鉄剤の静注療法 IV iron therapy
鉄剤の静注治療の適応
- 経口鉄剤が何らかの理由で使用できないケース
- 経口鉄剤の有効性が小さいケース
- 鉄欠乏性貧血の改善を急ぐべきケース/重度の鉄欠乏性貧血(例えばHb<8.0mg/dLなど)
- 鉄欠乏状態の原因として吸収不良が想定されるケース(例:胃切除後, 十二指腸バイパス術, 萎縮性胃炎, Crohn病, 薬剤性(PPIなど))
- 心不全などが併存するケース(Cardio-renal-anemia syndromeを回避するためと換言しても良いかもしれない)
などが想定される。
静注療法の実際と副作用
・使用する静注製剤は「フェジン(商品名)」として知られている。
・用法の一例として「40mg(2mL)を10%ブドウ糖液 20mLで希釈して2分以上かけて静注」などがある。
・副作用として注意するべきものの一つに頻度は低いが、アナフィラキシーショックが知られている。なお、初回投与でも生じることがあることに留意する。
・鉄過剰状態を回避するために総鉄必要量を算出してから使用する。
・「総鉄必要量(mg)=(2.2×(16-Hb)+10)×体重(kg)」という計算式が存在し、こちらをもとに静注製剤の使用回数などのメドをつけることとなる。
静注療法のメリットとデメリット
<メリット>
・消化管における鉄吸収能に影響を受けない
・経口製剤に比べて消化器系の副作用の頻度が少ない
・経口製剤に比べてHb値の上昇が早い
・経口製剤よりも大きい用量で投与が可能 など
<デメリット>
・Infusion reactionsを生じる可能性がある
・経口製剤よりも高価である(例えば「クエン酸第一鉄Na50mg:5.7円/錠」に対して、「フェジン静注40mg/2mL:127円/A」)
フォローアップ
・静注療法を受けている期間においては定期的に血液検査結果をフォローする必要性が高く、主に血清フェリチン、血中Hb、Ht、網状赤血球数などを参考にする。
・鉄欠乏性貧血の原因が不明あるいは不可逆的で、かつ再発性の鉄欠乏性貧血を呈するケースでは長期の補充を要する場合がある。
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<参考文献>
・Snook J, Bhala N, Beales ILP, Cannings D, Kightley C, Logan RP, Pritchard DM, Sidhu R, Surgenor S, Thomas W, Verma AM, Goddard AF. British Society of Gastroenterology guidelines for the management of iron deficiency anaemia in adults. Gut. 2021 Nov;70(11):2030-2051. doi: 10.1136/gutjnl-2021-325210. Epub 2021 Sep 8. PMID: 34497146; PMCID: PMC8515119.
・Girelli D, Ugolini S, Busti F, Marchi G, Castagna A. Modern iron replacement therapy: clinical and pathophysiological insights. Int J Hematol. 2018 Jan;107(1):16-30. doi: 10.1007/s12185-017-2373-3. Epub 2017 Dec 1. PMID: 29196967.
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