の重症度や治療効果の判定にも有用で、そのほか増悪因子の特定につながることもある。

・適切な用量と期間の治療を行っても治療反応性が乏しい場合や副作用で治療に対する忍容性が低い場合などでは専門医(通常は神経内科医または睡眠専門医)に紹介することを検討する。

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<参考文献>

・Garcia-Borreguero D, Stillman P, Benes H, Buschmann H, Chaudhuri KR, Gonzalez Rodríguez VM, Högl B, Kohnen R, Monti GC, Stiasny-Kolster K, Trenkwalder C, Williams AM, Zucconi M. Algorithms for the diagnosis and treatment of restless legs syndrome in primary care. BMC Neurol. 2011 Feb 27;11:28. doi: 10.1186/1471-2377-11-28. PMID: 21352569; PMCID: PMC3056753.

・Durmer JS, Quraishi GH. Restless legs syndrome, periodic leg movements, and periodic limb movement disorder in children. Pediatr Clin North Am. 2011 Jun;58(3):591-620. doi: 10.1016/j.pcl.2011.03.005. PMID: 21600344.

・Allen RP, Picchietti DL, Garcia-Borreguero D, Ondo WG, Walters AS, Winkelman JW, Zucconi M, Ferri R, Trenkwalder C, Lee HB; International Restless Legs Syndrome Study Group. Restless legs syndrome/Willis-Ekbom disease diagnostic criteria: updated International Restless Legs Syndrome Study Group (IRLSSG) consensus criteria--history, rationale, description, and significance. Sleep Med. 2014 Aug;15(8):860-73. doi: 10.1016/j.sleep.2014.03.025. Epub 2014 May 17. PMID: 25023924.

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