プライマリケアにおける多職種連携(システマティックレビュー)
プライマリケアにおける多職種連携に関するシステマティックレビュー(PMID:28973173)があり、要所をかいつまみながらまとめてみます。少し複雑な内容で、本文を読むと理解が進む部分も多いかと思います。
はじめに
・統合された患者中心のケア(integrated patient-centered care)を提供するための多職種協働は重要で、糖尿病、うつ病、不安症などに罹患した患者の転帰を改善させることが知られている。しかし、例えば主となる疾患ごとにどのような連携の違いがあるかなどについてはあまり知られていなかったため、この研究がなされた。
・そもそも医療分野における”協働(collaboration)”とは問題解決のプロセスや、意思決定の責任の共有であり、そして共通の目標に向かってケアプランを運用していくことを指す。
・協働において、2つの重要な要素が存在している。
1つ目は患者の複雑なニーズに対応するためのチームとしてのアクションの形成。
2つ目は各専門職の視点を統合し、チームメンバーが日常的に相互にリスペクトするようなチームダイナミクスの存在。
・チームダイナミクスは複雑なため、本研究では”five-component model(5要素モデル)”を利用して分析をしている。
<Method>
・検索対象:2005年01月~2016年10月までの間に査読のあるJournalに掲載された英語論文を対象として、多職種協働による医療ケアに関するPaperを対象とした。
<Results>
・チームに含まれる職種は平均すると4.5分野が含まれていた。89%の論文で家庭医(FP)あるいは一般開業医(GP)が、72%の論文で看護師が含まれていた。その他の職種としては多い順に、管理栄養士、ソーシャルワーカー、薬剤師、心理士、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)だった。
・患者の診断名によっても関わる職種が異なっていた。筋骨格系障害の診断名では、看護師と管理栄養士の参加が少なく、PT、OT、ソーシャルワーカーの参加が多く、統計学的有意差もみられた。また、内分泌/栄養/代謝性疾患の診断名では、管理栄養士の参加が多く、精神疾患の診断名では管理栄養士の参加が乏しく、こちらも統計学的有意差がみられた。
・国別の差異については、論文の数などの関係で、統計学的有意差はみられなかった。
・また、外来、入院、在宅医療などの診療セッティングや、都市や地方といった観点でも統計学的有意差はみられなかった。
five-component model
・日本語訳はよくわからないが、直訳すれば”5要素モデル”だろうか(※うまく日本語訳できず、変なまとめ方になってしまいました。本文のTable 2を読むと、①~⑤の各項目が具体的に指す内容がよりわかりやすいように感じましたので、そちらをご参照ください。)
・5つの要素は次のように示される。
<①Interdependence(相互依存性)>
・チームメンバーが互いに頼ること。
・具体的には専門家同士の紹介や、直接的なコミュニケーション、間接的なコミュニケーション(文書でのやり取りなどを含む)など。
<②Newly created professional activities(新規に形成される専門職の活動)>
・専門職が個々に活動していてはできないようなことも、協働することで可能となる。
・具体的には多職種での訪問診療や遠隔医療など。
<③Role flexibility(役割の柔軟性)>
・上下関係が少ない状況を求める。
・この項目に関連するが、リーダーの役割を担う者が明示されないようなチームの方が柔軟性が高いことが示されている。
<④Collective ownership of goals(チームとしての目標の保持)>
・全体のプロセスを通じて、責任を共有することを含む概念。
・具体的にはミーティングの開催など。
<⑤Reflection(内省)>
・チームワークに関してチームメンバーが意識することで、関係性や有効性を強化する。
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<参考文献>
・Saint-Pierre C, Herskovic V, Sepúlveda M. Multidisciplinary collaboration in primary care: a systematic review. Fam Pract. 2018 Mar 27;35(2):132-141. doi: 10.1093/fampra/cmx085. PMID: 28973173.