視力障害 visual loss

眼に異常がある場合

<①屈折の異常>

・屈折異常が存在すると網膜に光が焦点を結べず、視力障害をきたす。

・主な原因:近視、遠視、乱視、老眼など。

<②角膜混濁>

・角膜混濁により光が網膜まで届きづらくなり、視力障害をきたす。

・主な原因:角膜障害(潰瘍/異物/浮腫)、白内障、硝子体出血など。

・特に急性閉塞隅角緑内障で角膜混濁(角膜浮腫)、眼痛、毛様充血、散瞳などをきたすことがある。また、Flashlight testが陽性となることがあり、感度 90%、特異度 67%という報告もある。Flashlight testはライトを側方から虹彩と平行になるように当てて、三日月状の影が出現すれば陽性とする身体所見です。

<③網膜の異常>

・黄斑病変により視力は低下し得る。

・視野欠損は異常のある網膜の領域に対応する形をとる。

・合併症や家族歴がときに重要。

・主な原因:網膜剥離、網膜炎(HSV/VZV/CMV)、網膜色素変性症(遺伝性疾患)、糖尿病網膜症、網膜動脈分枝閉塞症(BRAO)/網膜中心動脈閉塞症(CRAO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)/網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、鎌状赤血球網膜症、血管炎(Behçet病、サルコイドーシス)、黄斑疾患(加齢黄斑変性、糖尿病性黄斑浮腫、中心性漿液性網脈絡膜症、薬剤性(ヒドロキシクロロキン))

視覚伝導路に異常がある場合

<①視神経(視交叉よりも前方)の異常>

・色覚異常を伴う場合もある。

・視神経炎の場合には眼球運動時痛がみられることがある。視神経炎を疑う場合はガドリニウム造影MRI撮像を検討する。また、脊髄病変(NMOあるいは抗MOG抗体関連疾患など))を疑う場合は脊髄MRI撮像も検討する。

RAPD(Relative afferent pupillary defect)が陽性となることがある。

・頭蓋内圧亢進をきたす病態ではうっ血乳頭が観察できる場合がある。

・主な原因:片側の視神経乳頭の腫脹をきたす疾患(脱髄性疾患(多発性硬化症)、巨細胞性動脈炎など)、両側の視神経乳頭の腫脹をきたす疾患(脱髄性疾患(視神経脊髄炎)、頭蓋内圧亢進をきたす疾患(脳静脈洞血栓症、頭蓋内病変、水頭症、薬剤性など)、視神経萎縮をきたす疾患(ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏)、緑内障など

<②視交叉病変>

・両耳側半盲をきたす。

・主な原因:下垂体腫瘍、下垂体卒中、頭蓋咽頭腫

<③視交叉後部の異常>

・同名半盲をきたす。

・主な原因:脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、可逆性後頭葉白質脳症(PRES)など

単眼視力障害と両眼性視力障害

単眼視力障害では一般的には眼球そのものに異常がある場合(屈折異常/角膜混濁/網膜異常)あるいは視交叉より前方の異常による疾患であることが多い。

両眼視力障害では視交叉病変視交叉後部の異常による疾患であることが多い。

発症様式/臨床経過による区別

突然発症(sudden onset)の発症様式ではやはり病因として血管性を想定し、通常は比較的早い経過で視力障害が生じる。

・視神経炎などの炎症性疾患は典型的には数日程度の経過で視力障害を起こす。

変性疾患(緑内障など)ではさらに長い経過で視力障害を起こすことが典型。ただし、初期にはその変化を認識できないこともあることに留意する。

一過性の視力障害

<両側性の場合の主な鑑別>

 ・片頭痛、一過性脳虚血発作(TIA)、頭蓋内圧亢進病態(うっ血乳頭がみられることがある)

<片側性の場合の主な鑑別>

 ・一過性脳虚血発作(TIA)、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜片頭痛、巨細胞性動脈炎、網膜血管攣縮

RAPD(Relative afferent pupillary defect)とは

RAPD(Relative afferent pupillary defect)は相対性求心性瞳孔反応欠損といい、視神経障害を示唆する身体所見の一つで、RAPD陽性の際の瞳孔をMarcus-Gunn瞳孔ともいう。

・RAPDを理解するには視覚伝導路の理解が重要。視覚伝導路において求心路は視神経が、遠心路は中脳から動眼神経がそれぞれ担っています。例えば右視神経に障害が生じていると仮定すれば、ペンライトを右眼から左眼へと動かすと左の瞳孔は縮瞳する。そこからさらにライトを右眼へ戻すと、ライトにより照らされた瞬間は関節対光反射により縮瞳している状態であるが、右眼は視神経障害により求心路が作動していないため、ライトが当たっているにも関わらず、散瞳していくという現象がみられる。これをRAPD陽性と捉える。なお、一連の診察手技をSwinging flashlight testと呼ぶこともある。

―――――――――――――――――――――――――

<参考文献>

・Raharja A, Whitefield L. Clinical approach to vision loss: a review for general physicians. Clin Med (Lond). 2022 Mar;22(2):95-99. doi: 10.7861/clinmed.2022-0057. PMID: 35304366; PMCID: PMC8966835.

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です