原発不明がん cancer of unknown primary site
原発不明がんとは
・原発不明がん(CUP:cancer of unknown primary site)は転移性悪性腫瘍であることが組織学的に証明されている腫瘍のうち、治療前の評価期間中に原発巣を同定できないものと定義されています。
・全ての悪性腫瘍のうち、およそ2~4%程度を占めると報告されています。
臨床症状/経過
・原発不明がん患者の50%以上では複数の病変部位がみられます。
・なかでも比較的侵されることの多い部位としては肝臓、骨、肺、リンパ節が挙げられます。
・肝転移を主とするケースは数あるサブグループのなかでも最も頻度が高いものに相当し、原発不明がん全体の約25%を占めます。この場合、中分化/低分化型あるいは未分化型の腺癌であることが一般的です。このタイプの予後は比較的不良で、生存期間の中央値は6~9ヶ月とする報告もあります。一方で、神経内分泌腫瘍らしい特徴を有するケースでは良好な治療反応性を示す場合があることが知られています。
・そのほかのサブグループについては割愛しますが、参考文献(PMID:12821533)の本文が勉強になります。
検査
・病歴聴取、身体診察、画像検査などを経て、生検を行い、原発巣を推定することが基本的な流れとなります。
・実施が必須という検査は決められていませんが、一般的には血液検査(Caなどを含む)、体幹部CTなどは行うことが多いと思います。そのほか臨床経過、症状に応じて、マンモグラフィ、上部/下部消化管内視鏡検査、PET-CT検査、腫瘍マーカー(AFP、βHCG、CA125、PSAなど)の検査を検討することもあります。
Favorite subset(予後良好なサブセット)
・原発不明がんは一般的に予後不良です。しかし、そのなかでもFavorite subsetと呼ばれるような、適切な治療により長期生存が可能となる集団が一部ですが存在することも知られています。
・いわゆるFavorite subsetとして知られているのは
- 身体の正中線上に分布する低分化がん
- 腹腔内にみられる乳頭状腺がんの女性
- 腋窩リンパ節のみに転移した腺がんの女性
- 頸部リンパ節に限局した扁平上皮がん
- 孤立性の鼡径リンパ節転移で、扁平上皮がん
- 低分化神経内分泌腫瘍
- 造骨性骨転移とPSA値の上昇を伴う男性のケースで、腺がん
- 単発で小さく、切除可能な病変をもつケース
が相当します。
病理検査
・病理検査についての詳細な記述は割愛します。
・患者の約半数が転移性腺癌と診断され、30%は未分化癌あるいは低分化癌、15%は扁平上皮癌、残りの10%が未分化新生物と診断されます。
・免疫染色は有用なこともあり、CK7とCK20は固形がんで広くみられることが知られています。CK20は消化管の癌の診断に有用なことがあります。
予後
・ヨーロッパからの、原発不明がんの臨床的なサブグループを区別せずに行われた調査では患者の生存期間の中央値は2~3ヶ月でした。なお、この研究での年齢の中央値は約70歳です。
・臨床試験に登録された患者を対象とした研究では生存期間の中央値は6~10ヶ月でした。なお、この研究での年齢の中央値は60歳以下です。
・ただし、統一的な見解は存在せず、あくまでこれらのデータも参考所見に留まります。
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<参考文献>
・Pavlidis N. Cancer of unknown primary: biological and clinical characteristics. Ann Oncol. 2003;14 Suppl 3:iii11-8. doi: 10.1093/annonc/mdg742. PMID: 12821533.