プライマリケア医が婦人科疾患患者と接する際の視点

論文タイトル

・Primary care clinicians’ perspectives on interacting with patients with gynecological conditions: a systematic review (PMID:37968071)

・「プライマリケア医が婦人科疾患患者と接する際の視点」

研究デザイン/本研究がなされた経緯

・研究デザイン:システマティックレビュー

・背景:これまでの研究で婦人科疾患やそれに起因する症状を有する患者はプライマリ・ケア医に十分に話を聞いてもらえていると実感しがたいという感覚を抱きがちであることが知られている。そういった背景をもとに、婦人科疾患患者の診療に関わることの困難さについてのプライマリ・ケア医の考え方などについて理解するために本研究がなされた。

・対象:1998年から2023年07月までにおける英語論文を対象に検索し、結果として25の論文が対象となった。比較的、高所得国におけるプライマリ・ケアが対象となっている。

結果

・研究結果として、主に以下の4つのテーマに帰結した。

 ①Sociocultural factors affecting the consultation experience

  (コンサルテーション経験に影響を与える社会文化的な要因)

 ②Need for further education, training, or guidance for clinicians

  (臨床医に対するさらなる教育、訓練、指導に必要性)

 ③Diagnosis and decisions to refer women

  (診断と患者を紹介することに関する要因)

 ④Factors related to service structure and organizations

  (サービスの構造と体系に関連する要因)

各4テーマに関する内容の詳細

<①Sociocultural factors affecting the consultation experience>

・婦人科的症状に関して患者と対話する際に、プライマリケア医には多少のスティグマ気恥ずかしさのような感情が存在していることが存在している場合がある。

・婦人科的症状が病的な範疇のものというよりも、生理的な範疇で説明がつくものとプライマリケア医は誤認していることがある。

・プライマリケア医が男性の場合と、女性の場合とで患者に対する接し方が異なっていた。例えば月経に伴う出血については、一部の男性医師は患者の経験に関する情報のみに頼り、それ以上の深堀りはできないと感じていると報告されている。一方で、女性医師はより情報を深堀りして、その症状が異常な範疇にあることをより自信をもって判断できていることが示された。

<②Need for further education, training, or guidance for clinicians>

・プライマリケア医は婦人科領域における研修やガイドライン内容の把握が不十分であったり、婦人科疾患に接する機会がそもそも少なかったりといった要因により婦人科疾患に関する知識が十分でないことがあった(特に男性医師にその傾向は強い)。

・プライマリケア医はケアに満足感を持てない患者や、特に慢性的に症状を有する患者の解決策を見つけることに苦労しやすいという報告がある。たとえば慢性骨盤痛の症状は長期に渡ることが多く、明確なBiologicalな説明は困難で、診療が容易でないという報告もある。この点に関して、本文ではナースプラクティショナーの重要性を説いている。

<③Diagnosis and decisions to refer women>

・どのタイミングで患者を紹介するかということについてもプライマリケア医にとっては課題に感じられていた。

・多くの婦人科疾患は(プライマリケアの現場において)確定診断が困難であり、一部の診断は紹介によってのみ実施可能な検査が必要である。しかし、実際には紹介ができるような症状を呈している場合であっても、必ずしも紹介がなされるわけではない。例えば子宮内膜症の症状を有する若年女性は通常の月経痛とも類似していることがあり、紹介がなされないこともある。全体的に、若年女性は重篤な疾患を有する可能性が低いと考えられ、紹介に至る割合は低い傾向にあった。

・一部のプライマリケア医は症状がプライマリケアの現場でコントロールできる場合などにおいて、診断が必須とまではいえないと考えていた。

・紹介をする時期を検討する際の方略としては”Diagnostic hierarchy(診断的な階層化)”に従うことが一案として挙げられる。これはつまり、いわゆるRed flag(悪性腫瘍など)を除外できれば、他の病態を積極的に検索する緊急性が小さくなるということである。

<④Factors related to service structure and organizations>

・GPの仕事量が多く、診察時間も限られていること自体がケアの質に悪影響を及ぼしている可能性が想定される。

・ケアの継続性(continuity of care)の不足も課題として指摘されていて、特に良好な医師-患者関係を構築することが、より効果的なコミュニケーションと相互理解に不可欠とされている。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

<参考文献>

・Briscoe S, Thompson Coon J, Melendez-Torres GJ, Abbott R, Shaw L, Nunns M, Garside R. Primary care clinicians' perspectives on interacting with patients with gynaecological conditions: a systematic review. BJGP Open. 2024 Mar 19:BJGPO.2023.0133. doi: 10.3399/BJGPO.2023.0133. Epub ahead of print. PMID: 37968071.

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です