低カリウム性周期性四肢麻痺 hypokalemic periodic paralysis

低カリウム血症と周期性四肢麻痺

・低カリウム血症では弛緩性麻痺を生じることがあり、周期性四肢麻痺とも呼ばれる。

・本邦では甲状腺機能亢進症による二次性の低カリウム性周期性四肢麻痺の頻度が比較的多い。そのほかの原因として嘔吐・下痢、原発性アルドステロン症、薬剤性(甘草、利尿薬、β受容体作動薬、インスリン、コルチコステロイドなど)などが挙げられる。

・遺伝子変異により生じる家族性低カリウム性周期性四肢麻痺も存在し、発症は典型的には20歳未満であり、日本人を含むアジア人種は比較的少ないと考えられている。

(なお、詳細は割愛するが、高カリウム血症によっても周期性四肢麻痺は生じ得る)

・遺伝子変異のあるケースにおける約75%、遺伝子変異のないケースの約50%で、それぞれ周期性四肢麻痺の家族歴が聴取されることがある。

臨床症状と誘因

・周期性四肢麻痺では低カリウム血症により、有痛性の筋痙攣が生じる場合がある。

・発作が生じる前日に炭水化物を多く含む食事の摂取により、インスリン分泌が亢進することで、低カリウム血症をきたし周期性四肢麻痺を来すケースもある。また、運動後の長時間の安静、アルコール多飲、睡眠不足なども誘因となることがある。

・筋力低下は局所性のことも、全身性のこともある。ただし、典型的には筋力低下は下肢近位筋に優位で、対称性かつ発作性に弛緩性麻痺が生じる

・なお、顔面筋呼吸筋は重度の低カリウム血症でなければ、一般的に生じにくい。

・弛緩性麻痺が生じる際に前兆はなく、比較的突発性に生じやすい。

・弛緩性麻痺は1時間以内に改善することが多いが、数日ほど遷延するケースもある。

心電図検査/神経症状

・低カリウム血症による周期性四肢麻痺を疑う際には不整脈の合併などを想定して、心電図検査も行っておくことが無難かもしれない。

・心電図検査では典型的には2.5~3.5mEq/L程度の低カリウム血症ではT波の平坦化、T波の陰性化、U波の出現、ST低下が、2.5mEq/L未満の低カリウム血症ではST低下、U波増高、PR間隔延長などが、それぞれみられ得る。

・周期性四肢麻痺では神経症状として意識障害はみられない。また発作時には深部腱反射が消失あるいは減弱する所見がみられる。

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<参考文献>

・Venance SL, Cannon SC, Fialho D, Fontaine B, Hanna MG, Ptacek LJ, Tristani-Firouzi M, Tawil R, Griggs RC; CINCH investigators. The primary periodic paralyses: diagnosis, pathogenesis and treatment. Brain. 2006 Jan;129(Pt 1):8-17. doi: 10.1093/brain/awh639. Epub 2005 Sep 29. PMID: 16195244.

・Ahlawat SK, Sachdev A. Hypokalaemic paralysis. Postgrad Med J. 1999 Apr;75(882):193-7. doi: 10.1136/pgmj.75.882.193. PMID: 10715756; PMCID: PMC1741179.

・Miller TM, Dias da Silva MR, Miller HA, Kwiecinski H, Mendell JR, Tawil R, McManis P, Griggs RC, Angelini C, Servidei S, Petajan J, Dalakas MC, Ranum LP, Fu YH, Ptácek LJ. Correlating phenotype and genotype in the periodic paralyses. Neurology. 2004 Nov 9;63(9):1647-55. doi: 10.1212/01.wnl.0000143383.91137.00. PMID: 15534250.

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