Low T3症候群/非甲状腺疾患症候群 (NTIS)
Low T3症候群/非甲状腺疾患症候群の疫学および病態
・非甲状腺疾患症候群(以下NTIS: non-thyroidal illness syndrome)は甲状腺機能に異常がない患者において感染症や炎症などの種々の要因により甲状腺機能異常を呈する病態である。
・ほかにLow T3症候群、Sick euthyroid syndromeなどとも呼ばれることがある。
・甲状腺から分泌されるホルモンの多くはT4である。しかし、T4はホルモン活性が比較的小さく、より活性が大きいT3を末梢臓器でつくることとなり、これを脱ヨード化という。慢性の消耗性疾患などが存在すると、代謝亢進に拍車がかからないようにT4からT3への変換が阻害され、結果としてLow T3症候群に至る。より重症化するとLow T4症候群となることもあり、この場合ではTSHの上昇を伴わないことが特徴である。
・重症疾患がある状況では視床下部あるいは下垂体レベルでHPT軸のDown regulationが生じ、循環する甲状腺ホルモン濃度が低下することとなる。
・また絶食や低栄養は同様にNTISを惹起することが知られている。
マネジメント
・NTISに対して甲状腺ホルモン補充療法を行うことが必要かどうかについてはコンセンサスが得られていない。実際、NTISにおける甲状腺ホルモン補充療法の有効性を評価した研究は極めて限定的である。
・原則として、根本的な原因となった疾患の改善がなされれば、甲状腺機能は正常化する。
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<参考文献>
・Fliers E, Bianco AC, Langouche L, Boelen A. Thyroid function in critically ill patients. Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 Oct;3(10):816-25. doi: 10.1016/S2213-8587(15)00225-9. Epub 2015 Jun 10. PMID: 26071885; PMCID: PMC4979220.