下垂足 Drop foot
はじめに
・下垂足は足関節を背屈させる筋力の低下により、足先が垂れるようになっている状態を指し、視診で認識が可能です。
・私自身もつい総腓骨神経麻痺と早合点してしまいそうになることもありますが、他にも鑑別が複数あるため、適切に鑑別をあげて、身体診察、必要に応じて画像検査を実施して原因を精査することが重要です。
・ここでは浅腓骨神経や深腓骨神経の各々の走行など、解剖学的な知識の整理についてはあえて割愛します。
主な鑑別
・鑑別は様々ですが、私自身はあえて簡略化して、
- 総腓骨神経麻痺
- L5神経根症
- 脳血管障害(錐体路の脳梗塞など)
- その他(Charcot-Marie-Tooth病(CMT)、ALS、黄色靭帯骨化症など)
と大別して考えるようにしています。
・なかでも上記①②は比較的頻度が高いと思います。
・脳血管障害は全例で画像検査を行うべきとは思いませんが、突発完成(Sudden onset)の発症様式をとっていたり、他疾患がそれらしくなかったりするケースでは安易に除外しないことが大切と思います。
・なお、習慣的な足組みや、寝たきりで下肢外旋位のケースなどでも、腓骨頭圧迫による総腓骨神経麻痺が生じることをときに経験します。普段の生活状況に関する聴取も重要です。
身体所見
・下垂足では足関節の背屈が困難となるため、下肢を高く上げて歩くようになり、鶏歩(Steppage gait)とも呼ばれます。
・総腓骨神経麻痺とL5神経根症の鑑別のために有用な診察を理解しておくことは有用です。たとえば総腓骨神経麻痺の場合は深部腱反射やSLRテストで異常がみられないことが典型的です。もちろんこれだけで明確に区別することはできないこともあるため、病歴と組み合わせて可能性を検討することとなります。
・また後脛骨筋の筋力低下があるかどうかをMMTで確認することもときに有用です。後脛骨筋はL5神経根由来であり、脛骨神経により支配される筋肉であるため、L5神経根では筋力低下がみられますが、総腓骨神経麻痺では筋力低下がみられないことが典型です。実際には後脛骨筋の作用である、①足関節の底屈 ②足関節の内反 についてMMTを確認することとなります。MMTを確認する際には左右差があるかどうかという観点を重視して診察します。