ACLS(advanced cardiovascular life support)
ACLS
・ACLSはAdvanced Cardiovascular Life Supportの略で、医療機関において実施される心肺蘇生法のことを指す。
・ACLSアルゴリズムについてはここでは割愛する。日本ACLS協会ガイドのホームページの内容が参考になる。
・質の高い胸骨圧迫を行いながら、同時並行的に、酸素投与、ルート確保、モニター装着、可逆的な原因検索と介入(血液ガス、RUSH protocolなど)、薬剤投与、高度な気道確保などを行う。
・病院へ搬送された場合、可能であれば救急隊から、目撃者の有無、バイスタンダーCPR実施の有無、初期波形が何に相当したか、病院到着までの所要時間、付き添いの人が誰かなどを聴取できると良い。
<薬剤について>
・アドレナリンは全ての心停止患者において1mgを3~5分おきに静注で使用する。4分おきの投与とすると波形チェックと合わせて確認しやすいかもしれない。
・なお、電気的除細動が適応とならない波形、つまり無脈性電気活動(PEA)、心静止(Asystole)の場合には可及的速やかにアドレナリンを投与する。
・アミオダロンは心室細動(VF)、Pulssless VTにおいて、初回300mg、2回目 150mgを投与する場合もある。投与する場合は3回目の電気的除細動の前後で行うことが検討されるが、心停止患者の生存退院率などを改善させるエビデンスはない。
・静脈路の確保が困難な場合は骨髄路からの投与でも可能で、効果は変わらないとされている。
<電気的除細動について>
・心室細動(VF)、Pulssless VTでは可及的速やかに電気的除細動を行う。
<人工換気/気管挿管について>
・バックバルブマスク(BVM)で換気をしている際には30回の胸骨圧迫に対して2回の換気を原則とする。なお、気管挿管後は6秒に1回の早さ(10回/分)で換気をする。
・一般的に気管チューブの内径は男性7.5~8.0mm、女性7.0mm程度を選択することが多い。もしも使用可能な状況にあれば、ビデオ喉頭鏡を使うことで挿管がより容易になるかもしれない。
・気管チューブの挿入深度の目安としては成人男性で24cm以下、女性で21cm以下とする場合がある。
・気管挿管した際には聴診(心窩部の胃泡音、胸部の呼吸音)、EtCO2モニター、超音波検査を用いて確認する。
原因検索
・心停止の原因検索としては”5H&5T”が知られている。
・5Hは①Hypovolemia(循環血液量減少) ②Hypoxia(低酸素血症) ③Hydrogen ion(アシドーシス) ④Hypo/Hyperkalemia(低/高カリウム血症) ⑤Hypothermia(低体温)を指す。
・5Tは①Tension pneumothorax(緊張性気胸) ②Tamponade(心タンポナーデ) ③Toxin(中毒) ④pulmonary Thrombosis(肺塞栓症) ⑤coronary Thrombosis(心筋梗塞)を指す。
・そのほか低血糖(Hypoglycemia)の否定も重要。
・RUSH(Rapid Ultrasound for Shock and Hypotension)で、①Hypovolemia(循環血液量減少) ②Tension pneumothorax(緊張性気胸) ③Tamponade(心タンポナーデ) ④pulmonary Thrombosis(肺塞栓症)などを検索することも並行して行う。
・血液ガス分析では①Hypoglycemia(低血糖) ②Hydrogen ion(アシドーシス) ③Hypo/Hyperkalemia(低/高カリウム血症) を確認する。
ROSC後の対応
・自己心拍再開をROSC(Return Of Spontaneous Circulation)という。
・ROSC後はABC(Airway/Breathing/Circulation)の確保がまず重要で、そのうえで胸部X線撮影、12誘導心電図検査などを行う。
・また、いわゆる高度な気道確保(気管挿管)を行うことを検討して、EtCO2モニターを装着し、PaCO2 35-40程度の維持を目指す。また心電図検査も行い、心筋梗塞などが疑われる場合は心カテーテル検査/治療に進む場合がある。必要に応じて輸液、昇圧薬、強心薬の投与を行い、可能であればAラインの確保を行う。
・ROSC後にはTTM(Targeted Temperature Management)として、体温を32~36度程度にすることが推奨されている。高体温を防ぐことで神経学的予後が悪化することを防ぐためにこういった推奨がなされている。
蘇生中止の判断
・蘇生が見込めるか否かを明確に、単一の指標で決めることは困難であることを前提としたうえで、いくつかの指標は示されている。
・たとえば目撃者がおらず、バイスタンダーCPRが実施されていないケース、CPR開始から20分程度経過してEtCO2<10mmHgのケース、心静止(Asystole)が続くケース、蘇生開始してから40分程度経過してもROSCに至らないケースなどは指標と考えられる。
・蘇生中止を検討する場合はご家族らにとっての心理的負担が大きくならないような配慮がなされることが望ましい。
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<参考文献>
・Panchal AR, Bartos JA, Cabañas JG, Donnino MW, Drennan IR, Hirsch KG, Kudenchuk PJ, Kurz MC, Lavonas EJ, Morley PT, O'Neil BJ, Peberdy MA, Rittenberger JC, Rodriguez AJ, Sawyer KN, Berg KM; Adult Basic and Advanced Life Support Writing Group. Part 3: Adult Basic and Advanced Life Support: 2020 American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care. Circulation. 2020 Oct 20;142(16_suppl_2):S366-S468. doi: 10.1161/CIR.0000000000000916. Epub 2020 Oct 21. PMID: 33081529.