後頭神経痛 occipital neuralgia

後頭神経痛とその疫学

・後頭神経痛(Occipital neuralgia)は大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経の分布領域にみられる神経痛を指す。大後頭神経、小後頭神経がC2神経根に由来するため、”C2 neuralgia(C2神経痛)”と称されることもある。

・主に慢性的に硬直した(凝った)項部筋や頚椎症などにより生じることが一般的。そのほか頻度としては低いものの、変形性頚椎症、頸部椎間板ヘルニア、頭蓋内血管による圧迫、巨細胞性動脈炎、神経鞘腫、多発性硬化症などが原因とする報告も存在する。

・頻度としては大後頭神経痛が多く(約90%)小後頭神経痛がそれに次ぐ(約10%)

・有病率に関する質の高い研究はない。オランダの一般市民を対象にした研究では10万人あたり3.2人という比較的低い有病率が報告されている。

片側性であることが多いが、両側性に生じる場合もある。

臨床症状

・神経の分布に沿って疼痛がみられる場合もあれば、患部の知覚低下、異常感覚を伴う場合もある。

・疼痛は通常、神経痛様で発作間欠的に生じる。しかし、持続的な違和感のような症状を呈する場合もある。

・疼痛は主に後頭部に存在するが、神経の走行に沿って放散する場合もある。

・ときに視力障害/眼痛、めまい、悪心、鼻閉などがみられる場合もある。

・稀ながら大後頭神経痛の疼痛が顔面に波及する場合があり、これを大後頭三叉神経症候群(GOTS: Great occipital trigeminal syndrome)という。大後頭神経と三叉神経の間には結合が生じている場合があるとされている。

身体診察

・大後頭神経は外後頭隆起の外側2.5cmの部位から、小後頭神経はさらにその外側2.5cmの部位から神経枝が出ており、同部位に圧痛がみられたり、または軽い打診により疼痛や異常感覚が誘発される場合もある(Tinel徴候)。

・患者が頭を枕のうえに乗せ、頸部を過伸展あるいは回旋させることで、疼痛が生じる場合もある。これをpillow sign(あえて訳すならば”枕徴候”でしょうか)と呼ぶ。

診断/治療

・臨床症状、身体所見、後頭神経の局所麻酔による頭痛の一時的な軽減により、診断が確定する。

後頭神経ブロックは診断的意義もあるが、治療にも有効。なお、後頭神経ブロックによる頭痛の軽減は後頭神経痛に特異的なものでなく、片頭痛や群発頭痛でもみられる(偽陽性)ことが報告されている。

・そのほかの治療としては姿勢改善などによる理学療法、ステロイドを含む局所麻酔治療、ボツリヌス毒素注射、筋弛緩薬、項部への湿布外用、三環系抗うつ剤、抗痙攣薬(カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン)などが検討される。

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<参考文献>

・Choi I, Jeon SR. Neuralgias of the Head: Occipital Neuralgia. J Korean Med Sci. 2016 Apr;31(4):479-88. doi: 10.3346/jkms.2016.31.4.479. Epub 2016 Mar 9. PMID: 27051229; PMCID: PMC4810328.

・Barmherzig R, Kingston W. Occipital Neuralgia and Cervicogenic Headache: Diagnosis and Management. Curr Neurol Neurosci Rep. 2019 Mar 19;19(5):20. doi: 10.1007/s11910-019-0937-8. PMID: 30888540.

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