ファブリー病(Fabry disease)

Fabry病とその疫学

・Fabry病はα-ガラクトシダーゼA(α-GalA)の活性欠損により生じ、結果としてリソソームの蓄積で各種症状が生じる

・遺伝形式はX連鎖劣性遺伝(XR)の形式をとる。男性は女性よりも発症頻度が高く、またより重症、より発症年齢が若年である傾向がみられる。Fabry病に関する家族歴を聴取することはときに有用であるが、ただし同一家系内においても症状やその重症度は様々である。

・有病率としては男性において約4万人~6万人に1人程度と推定されているが、最近の研究では約3,100人に1人程度とより高い可能性が示唆されている。

・典型的な発症年齢は4~8歳とされている。

・Fabry病の病型としてはClassic Fabry diseaseLate-onset Fabry diseaseとがあり、本ページでは主にClassic Fabry diseaseについて記載する。

病因/病態生理

・Fabry病の発症にはGLA遺伝子変異が関与していて、これによりα-Gal A酵素の活性低下が生じる。

・出生前検査(prenatal testing)は可能で、α-Gal A活性を測定することでなされる。既に遺伝子変異が認識された家族がいる場合にはその患者さんにおいても遺伝子変異を検索することも一案である。

臨床経過/臨床症状

・通常は若年期に症状がみられる。

・典型的には末梢神経障害に起因する四肢痛皮膚病変とがみられる。

・四肢痛はときに灼熱痛のように表現される。また、運動、温度変化、疲労、感情的ストレスによって疼痛は誘発され、ときに四肢以外に、腹部(腹痛)なども伴う。

皮膚病変はAngiokeratoma corporis diffusumと称され、典型的には隆起性の皮疹が臍部、殿部、鼡径部にみられやすい。皮膚病変の頻度は年齢とともに増加し、特に男性例でみられやすい。

・腸管症状としては腹痛、悪心/嘔吐、下痢、吸収不良などがみられることがある。

蝸牛症状and/or前庭機能症状はFabry病患者の最大60%でみられると報告されている。

・心血管系の合併症としては僧帽弁閉鎖不全症がみられる場合があり、多くの場合で小児期あるいは青年期にみられる。また、進行性の左室肥大、伝導障害がみられることがある。

うつ病はFabry病の最大60%でみられると報告されている。

下腿の圧痕性浮腫がみられることがある。

・腎病変に関して、蛋白尿は初期からみられることがある。末期腎臓病に進展することもあり、その場合は20歳代以降(20~40歳代)で生じることが典型的である。

角膜混濁は細隙灯顕微鏡検査でしばしば確認される所見で、”Fabry cataract”とも称される。

・その他、発汗低下などがみられることもある。

・小児例で発育不良を示す場合もある。また、成人例の40%以上で血圧高値が指摘されている。

Late-onset Fabry disease

・α-Gal A活性が1%以上残存することを特徴とする。

25歳以上で発症するが、典型的には中年以降で発症する

心臓病変(進行性の左室肥大、伝導障害など)は主に50~70歳代で生じる。

・軽度~中等度の蛋白尿は典型的にみられるが、いわゆる腎機能は年齢相応に保たれるケースから末期腎不全に至るケースまで様々である。

・またClassic Fabry diseaseでみられ得るような皮膚病変、眼病変などは通常伴わない

原因不明の心筋症(特に左室肥大を伴う)、不整脈、腎不全、脳卒中ではLate-onste Fabry diseaseを疑う契機になる。

臨床検査

・Fabry病はαGal A活性が1%未満であることで特徴づけられる。

男性では血漿中のα-Gal A活性測定または遺伝子検査で確定診断する。α-Gal A活性が1%未満であればClassic Fabry diseaseと、1%超であればLate-onset Fabry diseaseと見立てることがある。

女性ではα-GalA活性は信頼性が低いため、遺伝子検査で確定診断する。

・Fabry病に関連する臓器障害を評価するために考慮するべき検査としては心電図検査、心エコー検査、心筋バイオマーカー、尿検査が挙げられる。成人例で有症候性のケースでは脳画像検査などを考慮する。

マネジメント

・Fabry病の初期治療としては酵素補充療法(ERT: enzyme replacement therapy)単独、あるいはERTにシャペロン療法を併用する形式を選択する。

・治療の詳細は本ページで割愛する。

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<参考文献>

・Nagueh SF. Anderson-Fabry disease and other lysosomal storage disorders. Circulation. 2014 Sep 23;130(13):1081-90. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.114.009789. PMID: 25245844.

・Mehta A, Hughes DA. Fabry Disease. 2002 Aug 5 [updated 2024 Apr 11]. In: Adam MP, Feldman J, Mirzaa GM, Pagon RA, Wallace SE, Bean LJH, Gripp KW, Amemiya A, editors. GeneReviews® [Internet]. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993–2024. PMID: 20301469.

・Zarate YA, Hopkin RJ. Fabry's disease. Lancet. 2008 Oct 18;372(9647):1427-35. doi: 10.1016/S0140-6736(08)61589-5. PMID: 18940466.

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