好酸球増多 eosinophilia

好酸球増多症とその疫学

・好酸球増多(eosinophilia)とは好酸球分画でなく、好酸球の絶対数が増加している状態を指す。一過性の増加に留まることもあるが、1,500/μL以上の増加している状態が持続する場合には通常さらなる評価が勧められる。

・一般的に軽度の好酸球増多を500~1,500/μL、中等度の好酸球増多を1,500~5,000/μL、重度の好酸球増多を5,000/μL以上と定義される。

アレルギー性

・軽度の好酸球増多(<1,500/μL)ではアレルギー性疾患の患者でしばしばみられ、特にアレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎、薬物アレルギーなどが代表的である。

・中等度から重度の好酸球増多では主に慢性副鼻腔炎(特にアスピリン不耐症の合併例)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、慢性好酸球性肺炎、薬物アレルギー(DRESS症候群)などが代表的である。

・ABPAではときに様々な程度の好酸球増多とIgE上昇もみられる。

・慢性好酸球性肺炎では発症時の好酸球増多は軽度に留まるが、経過のなかで中等度の増加がみられることが多い。また、気管支肺胞洗浄液には少なくとも40%以上の好酸球が含まれるケースが80%程度を占める。このような状態は後に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)を発症する前兆であるという見方もある。

・薬剤アレルギーによる好酸球増多は軽度から重度まで様々な程度でみられる。なお、多くのケースで好酸球数が急激に増加したり、緩徐に減少したりする。また、常時とは限らないが、多くはびまん性に斑状丘疹型の薬疹を伴う。

DRESS症候群

好酸球増多と全身性の薬疹とを伴う症候群をDRESS症候群(Drug Rash with Eosinophilia and Systemic Symptoms Syndrome)といい、肝機能障害、発熱、リンパ節腫脹がみられることが典型で、しばしば著明な好酸球増多に至る。DRESS症候群の原因薬剤としては主に抗菌薬(ペニシリン系/セファロスポリン系/キノロン系/ST合剤)、アロプリノール、抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトイン、ラモトリギン、バルプロ酸)、抗レトロウイルス薬(ネビラピン、エファビレンツ)、NSAIDs(特にイブプロフェン)が挙げられる。

寄生虫および感染症関連好酸球増多症

・寄生虫感染症でも好酸球増多がみられる。

・ただし、なかでもジアルジア感染症では好酸球増多はみられにくいとされる。

・各論的内容の記載は割愛する。

自己免疫疾患

・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は通常アトピー素因がある人において発症し、副鼻腔病変、肺病変、腎病変を生じ、多発単神経炎を伴うこともある。EGPAでは著明な好酸球増多のほか、炎症反応上昇、組織における好酸球増多を伴う。腎病変を伴わないEGPAではANCA陽性率が、腎病変を伴うEGPAよりも低いことが知られている。したがって、EGPAはANCA陰性により除外されない。EGPAが疑われる患者ではHIV抗体、アスペルギルス特異的IgE・IgGなどを鑑別目的に確認することが提案されている。そのほか喀痰orBALF中アスペルギルスの検索、血清ビタミンB12値および血清トリプターゼ値(骨髄性白血病、全身性肥満細胞腫などの評価)、末梢血スメア、胸部CT撮像などを検討する。なお、EGPAのほとんどのケースで喘息がみられる。

・自己免疫疾患では程度が様々であるが、しばしば好酸球増多を伴う。具体的な疾患としては好酸球性筋膜炎、EGPA、皮膚筋炎、重症関節リウマチ、進行した全身性強皮症、多発血管炎性肉芽腫症、ベーチェット症候群、水疱性類天疱瘡などである。

・炎症性腸疾患でも好酸球増多がみられることがある。

・サルコイドーシスではアレルギー性疾患が併存していなくても軽度の好酸球増多がみられることが一般的である。

・IgG4関連疾患(IgG4-RD)では特定の腺組織、臓器、リンパ節を侵すことがあり、末梢血好酸球増多は約25%で伴う。また、IgEの上昇と軽度から中等度の好酸球増多との両方がアトピー素因に非依存性に生じることが知られている。

