IgG4関連疾患 IgG4-related disease

IgG4関連疾患とその疫学

・IgG4関連疾患(IgG4-RD: IgG4-related disease)は血清IgG4高値と組織におけるIgG4陽性形質細胞の増殖、浸潤を特徴として、全身臓器に線維/腫瘤/肥厚性病変を呈するリンパ増殖性疾患である。

・2011年の報告では日本における自己免疫性膵炎の有病率は人口10万人あたり4.6人であったが、IgG4-RDに関連する他の臓器における疾患の有病率は明らかでない。

・日本からの報告によると、男女比は3~4:1で男性に多く、平均発症年齢は60代後半であった。スペインのIgG4-RDのコホート研究では約69%が男性で、診断時の年齢中央値は53歳であった。

IgG4関連胆管炎(硬化性胆管炎)自己免疫性膵炎の患者に関するコホート研究では88%で建設業や工場業での労働経験があり、その多くの場合で職業性化学物質への曝露歴があった。

・小児のIgG4-RD発症例も報告されていて、平均発症年齢13歳で、女性優位(64%)とされている。

臨床症状

亜急性経過で非特異的な症状を呈することが多い。

・少なくとも1つの臓器において腫瘍性病変がみられるが、通常は何年もかけて進行して、診断された際には複数の臓器病変を有することがある。ある報告では診断時の平均臓器病変数は3.0±1.6であった。

・IgG4-RDと診断されたケースでは悪性腫瘍の除外は重要で、ときに区別が困難で外科手術が行われることもある。そのほか、鑑別疾患は多岐にわたるが、多中心性キャッスルマン病、多発血管炎性肉芽腫症、シェーグレン症候群、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、サルコイドーシスなどの自己免疫疾患の可能性は考慮する。

・IgG4-RDに関連する典型的な臓器は膵臓であり、古典的には胆道障害による閉塞性黄疸を呈する。また、比較的新しい報告では咳嗽、呼吸困難、胸膜痛、発熱を伴う肺疾患を合併することが知られている。そのほか、副鼻腔炎、嚥下障害を伴う食道病変、尿閉を伴う前立腺病変、陰嚢痛を呈する精巣病変などが挙げられる。

・多臓器を侵し、95%膵臓、唾液腺、涙腺、腎臓、大動脈のいずれかに病変を有するという報告がある。

診断基準

・「2020改訂IgG4関連疾患包括診断基準」が参考になる。

血液検査

・IgG4-RDでは一般的にIgG4値が上昇し、本邦ではその基準を135mg/dL以上と定めている。ただし、この検査所見は診断において必須事項ではなく、病理組織学的所見がある場合にはそちらに基づいて診断される。また、実際に患者の約30%では血清IgG4値は基準値内である。

・罹患臓器数が多いほど、血清IgG4値は上昇しやすいと考えられている。

・前述のようにIgG4-RDを疑うケースにおいて悪性腫瘍の除外は重要である。たとえば自己免疫性膵炎と膵癌との鑑別は容易でない場合もあるが、血清IgG4上昇がみられることは膵癌の否定の根拠には利用できないとされている。

・グルココルチコイドの投与により血清IgG4値は低下するが、基準値上限を超えたまま維持されることもある。実際、自己免疫性膵炎をグルココルチコイドで治療された182人のうち115人(63%)で血清IgG4値は基準値上限を超えたままであったという報告がある。一部の患者では血清IgG4値の上昇が再発のマーカーとなる可能性はあるが、上昇がないケースの10%でも再発がみられるという報告がある。

・IgG4上昇が軽度に留まる場合にはIgG4/IgG>10%IgG4/IgG1>24%という検査所見も参考になる場合がある。

抗核抗体(ANA)はIgG4-RD患者の32%で陽性であるという報告もある。また、

画像検査

病理組織検査は診断に不可欠な要素であるが、画像診断は病変部位の推定や経過観察に有用である。

・IgG4-RDでは臓器病変を評価するためにFDG PET-CTの有用性が示されている。また、病勢の評価や生検部位の特定にも有用とされている。

・CT撮像で同定された臓器病変はMRI撮像のT2WIで低信号を示す。

病理検査

・IgG4-RDの診断には病理組織学的検査ゴールドスタンダードとされている。

・IgG4-RDの重要な組織学的形態的特徴は花莚状線維化(Storiforom fibrosis)、閉塞性静脈炎、好酸球浸潤を伴うIgG4陽性リンパ球と形質細胞の浸潤である。

治療

・IgG4-RDにおける臓器病変は経過観察が選択される場合もある。

・薬物治療が選択される場合の第一選択薬はグルココルチコイドである。自己免疫性膵炎の初期治療では一般的にPSL 0.6mg/kgを2~4週間投与し、その後、2~4週間ごとに3~6ヶ月間ほどかけて5mg/日まで漸減させ、2.5~5.0mg/日の用量で3年間継続することが提案されている。

・再発例に対するマネジメントにおいてもグルココルチコイドが最も使用されることが多い。そのほか、免疫抑制薬としてアザチオプリン、リツキシマブが使用されることもある。

・また膵臓、腎臓、その他の臓器における腫瘤性病変の治療法として手術および放射線治療も検討されることがある。

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<参考文献>

・Yamamoto M, Takahashi H, Shinomura Y. Mechanisms and assessment of IgG4-related disease: lessons for the rheumatologist. Nat Rev Rheumatol. 2014 Mar;10(3):148-59. doi: 10.1038/nrrheum.2013.183. Epub 2013 Dec 3. PMID: 24296677.

・Wolfson AR, Hamilos DL. Recent advances in understanding and managing IgG4-related disease. F1000Res. 2017 Feb 23;6:F1000 Faculty Rev-185. doi: 10.12688/f1000research.9399.1. PMID: 28299186; PMCID: PMC5325071.

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