胆石症 gallstones

胆石症とその疫学

・欧米の成人の約10~15%が胆石症を発症し、そのうち毎年1~4%の割合で胆石症に伴う症状を経験する。

・胆石(gallstones)は胆汁の化学成分のバランスが崩れ、一部が沈殿することで発生する。その原因は明らかになっていない。

・胆石症の発症率は年齢とともに増加する。

・主なリスク因子としては肥満(BMI>30)、胆石症の家族歴、妊娠、急激な体重減少(例: 肥満手術後)、非経口栄養、胆汁酸の喪失(例: 回腸末端炎, 回腸切除後)、糖尿病が挙げられる。

胆石症が引き起こす症状/病態

・様々な疾患の原因となるが、最も頻度が高いのが胆石発作(56%)で、急性胆嚢炎(36%)がそれに次ぐ。そのほか総胆管閉塞に伴う黄疸や胆管炎、胆石性膵炎、Bouveret症候群、胆石性腸閉塞、胆嚢癌などが挙げられる。

・Bouveret症候群とは胆嚢十二指腸瘻を通過した胆石が十二指腸球部に嵌頓して胃内容排泄障害をきたす病態を指し、稀な状態である。胆嚢十二指腸瘻は胆嚢に炎症が生じている際に形成されることがある。

・黄疸は主に胆石によって総胆管が部分的あるいは完全に閉塞することで水溶性の抱合型ビリルビンが腸管内に排泄されにくくなった結果として生じる。通常は胆管の閉塞によって生じるが、稀に胆嚢頸部または胆嚢管における胆石による閉塞で、総肝管が圧迫されて生じることもある(Mirizzi症候群)。

・胆石性膵炎は主に十二指腸乳頭部に胆石が嵌頓し胆管と膵管の共通管が閉塞することで生じる。心窩部痛のほか、背部痛も伴いやすく、疼痛は体幹前屈で改善しやすい。なお、大量の嘔吐がみられることも多い。

・胆嚢癌では胆石症がリスク因子となることが知られる。

胆石発作と急性胆嚢炎との鑑別

・ときに胆石発作と急性胆嚢炎との区別は容易でない。

・胆石発作は通常食後2時間以内に症状がみられる。

・胆石発作は胆道疝痛(billary colic)とも呼ばれるが、典型的な疝痛の形式をとらないことが知られ、通常は疼痛の程度に波は少なく、持続痛として自覚される点に留意が必要。

・両者は心窩部痛や右上腹部痛として自覚され、悪心や嘔吐を伴う点も共通する。

相違点としては、症状の持続時間が胆石発作では8時間未満で、胆嚢炎の場合はそれを超過して続くことが挙げられる。また、右上腹部における圧痛は胆石発作ではみられないが、胆嚢炎ではみられ、炎症所見は胆石発作では欠くのが典型的で、腹部エコーでも所見が乏しいはずである。

・なお、超音波検査で胆石が同定できない場合でも、胆石症は否定されない。小さい胆石や胆泥はときに見逃される可能性がある。ときに再検も検討可能。

偶発的に胆石が発見される場合

・無症候性の胆石症では胆石関連合併症を毎年1~4%の割合で発症することが知られる。したがって、大多数の患者にとって予防的な胆嚢摘出術の有益性は乏しく、通常は症状がなければ経過観察となる。ただし、若年であることは将来的に合併症を生じる可能性が比較的大きいことを意味する。

小さな結石は大きめな結石よりも膵炎を発症しやすいことが知られ、実際、胆石性膵炎の独立したリスク因子とされる。

・侵襲的治療の必要性については、患者の年齢、超音波検査所見、症状の有無を総合的に考慮したうえで、個々で検討することとなる。

非外科的治療

 <鎮痛薬>

・胆石発作または胆嚢炎由来の疼痛についてはアセトアミノフェン点滴静注も有効。

・そのほかジクロフェナクとオピオイドの併用あるいは単独投与も非常に有効。

・嘔吐が強いケースでは坐薬あるいは静注製剤の使用も検討される。

 <利胆薬>

・ウルソデオキシコール酸(UDCA)は胆石の発生予防に有効とされる。

・肥満手術を受けた患者を対象にした前向き研究では無作為にUDCA 500mg/日する群と、プラセボ群とに分けられ、6ヶ月間あるいは胆石が形成されるまでの間、経過観察された。結果として、12ヶ月後時点で”3% vs 22%”、24ヶ月後時点で”8% vs 30%”と、UDCA投与群の方が胆石形成率は有意に低いことが示された。

・ただし、胆石が形成されてしまうとUDCAは有効でないことも示唆されている。また、既に症候性胆石症に至っている患者においてUDCA投与は自覚症状の軽減に有効でないことも示されている。

 <経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)>

・詳細は割愛する。

外科的治療

・腹腔鏡下胆嚢摘出術(Lap-C)と開腹胆嚢摘出術とを比較したコクランレビューでは死亡率、合併症発生率、手術時間について有意な差は認められなかった。ただし、Lap-Cでは入院期間が短縮することなどが示されている。

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<参考文献>

・Sanders G, Kingsnorth AN. Gallstones. BMJ. 2007 Aug 11;335(7614):295-9. doi: 10.1136/bmj.39267.452257.AD. PMID: 17690370; PMCID: PMC1941876.

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