劇症1型糖尿病 fulminant type 1 diabetes mellitus
劇症1型糖尿病
・劇症1型糖尿病(fulminant type 1 diabetes mellitus)は2000年に本邦から報告された病態で、数日間から1週間程度での急激な経過でインスリン依存状態に変わり、ケトーシス、ケトアシドーシスに至る病態である。
・約70%のケースで先行感染のエピソード(発熱、上気道炎症状、消化器症など)が聴取される。
・免疫チェックポイント阻害薬に関連して発症することも知られている。
・悪心や腹痛はケトアシドーシスの症状としても知られるため、こういった症状がみられれば劇症1型糖尿病の可能性も想定して、まずは尿検査の実施と、血液ガス分析で血糖値やアシデミアの存在などを確認することを検討する。
・可能な限り早期に診断し、インスリン投与を急ぐことが大切である。
診断基準
下記1~3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する。
- 糖尿病症状出現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る(初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める)。
- 初診時の(随時)血糖値が288mg/dL(16.0mmol/L)以上であり、かつHbA1c(NGSP値)<8.7%である。
- 発症時の尿中Cペプチド10μg/日未満、または空腹時血清Cペプチド0.3ng/mL未満かつグルカゴン負荷後(または食後2時間)血清Cペプチド0.5ng/mL未満である。
<参考所見>
・原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である。
・ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1~2週間の症例も存在する。
・約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇している。
・約70%の症例で前駆症状として上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)、消化器症状(上腹部痛、悪心・嘔吐など)を認める。
・妊娠に関連して発症することがある。
・HLA遺伝子多型DRB1*04:05-DQB1*04:01との関連が明らかにされている。
免疫チェックポイント阻害薬と劇症1型糖尿病
・前述のとおり、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAE)として劇症1型糖尿病が知られている(急性発症1型糖尿病との関連性も知られている)。
・発症頻度は1%未満とされていて、他のirAEに比べてとりわけ頻度が高いとはいえない。
・免疫チェックポイント阻害薬の種類としては抗CTLA-4抗体よりも抗PD-1抗体による場合の方が多いとされている。
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<参考文献>
・Imagawa A, Hanafusa T, Miyagawa J, Matsuzawa Y. A novel subtype of type 1 diabetes mellitus characterized by a rapid onset and an absence of diabetes-related antibodies. Osaka IDDM Study Group. N Engl J Med. 2000 Feb 3;342(5):301-7. doi: 10.1056/NEJM200002033420501. PMID: 10655528.