高病原性クレブシエラ Hypervirulent K.pneumoniae
高病原性クレブシエラ(hvKP)とは
・K.pneumoniaeは尿路感染症などで起因菌となることもある細菌として一般的と思いますが、なかには特性を異にするものがあり、それを高病原性クレブシエラ(hvKP:hypervirulent K.pneumoniea)と呼ばれます。なお、高病原性クレブシエラ以外のK.pneumoniaeを本記事では古典的クレブシエラとあえて呼び、区別することにします。
・高病原性クレブシエラは1986年に台湾の医師により初めて報告されました。
・高病原性クレブシエが通常のクレブシエラと異なる点としては
- 免疫不全のない健常者にも感染をきたし得る
- 血液寒天培地上でコロニーが過粘稠性を示す(string testが有名です)
- 一部の遠隔感染巣を形成しやすい
が知られています。
・高病原性クレブシエラは文字とおり病原性が高いですが、幸いなことに薬剤感受性は現時点においてはABPCを除き、比較的保たれています。
疫学/合併症
・高病原性クレブシエラが培養で検出された患者のプロファイル:
・性差:男性 68%、女性 32%
・平均年齢:51.4±12.1歳
※年齢および性別はいずれもString testの結果と関連性はみられませんでした。
・市中感染の割合:
・古典的クレブシエラ 14% vs 高病原性クレブシエラ 62% (統計学的有意差あり)
・検体の種類ごとの培養陽性率:
・高病原性クレブシエラが統計学的に優位に多く検出される検体は指摘されませんでした。
・また喀痰検体では古典的クレブシエラの方が統計学的有意に多い傾向にありました。
・古典的クレブシエラ感染に比して、高病原性クレブシエラ感染では
- 肝膿瘍(24% vs 3%)
- アルコール性肝炎(21% vs 3%)
を合併/併存している可能性が高く、統計学的有意差もみられました。
また、HIV感染症を併存している可能性は低く、こちらについても統計学的有意差がみられました。この点は冒頭で記載したように、高病原性クレブシエラ感染症が免疫不全のない人にも発症しやすいという事実に少なくとも矛盾しない部分といえます。
・なお、高病原性クレブシエラ感染と古典的クレブシエラ感染とでは死亡率において、統計学的有意差はみられませんでした。
String test
・血液寒天培地上のコロニー部分から粘糸が5mm以上引き上がればString test陽性と判断され、高病原性クレブシエラでみられやすい特徴と考えられています。
最後に
・本記事は参考文献に示す通り、中国における後方視的な報告をもとにまとめているため、条件が異なればまた違った結果になり得ることに留意しています。
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<参考文献>
・Li W, Sun G, Yu Y, Li N, Chen M, Jin R, Jiao Y, Wu H. Increasing occurrence of antimicrobial-resistant hypervirulent (hypermucoviscous) Klebsiella pneumoniae isolates in China. Clin Infect Dis. 2014 Jan;58(2):225-32. doi: 10.1093/cid/cit675. Epub 2013 Oct 7. PMID: 24099919.