孤発性上腸間膜動脈解離 isolated superior mesenteric artery dissection
孤発性上腸間膜動脈解離とその疫学
・孤発性上腸間膜動脈解離(以下SMAD: Superior mesenteric artery dissection)は大動脈解離などを伴わないにも関わらず、SMAに限局する解離性病変がみられるものを指す。
・SMADは1947年にBauersfeldにより初めて報告された。
・SMADのリスク因子としては喫煙、動脈硬化、先天性結合組織病、血管炎、線維筋性異形成などが挙げられる。
・しばしば胃腸炎や非特異的な疼痛などと判断され、SMADと診断されるまで時間がかかることも稀ではない。
・SMAD患者の約23%は高血圧症が併存し、しばしば160/100mmHg以上の血圧高値を呈している。
・交通事故などの外傷によりSMADを発症するケースもある。
・SMADはアジア圏でより多く報告されている。
・約80~90%が男性であると報告される。平均的には50歳代に好発するが、広く様々な年齢で発症例がある。
臨床症状
・突発完成の疼痛が典型的で、これは血管性疾患の病歴に共通しやすい。
・主な自覚症状としては腹痛(56%)、心窩部痛(23%)、臍周囲痛(5%)、背部痛(5%)、血便(3%)、胸痛(2%)が挙げられる。また、悪心/嘔吐、腹部膨満を呈することもある。
・解離が進行するSMAの破裂により、腹痛とともにショック状態に至る場合もあり、致命的な転帰をたどり得る。
・また約8%に相当するケースでは1ヶ月以上の慢性経過で、悪心/嘔吐、下痢、血便、腹痛などを呈していたという報告もある。
診断
・SMADは動脈硬化リスクが高い患者で腹痛を呈している場合に想起する必要がある。
・超音波検査でSMAにおけるFlapを描出できることもあるが、感度や検者の技術による影響も受けることに留意する必要がある。したがって、SMADを疑う状況では造影CT撮像を実施することが妥当である。
・SMADの診断において血液検査や腹部X線撮影の有用性は乏しい。
・通常、健常者ではSMV径がSMA径を上回るはずであるが、SMA径がSMV径を上回る場合があり、これはSmaller SMV signと呼ばれる。Smaller SMV signは一般的に急性SMA閉塞でみられる所見で、急性SMA閉塞に関して感度70%、特異度99.2%と報告されている。SMADとSmaller SMV signとの関連性が示された報告は乏しいが、SMADでもみられる場合があり、これは解離による血流低下の影響で、SMVの虚脱が生じるためと考えられている。
保存的加療
・循環動態が安定しているケースなどでは保存的加療として抗凝固療法が選択されることもある。
外科的血行再建術
・外科的治療が選択されることがあり、その場合は伏在静脈グラフトを利用したバイパス術などが検討される。
・血栓除去術もときに検討され得る。
・ときに腸閉塞を合併している場合もあり、その際には腸管切除も検討される。
血管内治療
・SMAにおけるステント留置術が選択されることもある。
・ウロキナーゼによる血栓溶解療法が行われることもあるが、その有用性が明確に示されているとは言い難い状況にある。
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<参考文献>
・Ullah W, Mukhtar M, Abdullah HM, Ur Rashid M, Ahmad A, Hurairah A, Sarwar U, Figueredo VM. Diagnosis and Management of Isolated Superior Mesenteric Artery Dissection: A Systematic Review and Meta-Analysis. Korean Circ J. 2019 May;49(5):400-418. doi: 10.4070/kcj.2018.0429. PMID: 31074212; PMCID: PMC6511528.
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