急性間欠性ポルフィリン症 acute intermittent porphyria
急性ポルフィリン症
・急性ポルフィリン症(Acute porphyria)とはヘム合成経路に関わる酵素の先天異常により起こる疾患の総称である。なかでも急性間欠性ポルフィリン症(Acute intermittent porphyria)は頻度が高い疾患である。
・ヘム合成には大きく8つの段階があるが、酵素の欠落により前駆物質であるデルタアミノレブリン酸、ポルフォビリノーゲンが過剰に蓄積、循環し、尿中または胆汁中へ排泄される。症状は主に神経系を障害することで生じる。
・本ページでは主に急性間欠性ポルフィリン症について記載する。
急性間欠性ポルフィリン症
・急性間欠性ポルフィリン症はヘム合成の第3酵素であるポルフォビリノーゲンデアミナーゼの部分欠損により生じる。
・常染色体優性遺伝(AD)の遺伝形式をとるが、孤発例も存在するため、家族歴が確認されない場合でも否定されることはない。
・20~30歳代の若年女性に好発する。一部、月経と関連する場合もあり、排卵から月経開始までの間のプロゲステロン上昇に関連するという説もある。そのほか、経口避妊薬、絶食などが誘引となる場合もある。
・典型的には数日間にわたる強い疲労感と集中力低下が続き、腹痛、悪心/嘔吐、神経症状(脱力、知覚異常、情動の変化など)が徐々に悪化する。
・バイタルサインの異常としては頻脈、収縮期血圧上昇がみられる場合がある。
・身体所見や検査所見で異常所見がみられず、鎮静薬に対する反応性も乏しいことが多いことから、心因性の疼痛などと誤解されることがある。
・血液検査では肝酵素の軽度上昇と低ナトリウム血症がみられる場合はあるが、それ以外に特記所見を伴わない。
・診断は尿中あるいは血中のポルフォビリノーゲンの上昇は急性ポルフィリン症に特異的とされている。特に発作時には僅かな上昇に留まらず、基準値上限の10~150倍に至る場合もある。
・またチロシン血症、鉛中毒は急性間欠性ポルフィリン症に類似した症状を呈すると言われていて、鑑別を要し、またこれら2つの病態では尿中のデルタアミノレブリン酸濃度が上昇している場合がある。
・治療/対処としてはポルフィリン症の誘因となり得るような薬剤を回避することなどがまず挙げられる。リスクとなる薬剤としては抗てんかん薬、経口避妊薬、スピロノラクトン、プロゲスチン製剤などである。そのほか発作時のブドウ糖静注、制吐薬、鎮静薬の使用などが検討されることがある。現在、急性発作に対する唯一の特異的治療法はヘム製剤(パネマチン)の静脈内投与であるが、少なくとも本邦では使用ができない。
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<参考文献>
・Bissell DM, Anderson KE, Bonkovsky HL. Porphyria. N Engl J Med. 2017 Aug 31;377(9):862-872. doi: 10.1056/NEJMra1608634. PMID: 28854095.