カテーテル関連血流感染症 CRBSI: Catheter-related blood stream infection
CRBSIの総論とは
・カテーテル関連血流感染症(CRBSI: Catheter-related blood stream infection)は末梢、中心静脈を問わず、ラインが存在する患者が発熱するなどの変化が生じた場合には一度は必ずラインに関連した感染症を疑う。
・ライン刺入部に所見(発赤など)がなくても、CRBSIは否定できない。刺入部の炎症所見は感度が低く、0~3%という報告もある。
・ルーメンはなるべく少ない方が感染リスクはより小さくなる。したがって最小限のルーメン数のカテーテルを選択することを心がけることが大切。
・鼠径部、つまり大腿静脈の使用ではより感染リスクが高まる。この傾向は特に肥満の患者で特によく知られる。また、前向きコホート研究では頸静脈や大腿静脈に比して、鎖骨下静脈の使用例において、感染および血栓形成のリスクがより低かったという報告もある。要は優先的に大腿静脈を利用する意義は乏しい。
診断
・CRBSIを疑う場合にはカテーテルからの逆血から血液培養1セットを、末梢から血液培養1セットを、それぞれ提出する。両者から同一菌が検出され、かつカテーテルからの培養が、末梢血からの培養よりも2時間以上早く陽性となればカテーテル感染が証明される。
・なお、原因不明の発熱などが続き、カテーテルからの逆血での血液培養と、末梢からの血液培養とでCRBSIが証明できない場合においては、カテーテル抜去をして、先端を培養検査に提出する。その際にはカテーテル先端の5cm程度を切断し、血液培養とともに提出する。
マネジメント
<抗菌薬/抗真菌薬>
・主な起因菌としてはMSSA、MRSA、CNS、E.faecalis、Candida属(特にalbicans以外)が知られている。主にCNSとS.aureusで多数を占める。
・特に重症度が高いケースや大腿静脈にカテーテルが留置されていたケースではGNRまでカバーすることも検討する。
・Candida属をカバーする必要性が比較的高いケースは大腿静脈にカテーテル留置されtれいるケース、非経口栄養を続けているケース、広域スペクトラムを有する抗菌薬を長期投与しているケース、血液腫瘍が併存するケース、臓器移植あるいは造血幹細胞移植をしているケースなどである。経験的治療(empiric therapy)としてはMCFGまたはCPFGを使用する。
・経験的治療(empiric therapy)としてはVCMの使用が推奨され、目標AUC 400~600μg・h/mLをなるべく維持できるような用量調節を目指す。なお、好中球減少がみられるケースや熱傷患者においてはP.aeruginosaの関与の可能性を想定した抗菌薬選択をする場合もある。
・S.aureusによる菌血症あるいは皮下トンネル感染が想定される場合は一般的にカテーテル抜去をすることが望ましい。
・カンジダ血症のケースでは眼科コンサルテーションが推奨される。
・脂肪製剤(イントラリポス®)を使用しているケースではS.epidermidis感染が生じやすいことが知られている。
・薬物感受性試験結果に応じて診断的治療(definitive therapy)を行う。MRSAの場合、VCMのMIC≧2.0μg/mLの場合はVCMでなく、DAPTの使用を検討する。
・原則としては長期留置のカテーテルは抜去することが望ましいが、代替のVascular accessが極めて限られるケースや、カテーテルの抜去/交換に合併症などのリスクを伴うケースでは留置を継続することが例外的に選択される場合もある。その場合は抗菌薬の全身投与に加えて、カテーテルの抗菌薬ロック療法を行うことが考慮される。
<治療期間>
・治療期間は血液培養で陰性が確認された日を第0日として定める。菌腫によらず、血液培養の陰性化の確認は必要で、薬剤の投与期間に影響する。
・免疫抑制状態でなかったり、カテーテル抜去ができていたりするケースで、カテーテル抜去して72時間以内に培養が陰性化するケース(換言すれば感染性心内膜炎や遠隔感染巣が存在する可能性が低いケース)においては以下の治療期間が推奨される。
①CNSに対しては5~7日間
②EnterococcusとGNRに対しては7~14日間
③カンジダ属が原因菌で、眼内炎がみられない場合は14日間
④臨床的に、また経食道心エコー検査(TEE)で感染性心内膜炎を示唆する所見がない場合にはS.aureusに対して14日間
・なお、持続菌血症の状態が72時間以上続くケースや、遠隔感染巣を形成するリスクを有するケースにおいては個別性に応じて、より長期の治療期間を設定する場合もある。
合併症
・合併症としては化膿性血栓性静脈炎、感染性心内膜炎、骨髄炎などが知られる。
・適切な治療を行っているにも関わらず、菌血症が72時間以上続く場合には化膿性血栓性静脈炎などの合併を疑う。
CRBSIの予防(一例)
・大腿静脈の使用は可能な限り避け、可能な限り内頚静脈あるいは鎖骨下静脈を使用する。あるいは末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC: peripherally inserted central venous catheter)の利用を検討する。通常の中心静脈カテーテルよりもPICCは感染率が低いことで知られている。
・カテーテル刺入部は感染の所見がないかどうかを連日チェックし、抜去できないかどうかを連日検討する。
・挿入部位の皮膚はアルコールとクロルヘキシジンとで清潔に保つ。ポビドンヨードよりもクロルヘキシジンを利用する方が感染率はより低いことが知られている。
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<参考文献>
・Mermel LA, Allon M, Bouza E, Craven DE, Flynn P, O'Grady NP, Raad II, Rijnders BJ, Sherertz RJ, Warren DK. Clinical practice guidelines for the diagnosis and management of intravascular catheter-related infection: 2009 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2009 Jul 1;49(1):1-45. doi: 10.1086/599376. Erratum in: Clin Infect Dis. 2010 Apr 1;50(7):1079. Dosage error in article text. Erratum in: Clin Infect Dis. 2010 Feb 1;50(3):457. PMID: 19489710; PMCID: PMC4039170.
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