緊張型頭痛 Tension-type headache
緊張型頭痛とその疫学/症状
・緊張型頭痛は一次性頭痛のなかで最多頻度を占める。
・疼痛は通常、頭部に限局するが、頸部痛、頸部の運動制限、咀嚼時の疼痛などを伴う場合もある。
・緊張型頭痛では頸部周囲の筋肉の緊張が関与していると考えられる。また、慢性経過で頸椎の変性が生じ、頭痛を助長させていることもある。
・有病率は約38%で、30~39歳の女性に好発するという報告もある。
・一般的には日常生活への支障が乏しく、その点では片頭痛と異なる。しかし、緊張型頭痛の約8%では仕事を休混なければならないような頭痛を経験すると報告されている。
・片頭痛は月経との関連性がすでに証明されている。一方で、緊張型頭痛を有する女性においても月経時にのみ頭痛が生じるケースがあることが示されていて、その割合は片頭痛の約2倍高いことが報告されている。
・反復発作性の緊張型頭痛は発作頻度が15日/月未満なものを指す。慢性緊張型頭痛は15日/月以上のものを指し、こちらは痛みの中枢性感作が関係していると考えられている。
身体所見
・緊張型頭痛では特異的な身体所見はなく、神経診察でも異常が認められない。
・頭部や頸部において、触診時の圧痛や筋痙攣がみられることがある。特に反復発作性の緊張型頭痛においてはより身体所見が得られやすい。
・慢性緊張型頭痛ではより身体所見が得られにくい。これは痛みの中枢性感作が主な病態であるためと考えられる。
臨床検査
・頭痛が新規に出現した高齢者など、いわゆる”頭痛のRed flag”に相当するケースでは二次性頭痛を想定して、画像検査などを実施することを検討する。
・前述のように頸椎の変性が緊張型頭痛に影響を及ぼすことがあるため、頸椎X線撮影などは病態の把握に有用なことがある。
・特に予防的に鎮静薬などを連日内服しているようなケースでは臓器障害の評価なども含めて、血液検査を実施するべきである。
・甲状腺機能低下症は緊張型頭痛による頭痛と類似した状況になることがあり、甲状腺機能の評価も検討する。
治療
・緊張型頭痛の治療法としては薬物治療、心理療法、理学療法などが挙げられる。
・疼痛の急性期には鎮痛薬が主に使用される。また筋弛緩薬は急性期治療の一環として使用され、また予防的治療の一部としても利用される。
・鎮静薬としては通常、アセトアミノフェン、NSAIDsが有効である。ただし日常的に使用することで薬物乱用性頭痛(MOH)を合併する危険が高まることに留意する。
・疼痛緩和においてはNSAIDsはアセトアミノフェンよりも有効であることが示されているが、副作用のリスクもアセトアミノフェンよりも高いと思われ、総合的に判断することが必要。
・筋弛緩薬などの薬剤も使用されることはあるが、恐らく緊張型頭痛に対してRCTが実施されたことはなく、経験的に使用されている現状がある。頭痛が頻回に生じるケースなどでは予防的に筋弛緩薬を連日内服することも選択肢には含まれるかもしれない。
・副作用に関する十分な注意は必要であるが、予防薬としてアミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬(TCA)は緊張型頭痛に対して優れた臨床効果を有することが知られている。そのほかSNRI、SSRIなども有効とする見方もある。
・非薬物療法としては認知行動療法などが推奨されている。これらはストレスコーピングなどを通して、頭痛が軽減することが期待される。
・マッサージ、理学療法は一部有効なケースもあるが、有効性に関する報告は様々で一貫しない。鍼灸治療については有効性も認められるが、過去の臨床研究については質的に差が大きい点に留意が必要。
・トリガーポイント注射(ボツリヌス毒素注射)は一部有効性が示されている。
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<参考文献>
・Freitag F. Managing and treating tension-type headache. Med Clin North Am. 2013 Mar;97(2):281-92. doi: 10.1016/j.mcna.2012.12.003. Epub 2012 Dec 27. PMID: 23419626.