好酸球性胃腸炎 EGE: eosinophilic gastroenteritis

好酸球性胃腸炎とその疫学/分類

好酸球性消化管疾患(EGIDs: eosinophilic gastrointestinal disorders)は好酸球の消化管局所への異常集積から消化管組織が障害され、機能不全を起こす疾患の総称。

・EGIDsは傷害されている部位により好酸球性食道炎(EoE: eosinophilic esophagitis)、好酸球性胃炎(EG: eosinophilic gastritis)、好酸球性胃腸炎(EGE: eosinophilic gastroenteritis)、好酸球性大腸炎(EC: eosinophilic colitis)に大別される。しかし、EG、EGE、ECはそれぞれ明確に区別できないことも少なくないため、EGおよびECはEGEに包含される。本ページではEGEについて記載する。

・2011年には本邦においてEGEがEoEの5.5倍の患者数と報告されている。しかし、欧米ではEGEはEoEよりも稀な疾患とされている。

・EGEは発症に関して男女差がほとんどない。

・喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患を有するケースが多い。

・原因による分類としてはまず一次性、二次性とに分けられる。

・一次性にはアトピー性、非アトピー性、家族性に分けられる。

・二次性はまず好酸球疾患性非好酸球疾患性とに分けられる。さらに好酸球性疾患性は好酸球増多症候群、他部位にEGIDsの合併に分けられ、非好酸球性疾患性は医原性、感染症、炎症性腸疾患、先天性食道閉鎖・狭窄関連、セリアック病(celiac disease)、血管炎、強皮症、その他に分けられる。

・EGEは古典的には消化管壁内の好酸球浸潤部位により粘膜浸潤型、筋層主体型、漿膜下主体型の3つに分けられるが、臨床的にはオーバーラップしていることもある。

好酸球性胃腸炎の診断(2015年)

 <必須項目>

  1. 症状(腹痛, 下痢, 嘔吐等)を有する.
  2. 胃, 小腸, 大腸の生検で粘膜内に好酸球主体の炎症細胞浸潤が存在している(20/HPF以上の好酸球浸潤, 生検は数か所以上で行い, また他の炎症性腸疾患, 寄生虫疾患, 全身性疾患を除外することを要する. 終末回腸, 右側結腸では健常者でも20/HPF以上の好酸球浸潤をみることがあるため注意する.)
  3. あるいは腹水が存在し腹水中に多数の好酸球が存在.

 <参考項目>

  1. 喘息などのアレルギー疾患の病歴を有する.
  2. 末梢血中に好酸球増多を認める.
  3. CTスキャンで胃, 腸管壁の肥厚を認める.
  4. 内視鏡検査で胃, 小腸, 大腸に浮腫, 発赤, びらんを認める.
  5. グルココルチコイドが有効である.

臨床症状/臨床経過

・EGEで病変が最も好発する箇所は小腸、次いで大腸となるため、主な自覚症状は下痢、腹痛であることが多い。

・EGEは慢性経過となり、しばしば再燃する。

血液検査

末梢血好酸球増多はEGEでは認められることが多く、約80%の例で認められる。

内視鏡所見/病理検査

・EGEでは浮腫, 発赤, びらん, 消化性潰瘍など非特異的な所見であることも少なくないとされている。また、肉眼的には異常と認識されないこともあるため、EGEを疑った場合には生検を行う。

・病理検査は参考所見となるが、食道以外の消化管は生理的好酸球が存在することに留意する。明確な基準はないが、終末回腸から右側結腸においては健常者であっても20/HPF以上の高値がみられることがある。

EGEの鑑別疾患

・EGEの主な鑑別疾患としては過敏性腸症候群(IBS)、Crohn病、潰瘍性大腸炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(IgA血管炎)、感染性腸炎、寄生虫感染、好酸球性白血病、好酸球増多症候群、放射線腸炎、虚血性腸炎、虚血性小腸炎、悪性リンパ腫、NSAIDs腸炎などが挙げられる。

・通常、まず過敏性腸症候群(IBS)などの機能性消化管疾患(FGID: functional gastrointestinal disorders)が主たる鑑別疾患となる。症状での区別は困難で、ときに病理検査を要する。また、IBSとEGEとが重複するケースもある。

・ときにEGEの診断は容易でなく、経過観察の方針とするケースも少なくない。

治療

・EGEの治療には全身性ステロイドが用いられることが多い。また、原因薬物が想定される場合にはそれを除去すること(食事療法)、その他の抗アレルギー薬などの使用が検討される。ただし、EGEの治療においてエビデンスレベルが高い報告は乏しい。

全身性ステロイド(内服治療)が第一に選択されることが多い。経験的にPSL 0.5~2mg/kg/日で投薬を始め、1~2週後から漸減することが多い。多くのケースで一時的に症状が改善するが、治療終了後60%程度で再発がみられる。現状、ステロイドの使用量、治療期間、漸減の方法、再発時の対応などに関してコンセンサスは存在しない

・病歴上、何らかの食物摂取に関連して症状を呈する場合には食物除去を行うことも検討する。根拠となる文献は症例報告が多いが、食事療法によって臨床症状の消失あるいは寛解に至る割合は小児、成人ともに90%弱程度とされている。ただし、抗原を想定することが困難な場合も少なくない。

・抗アレルギー薬として抗ヒスタミン薬(H1RA)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の投与を試すことも可能である。なお、急性増悪時や難治例を除き、一般的に抗アレルギー薬はエビデンスレベルが比較的高く、ステロイドに比べると副作用も小さいことからまず試される場合もある。なお、比較的エビデンスレベルが高いと考えられているのはモンテルカストである。

・その他の治療法としては免疫抑制薬(アザチオプリン、シクロスポリン、タクロリムス)、生物学的製剤(抗IL-5、抗IgE抗体製剤)、制酸薬(H2RA、PPI)、漢方薬などが挙げられる。

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<参考文献>

幼児・成人好酸球性消化管疾患診療ガイドライン(厚生労働省好酸球性消化管疾患研究班)

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