GPはヘルスケアの不平等に取り組むべきであるが、健康の不平等に取り組むべきとはいえない
“GPはヘルスケアの不平等に取り組むべきであるが健康の不平等に取り組むべきでない”
※General practice should tackle healthcare inequalities but not health inequalities(PMID:39481897)より。
内容
・GPがフォーカスを当てるべき問題はヘルスケアの不平等(healthcare inequalities)であって、健康ではない。医療へのアクセス性が不良な人達が本来必要なケアを受けられるようにすることが優先事項である。
・GPは短い時間で次々と受診する患者に対して、実質的に健康状態を改善させることは容易ではない。実際、健康を改善させるためには公衆衛生的な取り組みの方がもっと大きなインパクトを与えられることが示されている。
・診療所を受診する患者の脳機能を評価するだけでは、さかさまケアの法則(inverse care law)を助長させてしまう可能性が高い。Inverse care lawとはケアが必要な人ほど、実際はケアが行き渡っていないことを示す法則である。健康問題が多い人ほどヘルスメンテナンスは乏しく、健康問題が少ない人ほどヘルスメンテナンスが豊富になる傾向がある。
・たとえば2型糖尿病患者に対する生活指導や投薬治療、それ自体は重要かつ有効である。しかし、その糖尿病の発症の背景には貧困や教育格差など、医療の枠だけでは収まりきらないような要因が存在することを認識しなければならない。
・デンゼル・ワシントンは「Don’t confuse movement with progress.」という言葉を残している。何か行動を起こすことは本当に何もしないことよりも良いことなのかを疑問に思うことが必要かもしれない。例えば大気汚染問題の解決をsocial prescribers(社会的処方を実践する人)に委ねることは明らかに非現実的であるように、状況を好転させえないような取り組みを行うことに必ずしも意味があるとはいえない。その点で社会的処方(social prescribing)は健康格差(health inequalities)を悪化させ、かつ複雑な問題に対する過度に単純化した解決策を提案してしまう場合がある。
・イギリスの医学者/作家で、RCGP(Royal College of General Practitioners)の会長も務めたIona Heathは「An excessive and unrealistic commitment to prevention of sickness could destroy our capacity to care for those who are already sick.」と述べている。あくまでヘルスケアの不平等に取り組むべきで、健康の不平等(health inequalities)にフォーカスしてしまうと平時の診療の質の担保がうまくいかなくなることも考えられる。
―――――――――――――――――――――――――――――――
<参考文献>
・Gopal D. General practice should tackle healthcare inequalities but not health inequalities. Br J Gen Pract. 2024 Oct 31;74(748):512. doi: 10.3399/bjgp24X739833. PMID: 39481897; PMCID: PMC11526745.