急性副鼻腔炎 acute sinusitis in adults
分類と疫学
・症状の持続期間による分類:
・急性副鼻腔炎:〜4週間
・亜急性副鼻腔炎:4週間〜3ヶ月
・慢性副鼻腔炎:3ヶ月〜
・原因による分類:
・ウイルス性副鼻腔炎
・細菌性副鼻腔炎
・細菌性副鼻腔炎の起因菌としては肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ、黄色ブドウ球菌の頻度が高いです。
・ほとんどの副鼻腔炎はウイルス性であり、抗菌薬を必要としません。細菌性副鼻腔炎は副鼻腔炎全体の0.5~2.0%という報告もあります。
また細菌性であっても自然軽快する場合もあり、抗菌薬が必須というわけではないというのもポイントです。
・実際、約85%の患者では抗菌薬の投与がなされないまま、7~10日以内に症状が軽減/消失することが知られています。
診断
・基本的には臨床症状から副鼻腔炎を想起し、臨床経過により細菌性とウイルス性とを区別します。
・主な症状としては鼻閉、顔面痛/圧迫感、鼻汁、後鼻漏症状などが一般的です。
・細菌性副鼻腔炎の臨床経過における特徴は以下の2つです。
- 症状が改善することなく、7~10日以上続く
- 初期の症状が一度改善した後に、症状が再燃する(double worsening)
・また、膿性鼻汁は上顎洞における細菌性副鼻腔炎と関連している場合があり、そのほか強い顔面痛や発熱もどちらかといえば細菌性に多い特徴といえます。
・画像検査は眼窩内や頭蓋内への浸潤(眼窩膿瘍や脳膿瘍など)が疑われるケースにおいて検討されます。それ以外のケースでのルーチンでのCT撮像の有用性は限定的と思われます。CT撮像により急性ウイルス性上気道感染症の90%弱の頻度で副鼻腔における炎症所見がみられますが、そのうち細菌性副鼻腔炎が占める割合は2%程度とされています。
マネジメント
・前述のように副鼻腔炎の多くで抗菌薬治療を必要としません。
・ただし、その前提を理解したうえで抗菌薬治療を行うことを決めた場合には一般的にはAMPCやAMPC/CVAによる治療を行うことが多いと思います。糖尿病やその他の免疫不全を併存しているケースではAMPC/CVAを優先的に使用することを推奨するものもあります。
・なお、モラキセラはβラクタマーゼを産生するため、AMPCでは治療失敗する可能性が想定されます。なお、インフルエンザ菌に関してはBLNASであればAMPCは有効と思われますが、BLPARではAMPCは原則無効ですし、BLNARではAMPC/CVAにおいても無効ということとなります。
・なお、一人の患者の臨床症状を改善させるのに必要なNNT(number needed to treat)は7~18と小さくないことも知られています。
・また、抗菌薬治療を行うことによるメリットと、種々の有害事象が起こる頻度とのバランスを意識することも重要です。抗菌薬治療による有害事象を起こすのに必要な患者数、つまりNNH(number needed to halm)は8~12という風に報告されています。
・治療期間については5~7日間程度を検討します。5日間の治療と10日間の治療とを比較した研究でも、臨床的な改善率は同等で、有害事象は前者で少ない傾向にあったという報告もあります。
その他の補助療法
・充血除去薬:
・トラマゾリンの使用などが検討されますが、一般的にはルーチンでの使用は推奨されていません。また、薬剤誘発性の鼻炎を惹起することもあるため、使用する場合も短期間に留めるべきと思います。
・点鼻ステロイド:
・有益性を示す報告もあります(NNT 13)。
・ただし、アレルギー性病態の併存がない限り、明確なエビデンスはないようです。
・抗ヒスタミン薬:
・こちらもアレルギー性鼻炎の併存がなければ、有効性は明らかでないとされています。
・生食による鼻洗浄:
・特に疼痛と鼻閉に関して一定の有効性を示す報告もあります(NNT 13)。
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<参考文献>
・Rosenfeld RM. CLINICAL PRACTICE. Acute Sinusitis in Adults. N Engl J Med. 2016 Sep 8;375(10):962-70. doi: 10.1056/NEJMcp1601749. PMID: 27602668.
・サンフォード感染症治療ガイド2023 (2024年04月08日閲覧)