原発性好酸球増多症

・原発性好酸球増多症には特発性好酸球増多症候群、血管性浮腫を伴う周期性好酸球増多症候群(Gleich症候群)、肥満細胞腫などが含まれる。

・好酸球の浸潤により侵され得る臓器としては肺、皮膚、心臓、血管、副鼻腔、腎臓、脳が挙げられる。

・ときに易疲労感、筋肉痛、脱力感、全身倦怠感といった非特異的な全身症状がみられる。

・Gleich症候群は好酸球増多を伴う血管性浮腫が特徴で、掻痒を伴う蕁麻疹、発熱、体重増加がみられ、しばしばIgM上昇がみられる。この疾患には好酸球増多とそれに伴うIL-5の上昇が免疫学的病態として存在すると考えられる。

・肥満細胞腫の約25%で好酸球増多を伴う。

悪性腫瘍関連好酸球増多症

・悪性腫瘍を背景疾患とした好酸球増多が認識されることがある。

・血液腫瘍では急性好酸球性白血病、慢性好酸球性白血病、リンパ腫(T細胞およびHodgkinリンパ腫)、慢性骨髄単球性白血病が代表的である。

・固形腫瘍では消化管癌(胃がん、大腸がん)、肺がん、扁平上皮がん(子宮頸部, 膣, 陰茎, 皮膚, 上咽頭など)、甲状腺がんが代表的である。

免疫不全に関連する好酸球増多症

・常染色体優性遺伝の遺伝形式を伴う、高IgE症候群(Job症候群)では繰り返す膿瘍性病変、肺感染症、重症湿疹が特徴で、好酸球増多とも関連する。

・Wiskott-Aldrich症候群はX連鎖性遺伝形式をとり、湿疹、血小板減少、繰り返す感染などが特徴で、好酸球増多とも関連する。

・アデノシンデアミナーゼ欠損症(ADA欠損症)は重症複合型免疫不全症(SCID)の約15%を占め、好酸球増多と関連する。小児期からアトピー性皮膚炎を伴い、繰り返す感染の病歴が聴取される。

・オーメン症候群(Omenn syndrome)は好酸球増多、IgE上昇、T細胞機能不全がみられ、繰り返す感染を特徴とする。紅皮症、湿疹がみられる。

その他の疾患

・その他の好酸球増多に関連し得る疾患としては造血幹細胞移植後の移植片対宿主病、木村病および類上皮血管腫、副腎機能不全、漿膜表面の炎症、コレステロール塞栓症などが知られる。

・木村病は主にアジア人男性に好発し、慢性経過の頭頚部のリンパ節腫脹、皮下組織腫脹、好酸球増多、IgE上昇を特徴とする疾患である。主に頸部リンパ節や唾液腺に多く、無痛で柔らかく、発熱や体重減少のような全身症状に乏しいことが典型。発症のピークは30歳代とされている。病理検査が診断に有用で、治療としては外科的切除、ステロイド治療が検討される。

・類上皮血管腫は好酸球増多を伴う血管腫で、頭頚部、特に耳介とその周辺に好発する。一般的に良性疾患と考えられる。IgEの上昇は一般的ではない。

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<参考文献>

・Kovalszki A, Weller PF. Eosinophilia. Prim Care. 2016 Dec;43(4):607-617. doi: 10.1016/j.pop.2016.07.010. Epub 2016 Oct 14. PMID: 27866580; PMCID: PMC5293177.

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・Valent P, Klion AD, Horny HP, Roufosse F, Gotlib J, Weller PF, Hellmann A, Metzgeroth G, Leiferman KM, Arock M, Butterfield JH, Sperr WR, Sotlar K, Vandenberghe P, Haferlach T, Simon HU, Reiter A, Gleich GJ. Contemporary consensus proposal on criteria and classification of eosinophilic disorders and related syndromes. J Allergy Clin Immunol. 2012 Sep;130(3):607-612.e9. doi: 10.1016/j.jaci.2012.02.019. Epub 2012 Mar 28. PMID: 22460074; PMCID: PMC4091810.

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